二日目 終了
二日目 終了
3番村人 テロリストの襲撃され死亡
9番狩人 投票により追放
16番狼 15番の身代わりにされ死亡
17番ストーカー 首吊りにより自殺
以上、脱落
残り、12名
……
キミも見事なもんだよ
お客はキミと13番の仲間割れ寸前のシーンを興奮したように見ていた
盛り上がったね、間違いなく
ま、結局元通りになってガッカリしてたけど
…………
もしもーし?
起きてるー?
死ぬなら……楽に死にたい
あとマシな死にかた選びたい……
…………なんか、ダメージ受けてないか?
色々あったんだよこれでも
はぁ……速水が敵になったらと思うとメチャメチャ怖いわ……
その日の夜。
彼女にビビリにビビりまくった私は、今日の報告を行なっていた。
内密の通信。
ゲームマスターは盛り上がりがいい感じになっていると伝えてきた。
昼間の追放シーンと彼女との仲違いが特によかったらしい。
はぁ…………
まだ二日目だっていうのに、疲れてきたよ
まぁ、こっちとしても今の調子でやってくれるといいよ
キミが狼に襲われる可能性はないわけだしね?
それが一番の問題でしょ……
はぁ、私の最後の希望が……
私がこんなふうになってきたのは、今夜の内通者の送ってきた結果だった。
今晩は18番、黒。私が黒だと判明したのである。
昼間に先導してあいつを追放した態度を疑われて、探られたんだと思う。
これで主導権を握っているのはテロリストと殺人犯だと知った狼。
私の目論見も外れ始めている。これでは、狼にも襲われない。
そして速水がもう一人のせいで、昼間に追放もされないかもしれない。
完全に生存フラグが立ってしまっているのだ。
で、恐れていることがこうして私は奴と繋がっていることを知られた時だ。
あの天才が私にどう対処するかが予想できない。
凡人風情があいつの行動を読むなど烏滸がましい。
あの洞察力なら半分ぐらいはバレてそうだが……。
今んところは大丈夫そうだけどね?
ずっと監視してるけど、それっぽい動きはないし
まあ、キミが言う程の少女なのは知ってるし、計算済みなのかもしれないけど
どうしても心配なら、こっちでも最後の切り札は用意できるが?
ここまで働いてくれているキミに謝礼をしないのは礼儀に、何より僕の流儀に反する
竦み上がってる私にゲームマスターが言うので、奴の言う最終手段の切り札をキープしてもらうことにした。
こいつはこのゲームに関しては神に等しい。
殆ど出来ないことはないだろうから、信用はしておこうと思う。
こいつを裏切る予定はないし、こいつも働きにはそれ相応の支払いをする、という自分のやり方を通すのはこれまで見ていて信用できる。
こいつ自身は信用できないが、この流儀を通す、という部分をこいつは曲げることを酷く嫌がるので、信用はできるだろう。
そんじゃ、そんときはお願いね
ゲームマスター
任せておけ
僕とて一介のビジネスマンだ
一度した契約は、何があろうとも決して裏切らないから安心してくれ
こいつ一応このデスゲームのマスターなんだよね。
成程、他にもビジネスしてるってことか。
通信を終えて、私は薄暗い天井をまた見上げる。
暇潰しに狼を盗聴していると、小田が残ったもう一人の狼にどやされていた。
襲撃失敗の責任取れと責められているのだ。
彼女のせいで一気にピンチになった小田は、泣きそうな声で小さくごめんなさいと謝り続けている。
それしか、できないだろうし。
あいつは私の存在を知らない。
だから、16がただ自滅しただけとしか考えられない。
無知とは、時に武器になるんだと思う。
私はみんなの陰に隠れて、振り返られる前に上手く立ち回り、好き勝手にやっている。
それに気づきかけているかもしれない速水、一面を見せたことで私の言うことを聞くようになった文月。
中々カオスなことになってきた
ゲームマスター、これは頭を抱えてるかも
これ狼まともに機能してないよもう
残った狼は、お前なんて死ねばいいんだと遂には小田に言った。
小田もそれにはカチンときたらしく、泣き叫びながらずっと何も主張しなかったくせに偉そうに言わないで、と反論した。
そのままなし崩し的に口論開始、しまいには互いに投票して殺す! と怒鳴り合って互いに投票したっぽい。
言い出した方は、あの野郎からだ。
ダメだこいつら、目の前の仲間に血が上ってゲームを忘れてる。
この場合は、死なないのかな?
票が割れたことでイーブンになって、襲撃は失敗する。
つまり今夜は、誰も動かない。誰も死なない。
……それはいいのだろうか?
ゲーム進行不可、妨げになって……ルール違反に抵触するかも。
あいつ、死なないか?
死ぬとすれば、小田を責めていたあいつだろうと思う。
あいつは今まで何も意見も言わずに彼らに従っていただけの事勿れ主義の中立。
なのにピンチになれば人を責める、そんな感じの悪い奴だったから、死ぬならあいつが死ねばいい。
何はともあれ、完璧自滅の結末になってる。
負のスパイラルに飲み込まれて、彼ら――狼は、破滅から逃れられていない。
三日も立たないうちに狼は全滅寸前、探偵は初日で全滅寸前。
多分残った探偵はそれなりに動いているだろうが、きっと出られない。
でも狼がラストになれば出てくるだろう。
その時に備えて、今のうちに味方を増やすことに損はない。
今夜は様子見、正しかったよ速水
流石というか、恐ろしいというか……
下手に動けば、互いに自滅し合う。
一番殺しまくってる私達が今夜もやっていたら、きっと酷いことになっていただろう。
さぁ、今夜は誰も死なない、平和な夜になるか。
あるいは、思い当たるあの感じ悪い狼が死ぬか。
まぁ、私には関係ない。
これでまた速水が頭抱えるだろうが……私には矛先は向かないから、どうでもいいか。
私は、波乱の予感にニヤリと笑って、明日に備えて眠りについた。
……鳥の鳴き声が聞こえる。
朝……かな……?
んん……
太陽の眩しさに悶えつつ目を覚ます私。
何だろう? 鳥の声に混じって、やかましい音がする。
んあ?
のそのそとベッドから這い出ると、べしゃっと顔から床に墜落した。
その間も、妙に騒がしい。ドアを連打するような音が。
ふがぁあああ~~……!!
寝ぼけていたのが、顔面強打で一気に目が覚めた。
超痛い。そうだ、ここフローリングだったんだ。
いたい、いたいぃ~~!
鼻っつらを押さえて床を転がりながら、ようやくそこで私の部屋のドアを連続して叩かれていることに気づいた。
私はまずはそれよりも、薬を飲む方を優先する。
マイペースにゆっくりと顔を洗い、薬飲み干して、それから面倒くさいがまだ諦めない来訪者の対応に向かう。
誰よ朝っぱらからうっさいわねぇ……
ぶつぶつ文句を言いながらドアを開けると。
――ますみっ!!
突然抱きつかれた。
文月だった。
彼女はべそをかきながら、私の部屋の扉を連打していたようだった。
く、くびっ……!
首、クビぃぃぃぃ!!
首?
あー……大体察したよ
いちいち大泣きしないの、もうー
泣きまくる彼女の頭を撫でながら、私は宥める。
言葉にならないが、大体理解した。
要するに死人でたらしい。多分あいつだろう。
で、首ってことは……チョンパでもされたのかも。
で、彼女の行く範囲にそれがあって、竦み上がった文月は私に助けを求めてきた、それだけだ。
よしよし、ごめんね遅くなって
泣きたいだけ泣いていいよ
ますみぃ……
私は特に慌てない。いい加減、慣れたし。
それに予測の範疇は超えてない。
当然、ルール違反だから粛清の対象で何かした罰に近いことはすると思ってた。
まさか、晒し首とかするとは思わなかったが。
仕方ない、彼女連れて一緒に行くとする。
しがみつく彼女を連れて、私は談話室へと向かうのだった。