第六章


取り調べ




クレヨンハウスのトイレ内で草野に電話をかける花園。

花園

草野ちゃん、何か進展はあったかしら?


取調室で牛丼食べながら電話している草野。片手には無数のイラストが描かれたスケッチブック。

草野

板垣のバッグから今度はスケッチブックが見つかりました。それが鑑識が調べたところによりますとどうやら直也の書斎にあったものらしいんです。はい、パクリですね。多分コイツ黒っすね

あずみ

あーちゃん何もやってないもん!
あーちゃんだって…あーちゃんだって直ちゃんの事大好きだったもん!!

草野

あーあーもうだから簡単に泣くなって。赤ちゃんじゃないんだからさ

花園

ちょっと待って。草野ちゃん、今から言うこと調べておいてもらえる?直也さんに食物アレルギーがなかったか?後藤直也が何か今日のために予約をしていなかったか?この二点ね。よろしく~。あ、あと板垣ちゃんの事あんまり泣かせないでね…じゃあ、ディナーが冷めちゃうんでバイバーイ!


花園がトイレから出てくると向かいに真希子が立っている。

花園

あ、あら!?ごめんあそばせ。ここお手洗い一つしかないんですものね

真希子

ええ。主人ともよくなりましたわ、こんなシチュエーション


会釈する真希子。入れ違いでトイレに入っていく。ドアの奥で不信な顔をする真希子。ホッとため息をする花園。

ビニールから証拠品のスケッチブックを取り出し眺める草野。ロゴやシンボルデザインと思われる絵が何点も描かれている。部屋の隅で静かにしているあずみ。

草野

落ち着いた?俺の事嫌い?

あずみ

超ムカツク

草野

ありがとう、俺も君信用できないからさ…これって売ったらいくらぐらいの価値あるの?家一個建つ?

あずみ

それ自体には価値なんてないよ。あくまでイメージのストックだから。大事なのは結局相手の会社がどれだけ大きくてお金持ってるかだよ

草野

興味深いね、どうやって出させるの?

あずみ

後藤直也のデザインて、表面じゃなくて、本質を掴みその世界観を作るんだよ。要はその会社の商品が本来持ってるポテンシャルを引き出すって事。彼の仕事はその大事な所とセンスのカッコよさが一体になってるから凄いんだよ。だからずっと後世も残るの。本当に凄い人なんだから。因みにアンタが食べてる牛丼の箸袋のマーク、後藤さんデザインのだよ。たしか独立して一番最初の作品

牛のマークが付いてる箸袋を見る草野。

草野

なるほどね。バカそうに見えてけっこうモノの価値知ってるじゃん君

あずみ

後藤直也の事なら何でも知ってるよ。あの人は私の全てだから。作品も、心も体も、何もかも…あーちゃんは誰よりも彼を愛してるんだから!

草野

いいねえ、一流アーティストってやつは。美人の嫁といい、Hでインテリなギャルといい。コツを教えて欲しいよ、モテるコツを

あずみ

一生慣れっこないよ。あんたみたいな公務員崩れには絶対慣れっこない。触りたくも無い!

草野

…そっかわかったわかった。じゃあ今からお前に警察の価値ってやつをみっちり教えてやって…

鑑識

失礼します。後藤直也ですが、どうやら蕎麦アレルギーを持っていたようです。また今朝、遺留品の携帯着信履歴から表参道の宝石店があり、問い合わせたところ指輪の受け取り確認だったようです

草野

ご苦労さん。店の地図出してもらえます?直接自分があたりますので

鑑識

はい!承知いたしました。それでは失礼します

部屋を出る鑑識。タバコに火を付ける草野。

草野

これ吸い終わったら一応釈放ね。それで、これからお兄さんと楽しいデートだ.嬉しいだろ?

あずみ

おえー

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