第五章


ディナータイム




花園が真希子に連れられてやってきたのは表参道にある絵本レストラン“クレヨンハウス”



店先にやってくる花園と真希子。1階が絵本店で、地下がレストランと野菜売り場になっている。

花園

きゃあ、メルヘン!絵本とレストランのお店なんですね

真希子

そうなんです。いいですよね。アイディアに詰まった時にここに来るんです。童心に返ってやわらかい頭になってまたクリエイティブに取り組めるといいますか

花園

納得できます!まあ、素敵!いいんですかこんな立派なところにお招き頂いて?

真希子

いいんですよ。さあ入りましょう

階段を下っていく真希子と花園。


テーブルに座っている真希子と花園。隣のテーブルでは子供連れの家族などが目立つ。

花園

なるほどー。絵本を買って最後は家族団欒でお食事するんですねー、素敵な空間

真希子

そうなんです。私と主人が表参道に越して来た時に初めて来たのがここでして。
大人のオシャレばかりに眼が行ってしまうこの都会で、子供が子供らしく育っていくための空間デザイン、アートディレクションには心から感動しました

花園

想像できます。きっとご主人といろいろな人生、お仕事の話を交わされたんだなあというのが

真希子

そういえば、ここでお昼食べた後も、スケッチブックを堂々と広げて一緒に構図描いたりしてましたねー

花園

ステキですね

真希子

本当は今日主人と来るはずだったんですけど、こんな事になってしまって…でも、もったいないじゃないですか?せっかくのご馳走ですし…やだ、こういうところがおばさんみたいなのかしら?

花園

いえ、間違ってないと思いますよ。お食事って頑張ってる自分へのご褒美ですものね。…お食事は大事な癒しの時間です

真希子

よかったあ、わかってもらえて

運ばれてくるコースセット。

真希子

うふふ、頂きましょう刑事さん

花園

花園でけっこうですよ。今はプライベートですし

花園

うん、美味しい。いいですね、お子さんだけじゃなくてアラフォーの胃にもやさしい(笑)正直、心配だったんですよ、分厚いステーキとか出てきたらどうしましょうって

真希子

良かった~。素朴な料理なので物足りなかったらどうしようかと心配でした

花園

とんでもない!ただごめんなさいね、私、きのこだけはアレルギーなんで、だめなんですよ…エイ!

エリンギのソテーを真希子の皿にちょんと置く花園。

真希子

まあ、はしたない(笑)

花園

自身へのリスク回避も刑事の立派な仕事ですから!

クスクス笑い合う二人。

真希子

さっきの話ですけど、振り返れば、私はずっと仕事もプライベートも彼と一緒で、ちょっとそういう時間の使い方が上手くいって無かった気がします

花園

でも、愛し合っていらしたのでしょう?それなら幸せじゃないですか?

真希子

さあ、どうでしょう。そう彼が思ってくれていたのなら良いのですけれど

店員

大変申し訳ございませんお客様!こちら先程ご注文頂いたワインでございます。遅れてすいませんでした

真希子

まあ、会話が面白くてすっかり忘れてました

花園

右に同じです

花園

乾杯しましょう。お酒は歳を重ねるほど美味しくなり、様になってくる

真希子

同感です

ワイングラスを手に持つ二人。

真希子

私たちの出会いに

花園

これまでの真希子さんと直也さんの日々にと、これからの真希子さんの人生に

真希子

…ありがとう

花園

乾杯

グラスを合わせようとすると、花園の携帯電話が鳴る。

花園

もう!ちょっと失礼


苦笑いして席を外す花園。悲しげに赤ワインを見る真希子。

next to go...

第五章 ディナータイム

facebook twitter
pagetop