八月一日。
俺とあいつの夏は、少しの変化を迎えていた。

ムッフフフ……

お前、やけに嬉しそうだな

それは、ソーダ。何せ下僕が、金、カセーデ、きたの、ダカラ、な!

少女は両手で小遣いとして渡した千円札を数枚持ってニコニコと笑う。
そう、俺はようやく仕事を手にしたのだ!
と言っても、近所で見つけた個人経営の喫茶店のバイトなのだが……まあ、店長もいい人だし、もう一人いるバイトも嫌な奴ではない。
時給もそこそこいいし、昨日渡されたばかりの給料は五万ほどある。
貯金がカツカツの俺には嬉しい限りだ。

ムッフフフ、では早速、ハンバーグカ、ラーメン、でも食べに、行コウ。ちょっと、高メデモ、よいだろ?

その金で食える分にしろよな

ワカッ、ておる、ワ

少女はそう言いながら、ニヤニヤと笑い、俺の隣に来て頭を肩にすり付けて来た。
猫か、こいつは。
まあ……悪い気はしないが。

ソー、言えば私に、小遣イ、渡したと、ユー事、は、外出テイイ、と言う事だな?

俺と一緒ならな

ヤッタ

少女は嬉しそうに俺の頬を舐めた。
ゾワッとした。
いつもの噛みつく時の様な舐め方ではない、もっとゆっくりと撫でるような舐め方だ。
そんなに嬉しいのか?
何かの気まぐれか?

ムフフ……稼いだ、ゴホービ……グググッ

その笑い方なんなんだ……

グググググ……!我が、下僕ガ、仕事、シテ、稼いでくる、トハ……ランク、また一つ、上ガッタ、な

えー……一つだけかよ……

グググ、無職は、脱シタ、ぞ

っしゃあっ!やってやったぞ!無職は抜けた!

グググググ

ははははは

グググググ!

わーっはははは!

うる、サイ、ぞ

アバーッ!

殴られた、理不尽だ。
くそう、人間だったら訴えてた所だぞ。
こいつ……未だに自分の方が上だと思ってんのか。

グググ……ソーカ、そうか、我が下僕が、バイトヲ……ググッ

保護者か

お前の主人、ダ

立場逆だろ普通

何、言ッテル、下僕いや奴隷が働く、ノハ、普通の事できはない、カ

いつの時代の話してんだお前

ググ……はて、イツ、の時代やら……

長生きしすぎてボケでもやってきたか

失礼、ナ。私は、竜族の中、デモ、若い部類、ダゾ

若いってどのくらい?

ンー……二十歳、クライカ、な?

二十歳?!そのなりで?!

何か問題、デモ?

いや……外見的にはどう見ても俺より年下だよなぁと思って……

……

あ、怖い。
その目何だよ……怖ぇよ……

今まで、何歳ダ、と思って、タ?

よくて十五、六歳ぐらいかと……

フザ、けん、ナ

殴られた。
吹っ飛んだ先が開けっ放しの押入れで助かった。
くそう、こいつどこからそんな力出て来るんだよ……。
いっその事、怪力カタコトキャラで売り込むかぁ?
……やめよう、それはいけない。

ソー、言えばお前、どん、ナバイト、して、ル、のだ?

ただのちっさい喫茶店だよ……悪いか

ホー……

少女は口元に手を当てて、

うーん……

といった様子で何かを考え始めた。
嫌な予感がする。
こいつが何を考えているのか、なんとなくわかるぞ。

ふむ……私が、イータイ、事はだいたい、ワカッ、てるな

……はい

私を、ソノ店、つ

駄目だ

最後まで、言ワ、せろ

お前、俺の店に来るつもりだろ。駄目だぞ、そんなの

ナゼ、だ?私は以前より、ヨクセーデキ、るように、ナッ、ている

それでも完璧じゃないだろ。それに俺も働いていて、お前を見ていられる訳じゃない。お前がどんなタイミングで本能が目覚めるか……

ムゥ……ダガ、下僕よ。私も、外ノ事、いっぱい、知リタ、い。聞くだけでは、ダメ、だ。実際にこの体で、感ジタイ、のだ

好奇心旺盛というか……まあ、その気持ちはわかる。
それでもやはり危険と言うか……いや、こいつは最近本来の姿に戻ったりする事もなく、本能の抑制ができている気がするし、外に出してみても大丈夫か?
俺がついていれば、何とかなるだろうし……
一応、店長にも『外国から来たちょっと変わった友達』がいる事は話してあるし、ちょっとぐらいなら連れて行っても……

……わかったよ、そんなに行きたいなら連れてってやるよ

ホント、か?!

目が本当にキラキラしてる。
そんなに嬉しいのか?

まあ、そのなんだ……竜の姿には絶対なるな、痛みの匂いとかそういうのを感じても我慢しろ。あと店と客に迷惑だけはかけんなよ

ウム、理解した!で、イツ、行けそう、ナノ、だ?

うーん……『どうしても俺のバイト先が見たいって言って……』って言えば……店長の事だから何とかなると思う

よし、明日、行コッ

早っ?!


バイト先の店は商店街の端にある。
店は住居一体型で、二階と一階の一部が住居スペースという感じだ。
今までは店長一人で切り盛りしてたが、最近になって若者がいれば雰囲気も良くなる筈とバイトを募集したという訳らしい。

新入りくんも、バイトちゃんもおはよう!今日も一日よろしくね~

おはようございます!

おはようございます

うんうん、元気がいいね!それじゃぁ、お仕事スタートね!

はい

頑張ります!

午前十時になると店長が店の鍵を開け、『営業中』の札をかけると店が開く。
あいつを今日一日店に居座らせる事を店長に説明するには準備中の今しかないな。
店長は今……今日店に張るポスターを用意している。

あの、店長

んー?どうした新入りくん。バイト辞めようって話しかい?

違います!

そっか、まあ私も辞められたら仕事量増えるから辞めてほしくないけどね~

ブラックっすか……

途中で黙って休憩してても怒んないんだからいいでしょ

まぁ……そうですけど……

……なんか相談事かい?

あ、この人鋭い。

相談というか、頼み事というか……

あっそう、とりあえず言ってみ

この前、外国の友達が家に来てるって話したの覚えてます?

あぁ、ちょっと変わってるとかいう、その子がどうかした?

いやぁ、それがですね今日一日俺のバイト先を見たいって言ってて……

ほーほー……で、店に今日一日見学させろと

……はい

うん、いいよ別に。一人ぐらい居ても困んないし

ありがとうございます!

よし!予想通りの答えだ!
あとはあいつが、竜にならなきゃいいんだが……

それじゃあちょっと呼んできます

行ってら~

店長は気楽に手を振った。
ああ、こういう性格の人で本当に良かった。

……おーい、店長の許可出たぞ

電柱の柱からひょっこり顔を出して、親指を立てる少女が見えた。
大人しくしてくれてたか……目を離すのは怖い。

いいか?店の中では大人しくしろよ、聞かれても日本語あまりわからないって反応しろ

ムゥ……めん、ドー、だな

それでも頑張ってくれ。黙って大人しくしてろ

ホショー、でき、ヌ

そこは保障してくれよ……

とりあえず、店の中でのルールをしっかりと言い聞かせてから店に入れる事にした。

店長、連れてきましたー

お?その子?!その子なの?!めっちゃかわいい!!

女子かと思うようなハイテンションなオーバーリアクションで、こちらに向かって来た店長は、迷うことなく少女に抱きついた。
少女の目が、見開いている。
まずい……

えー?どこの国の出身?あ、私店長ね。マスター、OK?

オ・ケー。私は、好キニ、呼んで、クレ

あれ?
大人しい……ちゃんと言う事聞いてくれてるのか。
聞き分けが良くなったなぁ……。

えー?じゃあなんて呼ぼうかなー……バイトちゃん!この子、何て呼ぼう?

私に言われても……

グググ

面白い笑い方だね!

テンチョー、面白、イ、な

ありがとねー、ゴス子ちゃんもかわいくて面白いよ!

子?

なんだそのあだ名?!完全に服で決めたろ店長?!
もう少し考えて決めてくれ!

…………

やばい、キレる、キレるぞ。
あの顔は絶対怒ってる!

……ゴス子……

うん!ゴスロリだからね!かわいい!

グッ、ググ……嬉シ、ぞ……

むふふふ~♪

グググ♪

しっかりと握手して、二人は一緒に笑っている。
俺も見た事ないぐらいいい笑顔だ。

馴染んでる……

店長とこの子の間に同調する物があるのかもね

絶対共鳴している、俺は確信した。
という先輩はこいつを連れて来た俺の事をどう思って……

犯罪臭しかしかないわ

この人も心読むの?!というか脳内に直接?!


数時間後。

コーヒーお待たせしましたー

ググ、次、左ノ窓、ソーダフロート、二個だ。早ク、ググ……しろ

お待たせしました。ソーダフロートになります

グググ……では、次ハ、私にラーメン、ヲ

お前はなんなんだよ?!ラーメンぐらい我慢しろ!

ナ、ら、ハンバーグハ、いいの、ダナ?

それも我慢しろ!

ムゥ……

まったく……こいつは……。
ここが家とは違うと理解しているのだろうか。

ふふ……

ん?

先輩?どうかしたんですか?

いえ、ただ貴方達が微笑ましくて……仲がいいのね

そうですか?

私とこいつ、仲イイ?グググ、よくわかって、イル、な。

面白い喋り方ね、まあ日本語の勉強頑張ってね

ウム、ショージ、ん、ショージ、ん

じゃ、仕事戻るから、後輩君、頼んだよ

あ、はい

そう言って先輩はトレーに水を乗せて運んで行った。
手を振っていた少女が俺を見てニヤニヤと笑っている。
よからぬ事を考えてるのは明白だ。

なんだよ……

ナ、に、お前とあいつ、ガ、仲良さ、ソーデ、安心し、タゾ

保護者かよ

まぁ、私の、ホーガ立場、上だけどな

どう考えてもこの店の中では一番下だろ……

テンチョー、気に、入ッテル

あ!そういえばそうだった!

ん?そういえば店長どこだ?
さっきから見かけないけど……

ういーす!ただいまー!ちゃんとやってるぅー?

お帰りなさい

え、出かけてたの?!
いつの間に?!
というか、なんだその手に持ってるのは。

スンスン

ん?
匂いを嗅いでる……?
誰か怪我でもしたのか?

どうした?

ム……甘い、匂イ、だ

甘い匂い?なんだそりゃ

人間の感覚、ナラ、楽し、ソー、という、意味ダ。モット、頭良く、ナレ

ああ、そういうこと。あと後半余計だぞ

楽しそう、か。
まあ店長いつも気楽に物事捉えてるし、楽しそうだけどな。

あ、バイトちゃん、バイトちゃん!これ貼って!

はい

店長は持ってきた紙袋からポスターを先輩に手渡し、受け取った先輩はてきぱきと壁に貼り始めた。

新入りくんは、働かないならさっさとタイムカード切れ

すんません

グググ、危うい、危、ウイ……

うるせえな!こいつは!

……で、このポスターなんなんすか

見てわかんない?夏祭りだよ!な・つ・ま・つ・り!

そりゃ見ればわかりますけど……

新入りくん、矛盾した事を言わないで

すんません……でも、なんで急に夏祭り……?

おそらく手描きであろう花火とうちわ、金魚のイラストが描かれたポスター。
開催日は、来週と書かれている。

今年はうちも店出す事にしたのよ~!名付けて出張喫茶!

なんだそれ

あ、いけね。
思わず素でツッコんじまった。
これは引っ叩かれる。

あー……つまり、うちで出してるメニューの一部を屋台で売るのよ!どう?うちの店の知名度上げるチャンスよ!皆でバチーン!と売り捌いて、知名度アップ!ついでに、祭りも満喫しようって訳よ!

わかりました。やります、リンゴ飴買いたいです

え?!
先輩やるの?!
ここの店番とか誰がやるんだよ!
俺か?俺なのか?!

ここは閉めてくに決まってんでしょ。
ラーメンとかの出前取っていいからね、経費で払うから

ヤル

なんでお前も参加する気になってんだ!完全にラーメンの出前目的だろ!

ナ、ぜ、バレた?

お前の参加理由ぐらい目に見えてわかるぞ!

特別ボーナスも出すぞ

よろしくお願いします

ああ、いつの間に成金思想に染まってしまったんだ俺は。
元からか。
まあ、所持金が増えるのはいい事だよね!
別に悪い事して増やす訳じゃないんだからさ、断る理由もないぜ!
ただ一つ心配なのは、あいつが竜化しないかどうか……

おお!ソナ、に人が来る、ノ、か!楽しみ、ダ!

うふふ~、お小遣いもあげるから好きなの買えばいいからね!

ウム!

意外と大丈夫そうだ。

深夜。
今日はどうなる事かと思ったが、意外と平和に終わった。
少女は、俺の働いている所がどういう所なのか納得したというか、気に入ったようでまた来たいと言っている。
まあ今回の件で、あの店の皆がいる範囲でなら外出しても大丈夫そうだという確信は持てた。
……また連れて行ってやろう。

ん……?

なんだ、せっかく気持ちよく寝ようと思ってた所にごそごそと潜り込んで来やがって。
今日は簡易ベッドで寝るんじゃなかったのかよ。

なんだよ……

……今日、楽シ、かっ、タ

そっか、それは良かったな。また連れてってやるよ

ほん、トカ?嬉シ、い……

そう言いながら、グリグリと頭を胸に押し当てて来る。
ああ、痛い。
加減しろこの野郎。

ググ……祭り……楽シ、みだ、ナ……

……そうだな。というかグリグリするのやめろ、痛い

グググ……ソカ、痛いか

あ?

なんか、嫌な予感が……

ウマソ……

いやらしく舌なめずりして、俺の頬を舐め始める。
や、やめろ!今噛んだら、布団が血だらけに……!
少女の肩に手を当てて押しのけようとするが離れない。

おと、ナ、しく、シロ

グェッ?!

腹パンされ、手足を押さえつけられてからはよく覚えていないが、首筋に牙を突き立てられた。
少女はより多くの痛みを喰らわんと、何度も何度も執拗に噛んだ。
いつもより、喰う量が多い気がする。
だが、今や餌でしかない俺には、訊く事も止める事も出来なかった。
とにかく、満足してくれるまで喰わせ続けるしか……

……ナ、あ

突然、喰うのをやめた。

な……んだよ……

……お前、痛ミ、喰われるの嫌、カ?

は?何言ってんだ?
そりゃ、痛いし、嫌だが、こいつを生かす為には喰わせなきゃならんのだから喰わせるしかない。
それに、事前告知さえあれば別に構わないのだが。

嫌って程じゃねぇよ……

ホン、とか?本当、ニ嫌、じゃないのか?

なんて涙ぐんでんだよ、いきなりだな……
いつも遠慮なく喰ってんだろ。

なんで泣いてんだよ……

イイ、のか、な?

何が?

ホント……私がここ、イテ、いいの、カナ?ミンナ、と一緒、イーノ、かな……?コナ……こんな、痛み喰う、竜ガ、人間と一緒に……いて……!

あー……そういう事か……
夜になると不意に不安になるっていうあれか。
まあ、そんな時もあるよな……。
特にこいつは、思う所も多そうだしな。

……いいんじゃないか?一緒に居ても

押さえつける手が緩んだ隙に、そっと右手を抜いて頭を撫でてやる。
あーあー、泣くな、泣くな……

ホント、に……?

ああ、どこに居ようが別に良いだろ。お前が好きで居る分には

グスッ……ウン……ウン……

まあ、少なくとも俺の家には居ても良いぞ。ちょぉーっとだけ、痛いけどな

アリ……アル……アリガッ……ありが、ト、う……!

ぽろぽろと大粒の涙が少女から零れた。
それと一緒にボタボタと口から大量の血が……

ああああああ!とりあえず口拭け!後でいくらでも話聞いてやるから!まずは口拭け!口!なんかないのか?!ティッシュかハンカチ!首痛ぁっ!


祭り当日。
商店街からは少し離れた神社とすぐ下にある公園。
今日に限って屋台が並び、広場の中心から太鼓の音が響いてる。
ガヤガヤと多くの人々が往来する中、俺は少女の手を引いて店長達と合流した。

はいはーい!こんばんは~!夏祭りは盛り上がってるよ~!早速もう何人か買ってってくれたからさ、あんたもバンバン働け!

はい

……とまあ、言いたい所だけど、せっかくのお祭りって訳だしねぇ、ここは私がやるから、あんた達は好きに遊んできな!はい、これお祭り用のお金!

え?

わかりました、ありがとうございます

ちょっと?!
好きに遊んでこい?!
お金まで用意して……しかも三人分。

ググ、やった、ナ。遊び、ホーダイ、だな。グググ……

お前は本当に嬉しそうだな!

さ!ここは私に任せて、行った!行った!

呼んどいてこれかよ……まあ、好きに遊んで金貰えるって言うから嬉しいけど。

私と一緒に行こっか

ウム

?!待て!俺も行く!

あの二人いつの間にあんな遠くへ……?!

後輩くん、心配しなくてもいいよ。任せて

いや、待って!その子は俺と……あ!

くそう……見失っちまった……
何も起きなきゃいいが……とにかく探さないと。

…………

グググ、コー、いうのは初めて、ダ

へぇ、そうなんだ?後輩くんとはいつも一緒なのに?

家、カラ、あまり出、ナイ、から

ふぅーん……

引き籠り……まさか軟禁状態だったり?!後輩くん……目を付けとく必要があるかも……

ムゥ?あれ、ハ何、だ?

え?あぁ、あれはね、かき氷よ。食べた事ない?

ない、ナ

じゃあ、買ってあげる

ホント?!

うん、私お金多めに貰ってるから

あり、ガ、と

じゃあ、何味がいいかなー?

ム…………赤い、ノ

わかったわ、ちょっと待ってて。すみませーん!いちごとメロン一つずつ

二つで四百円ね

はい

どーも、はいお待たせ

ありがとうございます

ム……できた、のか?

どうぞ

アリ、が、ト!

ふふ……美味しい?

ウム!

良かった。ゴスちゃんは日本来て、何が一番楽しい?

ムゥ……毎日、楽シイ、思うぞ。退屈は、シナ、い

そう……楽しいならいいよ。例えばほら、痛い事されたりとかされてなければ

痛い事?シテル、ぞ、私が

え?

アー……なんと、ユーカ、習慣?ミタイ、な

へ、へぇ……なんか変わってるね……

えぇ……私はてっきり、後輩くんがこの子をいじめてると思ってたんだけど……まさか逆だなんて……この子、結構怖いかも……?

ウマ……ウマ……

あっ、そんな一度に食べたら……

ム?ドーカ、した、カ?

あ、あれ?普通キーンって頭痛くなってリアクションする所なんだけどな……そういうの強い系なのかな……?

……何でもないわ

ソカ……ウマカッタ……もっと他にも、ナイ、のか?

え、ええ、あるわよ。綿あめとか

綿……アメ……?

か、買って来るわね……

私、モ、一緒行く!

おぉ……これ、ガ、綿あめ、ユーモノ、なのか……

どうかしら?

フワフワ……ウマ……

綿あめ一口で食べる人初めて見た……というか、今口がありえないぐらい開かなかった?

グググ……お、アレ、も食い物、カ?

え?あれは違うよ、射的って言って、鉄砲で景品撃ち落とすの

面白、ソーダ、な

やってみる?

無論、ダ

なる、ホド……これで、狙ウ、のだな

お嬢ちゃん、そんな服で撃ちにくくないかい?

問題、ナイ

?!

なに……今の……?

グググ……人間如き、道具デ、手こ、ズル、私ではな、イ

え?人間如き?どういう事……?この子、もしかして大富豪の娘さんで鷹狩りとかが趣味とか?!えぇ……もしかして後輩くん凄い人なの……?

ググググ……マトメ、て捕獲……グググ!

彼女と一緒に祭りを練り歩く事一時間……もう殆どの店は制覇した。店長から頂いたお金がなかったら、どうなっていたか……

でも、よくそんなお腹に入るわね……あなたそんな大食いだったの?

そこ、ラノ、人間とは、格ガ、違うから、ナ

うーん……この偉そうな口調は誰から学んだのかな……

ムゥ、だが流石に、少シ、疲レタ……な……

あー、どこか座れるとこ探す?

ウン……

うーん……でも、ベンチは多分埋まってるだろうし……あ、そうだ、屋台に戻れば椅子も扇風機もあるから、戻ろっか

ウン……

遊び疲れたみたいね……そういえば後輩くんともバラけたままだし、戻った方がいいよね……

ドンっ

あっ、すみませ……

おいネーチャン、どぉこ見てんだよぉ

げっ見るからにステレオタイプな輩……

ちと祭りで浮かれすぎてへんか~?

ムッ

何もしなくていいから!

はっ、そんな事言ってもなぁ、こちとら……あ?んだガキィ……その目はよお!

……私、お前達、ミタ、いなの、知ッテ、る。トテモヨク……

ちょっ、ちょっと!手出しちゃ駄目だから!こっちが謝れば済むから!ね?

おうおう、こっちも最初は素直に謝りゃ許してやろうかとも思ってたんだがよ、そのガキがちと躾がなってねぇみたいじゃねえか!

そんなんやから、こちも許す気無くなっとんねんな。ちとネーチャンら、面貸せや

わ、私達今から人と会う約束があるんです!

そか、ならとっとと用済ませたるからな、尚更来てもらおか

痛っ……!離して!離してったら!誰か!

なんで……なんで誰も助けてくれないの?……事なかれってこと?

こいつらは前に、我が下僕を傷つけた者達と同類だ……我が下僕の次は、下僕の友を狙うか……卑怯者共めが……今ここで殺してやりたい……!だけど……だけど……竜になったら……もう……!

てめぇも来いや、ガキぃ!

ヤメロ……!コノ……!

騒ぐなや、これ以上荒立てとうないねん……なぁ?

……許サン……

いい加減にしてよ!お金はそれで全部だって言ってんでしょ!

うっせぇ!もうちょっといいだろ!

こっちはどうします?

あ、そっちはしっかり見張っとけ!

このままでは友が…だが……竜になったら……でも……竜になったら、もう……でも助けないと……

暴れんじゃねえ!

ぐっ!

あっ……

抵抗すっから痛い目みるんやでぇ?大人しゅう、兄貴に従っとけや

絶対……許さないから……

生意気な口言えねえようにしやんよ!

ぐぅっ!ぁっ……!

……!

許サン……許サン……!

へっへっへっ……だいぶ大人しくなったなぁ……んじゃあそろそろ、お触りタイムといこうか?

ひっ……や、やめっ……!

…………モウ、ガマンスル必要ナンテナイ……

おい!やめろお前ら!

……後輩……くん……?

先輩達から離れろぉお!

痛っ……!何すんだてめえ!

がっ……!このお!

ヤメロ……

てめえ、この女の彼氏か?!それともいい所見せようってか?ああ?!

ぐっ!ゴホッ!

お前も手伝え!

あいさー!

後輩くん……!

がはっ!ふざけんじゃ……ねえ……!うぐっ!?

ヤメテ……ヤメテヨ……

調子乗ってんじゃねえ!

ナンデ?ナンデアイツガイジメラレナキャナラナイノ?痛イ事、サレナキャイケナイノ……ドウシテ……?

ケッ、弱ぇ癖によお!

許サン……

ぐっ……

絶対ニ……!

よ……せ……!

後輩……ちゃん……?

貴様ラ……絶対許サン……!

うるせえなあ!てめえから……あ?!

あ、あ、あ、兄貴……なんすか……あれ……?

し、知らねえ……知らねえぞ……こんな……こんな……!

やめろ……!駄目だ、やめろ……!

グルルルル……楽ニハ、殺サン……!

あ、あ、あ……

なんだよ……なんなんだよ?!

グガアアアアアア!

あああああ!

あ、兄貴いいいいい!

離せ……!離せバケモンが!

バケモン……理解不能ナ相手ヘノ、侮辱ノ言葉…………ナラ、貴様達、ノホーガ、バケモン、ダ!

う、うわああああああ!離せ!離せえええええ!

痛イカ?我ガ友達モ、痛カッタ……ダカラモット……痛ク、シテヤル……!

あああああああああああ!!!!!

ぁっ……ぁっ……

も、もう堪忍してやああああああああ!!!!!

逃ガサン……!

がっ……!ひゃっ、あっ……あああああああああああああ!!!!!

貴様ラ……後悔シロ……!痛ガレ……!モット、モット……!

やめろ!やめるんだ!殺しちゃ駄目だ!

こ、後輩くん!ど、どういう事なの……?!

そ、それは……

グググググ……少シ、折ル……

あ゛っ!あぁ……っ!

グググ……!モー、コッチ……イイ……グググ!

ひゃっ……やめろ!やめろ!助けてくれええええええええええええええ!!!!!

ググ……グググググ……!ググググググググ!

やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

はっ……!はっ……!はっ……!

と、止まった……?

グルル……

た、助かった……?

……行ケ……二度ト、顔見セル、ナ

は、はいいい!兄貴!歩けますか?!

…………

この馬鹿が!やめろって言ったろうが!

……ダッテ……だって……二人と、モ、殺される、カモ……しれなかった……!

だからって……だからってな……!あの姿にはなっちゃいけないんだ!人を殺すのは……もっと……!

ワカッ、てる……わかって……デモ……でも……!

……もういい……お前の気持ちはよくわかったから……

ゴメン、なさ、イ……ごめんな、サイ……!

泣くな、泣かないでくれ。俺の方こそ、助けてもらったのに……ごめんな

ウッ……グッ……エグッ……

後輩くん……ゴス子ちゃんは一体……?

先輩……

モウ、隠せ、ナイ……

どういう事?あんなドラゴンみたいになって……その子は……

……先輩、この子は……


先輩に少女の正体がバレてから数日後。

すっげぇ!治った!ほんとに治ったよ!?見て、バイトちゃん!包丁でざっくりいったのに、もう治っちゃったよ!?しかも正体がドラゴン!本当に凄いね、この子!ははっ!

グググ!私に、カカレ、ばどうと、ユー、事はない

痛みが食べ物で、ついでに傷も治しちゃうなんて、便利ね

ググ……ここ、居レバ、食い、ホー、だい、ダナ!

これからも、よろしく頼むよ~!あっ!いっその事、喫茶店やめて、ドラゴン傷治し屋でも開いちゃう?!あーはっはっはっ!

これからもよろしね、ゴス子ちゃん♪

ウム、任せ、ロ!

あ、スルー?

なんか、普通に受け入れられてた。
ここの人達がいい人ばかりで、本当に良かった。

続く

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