どういうこと……?

私は、マリエに質問した。

このメッセージがもし、弟からのものでないのだとしたら……

一体、誰がなんの為に?

弟は無事なのか?

いろんな思いが交錯する。

このメッセージが
私達を何かに導いているのは確かよ
それが良い方向かどうかは
……わからないわ
でももし、本当にユカの弟からなら……

こんな……危ない目に合わせる様な事は
させない……と思う……

確かにそうだった……。

本当に弟からなら、こんな危険な事させるだろうか?


コレが、弟からのメッセージだという証拠もない。

でも、コレにすがるしか弟を助ける糸口が見えなかった。

マリエの言う通り、メッセージに頼り過ぎるのは危険なのかもしれない。

でも、このメッセージが
ユカさんの弟からでないなら……

一体、誰から……

さぁ……?
人なのか……
人ならざるものからなのか……
わからないけど……

弟じゃない誰かから
かもしれない……って事
だよね……?

そう、だからこのメッセージも
あまり信じない方がいいと思う……

ん?
『も』って?
どういう……

その時、再び
スマホが振動した……。

居間にある 鏡台を開け

居間にある鏡台を開け……
だって……

鏡台ね……
そこには例の約束は?

鏡台にまつわる約束は
ないと思ったけど……

そう……
じゃあ、とりあえず
居間へ行ってみましょうか?

私たちは、居間を探すべく台所から廊下に出た。

居間は、部屋の間取りから考えると台所の隣だろう。

武器になりそうなものは調達出来なかったが、マリエの言った

『赤い櫛』を握り、居間の方へ向かった。

ユカ……例の約束って
なんの為にあるんだと思う?

私の後ろにいたマリエが、そう突然呟いた。

えっ?
約束?
……心霊スポットではよく聞くよね

そうね、でもここの約束は
多分、何か理由がある気がするの……

理由……?

真実を隠す為と……
その為のフェイク……

どういう意味……?

このドアの向こうが
居間じゃないかな?

木製の重厚そうな扉は、僅かに隙間が開いて



まるで、私たちを誘っているかの様だ。

あ、開けるよ?

中には……

闇が広がっていた。

懐中電灯の光が、心もとなく思えるほど

深淵の闇がそこにはあった……


一歩、足を踏み入れ周囲をよく見回してみる。


やはり、荒らされている。

家具や観葉植物がめちゃくちゃに倒れ、ひどい有様なのは1階の他の部屋と変わらない。


だが、一つ違うのは……







床を覆い尽くすほど、黒く長い髪が敷き詰められている事だ。

この髪は……アノ女の……?

ここが、最後の部屋だね……

そして……。


倒れた家具の中、異彩を放つ鏡台と思しき物が部屋の真ん中に鎮座していた。

アレの事だよね……

私はそれに歩みより、扉に手を掛けた。


しかし、鏡台は全く開かない。

ダメだっ……
開かない……

私の様子を見て、マリエとヒロも一緒になり

力任せに鏡台に手を掛けを開こうとする。


だがびくともしない……。

鍵がかかってるみたい

鍵って……もしかしてアレじゃ?

ヒロが思いついた様に言った。


私はポケットの中から鍵を探した。

浴槽の髪の中で見つけた鍵だ。

小さな鍵を手に取ると、懐中電灯の明かりを照らしながら鏡台の鍵穴を探す。

あっ……あった!

鍵を鍵穴に通すと、カチャリという音がして


鏡台の扉が開いた……。

こ……コレ……

開いた鏡台の鏡の中には……

私ではない、別の人の姿がぼんやり映っている。


と、その時──

スマホが振動した。

鏡を   壊せ

ユカ?
次はなんて?

鏡を壊せって……

でも……

鏡に映るのはぼんやりとした少年の影だ。


私がどうしていいか戸惑っていると……

感じた事のない冷気が、背中を襲った。





ふと、居間の入り口に視線を向ける。




そこには──

    アノ女がいた。

いっ……いやっ……

女は、ユラユラと揺れながら、私たちに近づいて来る。


相変わらず不気味に歪んだ笑顔のままで、コチラにゆっくりと向かっていた。





恐怖のあまり、私は立ち尽くしてしまった。


体が動こうとしないのだ。

か、鏡を壊すんだ!!

ヒロはが倒れていた椅子を手に取り、鏡にそれをぶつけようとする。

ダメっ!!
鏡を壊してはいけないっ!!

しかし、マリエは鏡の前に立ち

ヒロが鏡を壊そうとするのを拒んだ。

なっ、なに言ってんだよ!?
壊さないとみんなアノ女に……!!

ダメよ、コレを壊したら……

きゃっ!!

二人が言い合う最中

私は足を女の髪に捕らえられた。

ユカ!!

女の髪は生き物の様に、辺りを這い回る。

私は、持っていた櫛で足に絡まる女をの髪を振り払おうと必死になった。


すると……

髪はしゅるしゅると私の足から離れ、女が少しひるんだ様に見えた。

この櫛……

やっぱり、女の弱点なんじゃ……

あっ……!!

櫛を恐れた女の髪が、今度はマリエの方へと襲いかかる。

マリエ!!

マリエの小さな体が、勢いよく女の髪によって部屋の隅に叩きつけられた。

ユカさん!
僕が女にその櫛をさしてる間に鏡台を!!

でっ……
でも……

戸惑う私に、部屋の隅でうずくまるマリエが叫んだ。

ユカ!!
ダメよその人に櫛を渡したら!!

えっ!?
どうして……

ユカさん、マリエさんを信じたらダメだ!!
彼女はアノ絵を見てから様子がおかしい!

アノ女に憑りつかれている!!

ユカ!!

ユカさん!!

私は……


どちらを信じればいい?

pagetop