え?
窓って、もしかして――
あ、あの、黒板のすぐ横にある、カーテンのない小さな窓に……
白い、しわだらけの顔みたいなものが……こっち見て……
……あれのこと?
あ……
なにあれー……
……ほんとだ。顔っぽいものがみえる
あ……………………
あ、あの……早く、明かりを……
きゃあっ!?
な、なに!?
だれかが私の腕を……離して! あっ?
きらりん! 明かりをつけて! すぐ近くにあるから!!
うんー、わかった――あ、きゃっ
な、なに?
うー、いたいー……
きらりん! だいじょうぶ!?
あっ!?
さやりんー?
いっつー……。なんで机がこんなところに――
きゃあああああああああっ!?
ちょ、ちょっとなに!? さっきから何が起きてるの!?
や、やめて、ちょっと……たすけて!
ともちん!?
うー……まだあの顔、見えてるよー。怖いー
そ、そんなことより、ともちん、大丈夫!?
はやく明かりをつけないと……きらりん!
きらりん立てないー。足が挟まってて立てないー
足が挟まってるーー?
何に挟まってるの? きらりん、大丈夫!?
あんまり大丈夫じゃないかもー
うー、まだあの顔がこっち見てるー
顔って……
うそ……ほんとに窓の顔がこっちにらんで……
だから離してって! ちょっ……や、やめて!!
ともちん!
と、とにかく明かりをつけないと
――ここだ。えいっ!!
――で、そのあとどうしたの
八月十八日。登校日。
沙弥香は四日前のあの夜に遭遇した
恐怖体験について語っていた。
だから、私が明かりをつけたら、ともちんは萌香に引き倒されてて、きらりんは机の下敷きになってたの
…………えーっと、ひとつずつ説明してもらっていいかしら
うん
まずきらりんは、窓に白い顔が見えたとき照明のボタンに一番近いところにいたから、私が『明かりつけて』って言ったんだけど
きらりんあわてちゃって、近くの机にぶつかってガチャガチャしてたらいつのまにか足が机の下敷きになってたんだって
私もすぐあと明かりをつけに行こうとしたんだけど、きらりんが倒した机につまづいたの
……で、射原さんは?
萌香がみた窓の白い顔をともちんもみて、怖くなってとっさに近くにいた萌香の腕をつかんじゃったんだって
ほら、ともちんって心霊関係すっっっごく苦手でしょ?
……しらないけど
苦手なのよ、私
わっ、いたの?
急に後ろからリアクションしないでよ。驚くでしょ……
でも、射原さんはそういうの信じないタイプだと思ってたわ
まあ、私も信じてなかったんだけど……ほんとに見えたのよ
で、怖くなっちゃって思わず萌香に――
そしたら萌香がうれしさのあまり叫んじゃって……。むしろILLYさんウェルカムみたいな? で、ともちんをおもいきり引き倒しちゃって、おもわずともちんが「たすけて!」って。
でも暗闇の中でのできごとだからさ、私も何が起きてるのかわからなくてドキドキしちゃってさ~
ひたすら混乱したあげく、なんとか私が明かりをつけてすべて解明! 万事解決! っていうわけなのよ
……で、けっきょく怪奇現象は起きなかったわけね
え? いやいやいやいや
塔子、いままでの話、聞いてたでしょ? 幽霊出てきたじゃん
幽霊……その萌香っていう子が窓に見た顔のくだり?
もちろん!
白い顔が窓にぼんやりと見えてさあ。私もまさかと思ったけど、見たらほんとにいたの。もうビックリだよ
あれはぜったい、私たちの儀式で復活した元生徒の亡霊だと思う
私も見たのよ。確かに。窓にぼーっと浮かぶ人の顔を
私、幽霊ってはじめてみたから、いまだに鳥肌が立つわ
まあ、射原さんが言うなら信ぴょう性があるけど
それどういう意味?
言葉のままの意味だけど
瓜生さんの話はなんていうか、どこか軽い印象があるから
ともちんのバカ!
なんで私!?
――それはともかく
それって、本当に幽霊?
決まってるじゃん。ほんとに真っ暗闇の中で、人の顔が窓に映ったんだよ
それ、どんな顔だったの。具体的に、なにが見えてたの
まあ、白い顔だったよね。ぼうっとしてて
うん。目と口があって、じっとこっちを見下ろしてる、みたいな
目と、口
それ以外の部分は? 鼻や耳はみえなかったの
うん
……それ、大事なことなの?
ふーん……
ちょっと私を、演劇部の部室に連れていってくれないかしら
えっ、どうして?
少し興味がわいてきた
あなたたちの見たものが本当に幽霊だったのか、検証してあげるわ