瓜生 沙弥香(さやりん)

え?

射原 小知火(ともちん)

窓って、もしかして――

神 萌香

あ、あの、黒板のすぐ横にある、カーテンのない小さな窓に……

神 萌香

白い、しわだらけの顔みたいなものが……こっち見て……

瓜生 沙弥香(さやりん)

……あれのこと?

小野原 雲母(きらりん)

あ……








































小野原 雲母(きらりん)

なにあれー……

瓜生 沙弥香(さやりん)

……ほんとだ。顔っぽいものがみえる

射原 小知火(ともちん)

あ……………………

神 萌香

あ、あの……早く、明かりを……

神 萌香

きゃあっ!?

瓜生 沙弥香(さやりん)

な、なに!?

神 萌香

だれかが私の腕を……離して! あっ?

瓜生 沙弥香(さやりん)

きらりん! 明かりをつけて! すぐ近くにあるから!!

小野原 雲母(きらりん)

うんー、わかった――あ、きゃっ





















瓜生 沙弥香(さやりん)

な、なに?

小野原 雲母(きらりん)

うー、いたいー……

瓜生 沙弥香(さやりん)

きらりん! だいじょうぶ!?





















瓜生 沙弥香(さやりん)

あっ!?





















小野原 雲母(きらりん)

さやりんー?

瓜生 沙弥香(さやりん)

いっつー……。なんで机がこんなところに――











射原 小知火(ともちん)

きゃあああああああああっ!?











瓜生 沙弥香(さやりん)

ちょ、ちょっとなに!? さっきから何が起きてるの!?

射原 小知火(ともちん)

や、やめて、ちょっと……たすけて!

瓜生 沙弥香(さやりん)

ともちん!?

小野原 雲母(きらりん)

うー……まだあの顔、見えてるよー。怖いー

瓜生 沙弥香(さやりん)

そ、そんなことより、ともちん、大丈夫!?

瓜生 沙弥香(さやりん)

はやく明かりをつけないと……きらりん!

小野原 雲母(きらりん)

きらりん立てないー。足が挟まってて立てないー

瓜生 沙弥香(さやりん)

足が挟まってるーー?

瓜生 沙弥香(さやりん)

何に挟まってるの? きらりん、大丈夫!?

小野原 雲母(きらりん)

あんまり大丈夫じゃないかもー

小野原 雲母(きらりん)

うー、まだあの顔がこっち見てるー

瓜生 沙弥香(さやりん)

顔って……









































瓜生 沙弥香(さやりん)

うそ……ほんとに窓の顔がこっちにらんで……

射原 小知火(ともちん)

だから離してって! ちょっ……や、やめて!!

瓜生 沙弥香(さやりん)

ともちん!

瓜生 沙弥香(さやりん)

と、とにかく明かりをつけないと

瓜生 沙弥香(さやりん)

――ここだ。えいっ!!















































































































藤巻 塔子

――で、そのあとどうしたの































八月十八日。登校日。

沙弥香は四日前のあの夜に遭遇した
恐怖体験について語っていた。





























瓜生 沙弥香(さやりん)

だから、私が明かりをつけたら、ともちんは萌香に引き倒されてて、きらりんは机の下敷きになってたの

藤巻 塔子

…………えーっと、ひとつずつ説明してもらっていいかしら

瓜生 沙弥香(さやりん)

うん

瓜生 沙弥香(さやりん)

まずきらりんは、窓に白い顔が見えたとき照明のボタンに一番近いところにいたから、私が『明かりつけて』って言ったんだけど

瓜生 沙弥香(さやりん)

きらりんあわてちゃって、近くの机にぶつかってガチャガチャしてたらいつのまにか足が机の下敷きになってたんだって

瓜生 沙弥香(さやりん)

私もすぐあと明かりをつけに行こうとしたんだけど、きらりんが倒した机につまづいたの

藤巻 塔子

……で、射原さんは?

瓜生 沙弥香(さやりん)

萌香がみた窓の白い顔をともちんもみて、怖くなってとっさに近くにいた萌香の腕をつかんじゃったんだって

瓜生 沙弥香(さやりん)

ほら、ともちんって心霊関係すっっっごく苦手でしょ?

藤巻 塔子

……しらないけど

射原 小知火(ともちん)

苦手なのよ、私

藤巻 塔子

わっ、いたの?

藤巻 塔子

急に後ろからリアクションしないでよ。驚くでしょ……

藤巻 塔子

でも、射原さんはそういうの信じないタイプだと思ってたわ

射原 小知火(ともちん)

まあ、私も信じてなかったんだけど……ほんとに見えたのよ

射原 小知火(ともちん)

で、怖くなっちゃって思わず萌香に――

瓜生 沙弥香(さやりん)

そしたら萌香がうれしさのあまり叫んじゃって……。むしろILLYさんウェルカムみたいな? で、ともちんをおもいきり引き倒しちゃって、おもわずともちんが「たすけて!」って。

瓜生 沙弥香(さやりん)

でも暗闇の中でのできごとだからさ、私も何が起きてるのかわからなくてドキドキしちゃってさ~

瓜生 沙弥香(さやりん)

ひたすら混乱したあげく、なんとか私が明かりをつけてすべて解明! 万事解決! っていうわけなのよ

藤巻 塔子

……で、けっきょく怪奇現象は起きなかったわけね

瓜生 沙弥香(さやりん)

え? いやいやいやいや

瓜生 沙弥香(さやりん)

塔子、いままでの話、聞いてたでしょ? 幽霊出てきたじゃん

藤巻 塔子

幽霊……その萌香っていう子が窓に見た顔のくだり?

瓜生 沙弥香(さやりん)

もちろん!

瓜生 沙弥香(さやりん)

白い顔が窓にぼんやりと見えてさあ。私もまさかと思ったけど、見たらほんとにいたの。もうビックリだよ

瓜生 沙弥香(さやりん)

あれはぜったい、私たちの儀式で復活した元生徒の亡霊だと思う

射原 小知火(ともちん)

私も見たのよ。確かに。窓にぼーっと浮かぶ人の顔を

射原 小知火(ともちん)

私、幽霊ってはじめてみたから、いまだに鳥肌が立つわ

藤巻 塔子

まあ、射原さんが言うなら信ぴょう性があるけど

瓜生 沙弥香(さやりん)

それどういう意味?

藤巻 塔子

言葉のままの意味だけど

藤巻 塔子

瓜生さんの話はなんていうか、どこか軽い印象があるから

瓜生 沙弥香(さやりん)

ともちんのバカ!

射原 小知火(ともちん)

なんで私!?

藤巻 塔子

――それはともかく

藤巻 塔子

それって、本当に幽霊?

瓜生 沙弥香(さやりん)

決まってるじゃん。ほんとに真っ暗闇の中で、人の顔が窓に映ったんだよ

藤巻 塔子

それ、どんな顔だったの。具体的に、なにが見えてたの

瓜生 沙弥香(さやりん)

まあ、白い顔だったよね。ぼうっとしてて

射原 小知火(ともちん)

うん。目と口があって、じっとこっちを見下ろしてる、みたいな

藤巻 塔子

目と、口

藤巻 塔子

それ以外の部分は? 鼻や耳はみえなかったの

瓜生 沙弥香(さやりん)

うん

瓜生 沙弥香(さやりん)

……それ、大事なことなの?

藤巻 塔子

ふーん……

藤巻 塔子

ちょっと私を、演劇部の部室に連れていってくれないかしら

瓜生 沙弥香(さやりん)

えっ、どうして?

藤巻 塔子

少し興味がわいてきた

藤巻 塔子

あなたたちの見たものが本当に幽霊だったのか、検証してあげるわ











#4 カイキゲンショウ

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