本に囲まれた部屋
元々、叔父の部屋で、去年亡くなったのだが、僕が使いたいと言いそのままにしてくれた。

分厚い本、参考書、小説・・・

図書館とはいかないが、僕にとっては大きな図書館だった。


そんな部屋にベットをおいて寝ているのだが、寝起きは悪いため目覚ましは何度も鳴っていた。

そして、奏が置いていったラジオの目覚まし機能が動き始めた。

”オレの暮らしは何の変哲もなくて、毎日働きづめで余裕なんてない。オレにも叶わぬ夢があったなんて誰も知らない。もうずっと昔に置き忘れて来たけれど・・・オレは幻想の中を生きようとしていた。若過ぎたんだ。・・・その頃、オレ達は一緒だった。オレを微笑ませる数々の思い出・・・・・・オレは忘れない。お前が「いつまでも金ピカのままで」って言ったこと忘れないよ。―いつも心の中に―”

友之

流石に毎朝聞いてたら覚えてきた。
えっと・・・なんて曲だったっけ・・・

友之

・・・あぁ、そうだ。
「Stay Gold」だ。

10年くらい前のバンドだったかな。
奏が音楽を始めたきっかけだった。

友之

・・・ん?八時・・・?

友之

しまった!!遅刻だ!!

遅いな・・・アイツ・・・

アイツ・・・友之はまじめ人間だ。
遊びに行くときは一時間前から居る。

それくらいまじめ人間だ。

寝坊かな・・・
アイツ・・・結構遅くまで書いてるみたいだし・・・
あまり根を詰めて欲しくないな・・・

友之

はぁ・・・・はぁ・・・・

僕は走っていた。体育の評価1の僕が・・・

遅刻は許されない。
僕がこんなことで遅刻したなんて知られたら叱られる。

もう、小説を書くことを許してもらえなくなる。

友之

なんとしても・・・間に合わなきゃ!!

朝礼時間まであと15分
全力で走って30分

30分間ずっと走れるほどの体力があるわけもなく、家から2分走っただけで、体は悲鳴を上げている。

つまり、絶対無理なのだ。

こんな僕がどんなに走ろうとキセキが起きるわけはないのだ。
突然神様がやってきて、僕を学校まで連れていく。
そんな夢みたいなことが起きるわけない。

友之

はっ・・・はっ・・・はっ・・・はっ・・・

この交差点を過ぎたら近道がある。

そこを通れば、10分くらい短縮できる。
そうすれば・・・ぎりぎり間に合う!!

急ぐんだ!!

交通量の少ない交差点
一気に駆け抜けてしまっても大丈夫。

・・・そんなはずはなかった。

右側から来たものは大型のトラックだった。

普通なら、クラクションを鳴らし。派手なスキール音を鳴らしながらやってくるハズ・・・

そんなわけもなかった。


たった一瞬、排気ブレーキの音が響き、小さく「ゴン」という音を立てて”僕”は大きな空の中に吸い込まれていった。


真っ暗な視界の中、声が聞こえた。
たぶん慌てたドライバーの声だろう。

・・・なんだ・・・もうおしまいか・・・

という声だった。

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