毎日同じような日々を過ごしていた。

朝起きて、学校へ行って、勉強して、塾行って、眠るだけ

そんな簡単な”螺旋業務”をこなしているボクは唯一、他人より出でたものがあった。

それは、小学校の頃にたった一言「面白い」と言われて書き始めた小説だ。


これまで書いた数は15
今書いているものも大半は終わっている。

友之

今晩で何とか終わるかな。
次のネタを練っておかないと・・・止めるわけにはいかない。

友之

さて、次は何を書いてみようかな・・・

なんだか楽しそうだな。君の”夢物語”のことでも考えていたのか?

友之

か・・・奏!!
なんだよ。人の作品を”夢物語”なんていうなんて!!

それはすまないな・・・
君の物語は・・・俺には見れないような世界なのでな。

俺にとっては”夢物語”だ。

友之

それは、ほめているのか?それともバカにしてるのか?

全力でほめているつもりだ。

放課後、今日は塾がない。
だからこそ、僕は家ではなく誰もいない教室で小説を書いている。

家から持ち出したPCで書いていく小説は「妄想した世界に生きる物語」だ。
これは、毎日見ていく夢をヒントに書いていったものだ。

夢の中では自分はヒーローでも悪党でも世界の王にもなれる。
そんな力を得た主人公の物語だ。

自分としても、ものすごく気に入っている。

なんでも叶う世界・・・
それは、人間が思う最高の世界だと思う。

ふふ・・・
頑張ってるな。君は・・・

友之

うわぁ!!

友之

な・・・なんだ。奏か・・・
驚かすなよ・・・

ふふふ・・・そんなに恥ずかしいものを書いているのか?君は

大体、この時間にここに来るやつはいないだろ?

大きなギグバックを背負った奏は、きっと部活が終わった頃だったんだと思う。
午後六時半を回った頃
奏はいつもなら部活のメンバーと一緒に帰ってるはず。

友之

・・・はい?

こうやって帰るのは何年ぶりだろうな。
なぁ友之・・・

友之

小学校以来だよ。六年になった頃「付き合ってる。」何て言われてからやめたんだっけか・・・
今でも抵抗があるくらいだし。

ふーん。そっか・・・
俺はまだ”女”に見られてたのか。

友之

君の場合、口調は男でも外見は普通に女だからな。
僕の苦手なように成長してるし。

ははは・・・そいつはどうも・・・

友之

まぁ、中身の成長は止まったみたいだがな。
それだけが救いだ。

・・・・

そうだな。

それじゃあな。友之
・・・

友之

・・・

友之

何かあったのか?少し様子がおかしいぞ?

・・・なんというか・・・
君はカンがいいというか。なんというか・・・

友之

幼馴染だからね。
昔の癖がそのままだからな。

何か言いたそうにこっちを見てくるからな。

そんな・・・人を猫みたいに!!

友之

・・・少し寄り道しよう。

友之

ここなら人気もないし。大丈夫だろ?

友之

・・・って、なんかあやしいセリフを言ってしまったな。

・・・ぷ・・・

ははは・・・なんだか恋人みたいだな。

友之

い・・・いや、そんなつもりは・・・

わかってるよ。君が・・・私に興味がないってさ・・・

いつもは”俺”何て言う奏が、珍しく”私”という一人称を使った。

その言葉の力はすごかった。目の前にいる”幼馴染”という”区別”していた存在が、今や”女性”と”区別”している。

夕日に焼けた白い肌は見ていると心が高鳴った。知らない感情がぐるぐると回り始めた。

いや、これは知っている。
小学校の頃感じていたのと同じ気持ち・・・

君は・・・いいよな。
毎日夢にまっすぐで・・・

でも・・・私は・・・

友之

何を言ってるんだ。
奏だって毎日練習してるじゃないか。
音楽で生きていくって・・・

・・・そうだったね・・・でもね・・・

たぶん無理かな・・・

いがいにさ・・・自分が特別だって思ってた事がさ・・・誰にでもできちゃう・・・んだ。

なのに・・・みんなからはいろんなことを求められるんだ・・・私じゃなくてもできることばっかりなんだ・・・

私はもっとできる・・・そう思ってずっと続けてきた。

そうしなきゃ、きっと目の前の現実につぶされちゃうから・・・

夢が・・・夢でおわちゃうから・・・

・・・だけど・・・
実際私にできることって少ないんだって気づいたの。

言われたことをやる。それだけが自分の限界だった。

バカみたいだよね・・・
夢物語なんて語っちゃってさ・・・はは・・

友之

・・・

・・・

それじゃぁ・・・ね・・・

友之

夢物語で・・・悪いのか?

それを叶えるから夢なんだろ?

友之

なーんて言えるわけもないし・・・

それにしても・・・心配だな。

友之

・・・と、いけない!!

今日中に完成させないと・・・

僕の”夢物語”はまだ続いてるから・・・

まぁ、ほんとに”夢物語”なんだけど・・・

友之

さて、やるか・・・

時計は翌日を告げる鐘を鳴らしている。

友之

おっと・・・もうこんな時間か・・・寝なきゃ・・・

明日も塾だし・・・

友之

でも・・・完成しなかったな・・・
仕方ない・・・

後半のクライマックスを書き終え、のこりはエンドの書き納めだけ・・・

まぁ、一回テンションを落としてから書いた方がいいのかもしれないと考えた。

・・・ふふふ・・・これはこれは・・・

pagetop