ノックと共に声をかけると、ドアの向こうから結木君が顔を出した。
後ろに片倉さんの顔も見える。やっぱり同じ部屋なんだ……

結木君いわく、武井さんのPROFILEは次のようになる。

……『親戚と二人で旅行』？

僕は先ほどのメモを見返した。辻褄が合わない。

武井さんのPROFILEからすると、彼女のペアになる人物が一人存在するはずだ。

このゲームには、『ペアがその場にいない時、他人に自分のペアが誰であるか話してはならない』というルールがある。無論、それがトリックに用いられることもあるからだ。結木君は残念ながら、彼女のペアが誰であるか確認することができなかったらしい。

誰のPROFILEにも、武井さんとのペアであるような記述がない以上、犯人が自身のPROFILEを偽っている可能性がある。

これは大きな手がかりを得られたかもしれない。

次に、僕は厨房に向かった。

武井さんの胸に突き立てられた包丁。
あれは恐らく、厨房のものだ。

調理台付近に並んだ、調理器具の数を数えてみる。


……やっぱり。

206号室に戻り、志島さんに聞いてみた。
彼はまだ現場を調べている。
近くにはハルカちゃんがいるので、証拠の隠滅などはできそうにもない。

夕食の時点で調理器具は不足していない……
ということはつまり、包丁が持ち出されたのは夕食後から殺害までの間ということになる。


この時間の全員のアリバイを確認しておいた方が良さそうだ。

具体的な殺害時間は特定できない。
死後硬直の程度から逆算するなどということは、素人の僕らには不可能だ。

だからとりあえず、夕食後から遺体発見までの時間のアリバイを聞いて回ることにした。

201号室、ユナちゃん。

202号室、ハルカちゃん。
ハルカちゃんは僕と口をきいてくれないので、ユナちゃんに聞き出してもらった。

203号室、結木君、片倉さん。

204号室はこのコテージに存在しない。
4の付く部屋番号というのは忌み嫌われるらしいので、そのせいだろう。

205号室、僕だ。

言うまでもないが、ずっと寝ていた。
途中でトイレに起きてもいない。
朝は7:00に間に合うように起床し、食堂へ向かった。

206号室、武井さん自身については分からないな……

夜中に武井さんと出会った人もいないようだし、ずっと部屋にいたのか……
それとも、部屋以外のどこかにいた武井さんに、こっそり誰かが会いに行ったのか……

この辺りは、今得ている情報では判断ができない。

管理人室、志島さん。

……アリバイについてはこのくらいか。
基本的に、全員にアリバイがないような形になる。



この後、温泉や医務室など、ある程度館内に手がかりがないかを探し回ったが、特に見つけられなかった。

後はもう、集めた情報を組み合わせて推理するしかない。