いやー 参った参った

なげートイレだったな

お前のせいだけどな

なんか言ったか?

別に なかなか快便だったなと思って

にしては手こずり過ぎじゃね?

おーっす みんないるかー?
あーくっそ眠い・・・
じゃ一応仕事なので諸連絡とかしとくかー

担任の佐々木ががだるそうに諸連絡を言っていく。
担当は化学で基本的にこんな調子だが授業の分かりやすさには定評があるらしい。またその気だるさと顔のよさが女子生徒に人気だという話だ。
そして常に眠そうにしているのは、怪しい仕事のために夜の街に繰り出しているからだとか、夜な夜な女子生徒や女性教師と不純異性交遊をしてるからだとかと噂されている。
あと別口でよく昼休みや放課後に特別教室棟の三階のトイレに入っており追って中に入ると佐々木の姿はなかったという最早お化け扱いの噂まである。
まあどの噂も富津から聞いたのだが・・・。
何かと話題になる先生のようだ。

えーってなわけでホームルーム終了
一時間目化学だろ 小テストすっから
まあ足掻けよ

そう言ってまただるそうに教室を出ていく佐々木。当然教室の中では絶賛ブーイング中だ。

マジかよ!?くっそ佐々木のやろーふざけんなよ

そう言いながら慌てて教科書とノートを開き必死に見直す富津。
時々抜き打ちの小テストをするのが佐々木のやり方らしい。

・・・

小テストが始まり5分が経過した。
前日ノートを見直ししてた俺には簡単だったのですぐ終わり、暇を持て余しボーっとしていた時だった。
教室の前方のドアの窓から人影が見えた。
見回りしてる校長かなんかだろ、となんとなくそっちの方向を向いた。

なんか少女がいる。
見た目は小学生くらいだろうか、一昔前によくいそうな黒髪のおかっぱに白いシャツに肩から赤い紐が下がっている。おそらく赤いスカートに繋がっているのだろう。
そんなそんな高校にいるはずのない少女が教室のドアの窓からこちらを覗いている。
そんなこの場に不相応な少女がいるという事態に俺が出した結論は、

またそっち(幽霊)か!!

これである。ていうか、これしかない。
学校でこんな短時間で立て続けに幽霊に遭遇するとは思わなかった。
まあこんな時は慌てず気付かないふりをするのが一番だ。基本は事なかれ主義、無理に首を突っ込む必要は無い。
だが、急に目線を反らすのもおかしいので目線はそのままで平然を装うことにした。

何やらきょろきょろと教室の中を覗いている。誰かを探しているのか?
背が足りないため背伸びをしているのか、時々顔が引っ込み頭だけ見え、また顔を出してはを繰り返している。
しばらく少女はそれを繰り返すと

にっこりと笑い手を振った。誰に振っている
少女の視線をたどっていくとそこにいたのは、

・・・え?

きょとん顔で間の抜けた声を出した佐々木がいた。
静かな教室でいきなり声を出したので教室中の生徒の視線が佐々木の方を向く。

いやぁ なんでもない 気のせいだ
残り時間あと5分だからな

ああ取り繕ってはいるが俺は確信した。佐々木にもあの少女が見えている。
まあ視えるヤツなんて稀にいるが、まさか身近なしかも担任の佐々木が視えるヤツだとは驚きだ。
しかもあの調子だとあの少女と佐々木は顔見知りなのかもしれない。だが、なぜだ?富津いわく佐々木は独身のはず。
・・・ダメだ、隠し子とかそういうことしか思い浮かばない。なんにせよ事情は分からんが関わるとめんどくさそうなのでそっとしておく。
そういう結論に至った俺はまた少女の方につい目線を移してしまった。

!?

目が合ってしまった。まずい!気付かれたか!?
関わらまいと決めた矢先だというのに・・・
しかし見られてる。めっちゃ見られてる。まるでやっと見つけたとでもいうように・・・。

満足そうに、そして不敵に笑った少女は煙のように消えていった。
ダメだ、やな予感しかしない・・・。
もう回避不可能と判断した俺は放課後佐々木に話を聞きに行くことにした。

富津いわく放課後はいつも化学準備室にいるらしいので早速向かった。

コンコンコン

1の3の柳田です
佐々木先生はいますか?

どうぞ という声が聞こえたので遠慮なく中に入った。

じゃ またなんかあったら来てね

はい! じゃまたね先生!!

・・・

なんだ 柳田 教師が生徒の相談を受けちゃ悪いかよ?

別にそう言うつもりじゃないっすけど・・・
噂になってますよ
女子生徒と不純異性交友してるって

はっ そんなの勝手に言わせときゃいいの
俺の女子への大人気にひがんだガキどもの仕業だろ
イケメンだからな 俺は

自分で言います?

事実だろうがよ んで何の用だ柳田
まさか俺の噂の真相を暴きに来たわけじゃなかろうに

いえ 率直に言います
化学の小テストの時にいた少女の霊はなんですか?

!!

僕も視える人間ですから なんかめっちゃガン飛ばされてたんで
少女が笑顔で手を振ってた相手である先生に聞けばいいかなって・・・

なるほどね
さっき携帯を見てね親友から「イイ子を見つけた」っていう連絡が来たから誰かと思えば・・・柳田か

連絡?

まあ詳しい話は場所を変えてしよう
ついてこい

そう言われ言われるがままについていくと隣の今朝女性の霊を連れてきたトイレだった。

場所を変えるってもしかして先生女子だけじゃなくて男子もイケるクチですか?

なわけあるか
俺は女子高生一筋だ

それはそれで問題あるでしょ

うっせーな ちょっと黙っとけ

そう言って佐々木はトイレの奥に進み、三番目の個室のトイレの前に立った。もちろん中には誰も入っていない。
すると佐々木は誰もいないはずのトイレのドアをノックした。

コンコンコン

花子さん花子さんいらっしゃいますか?

一週間沈黙がその場を包む。
何やってんのこいつ。そう思った次の瞬間、
扉がひとりでに開き、そして

善ちゃんいらっしゃーい!!今日は早いねー!!

おう 花子 珍しい人間のお客さんだぞ

そう言って佐々木は俺の方を親指で指差した。

・・・は?

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