「よお 久しぶり 元気してたか?」
「おー!!善じゃん!!教育実習の時以来じゃない!?どしたの?入って入って」
せわしなく床に散らかったお菓子の袋やら漫画を片づけ始める小学校からの友達。
「相変わらずだな お前も・・・」呆れつつもつい懐かしくなりながら笑みをこぼす。コイツはホントに会った時から変わらない
「来るなら連絡くれてもよかったじゃない?いつ帰ってきたの?はいお茶」
「ありがと 驚かそうと思ってな 帰ってきたのは1週間くらい前かな?荷解きが終わったらすぐにでも行こうと思ったら案外時間がかかって」出された緑茶をすすり、また懐かしさを噛み締める。
「荷解き・・・?ってことは!!」にこにことしていた彼女の顔がが更に明るくなり、私の胸に飛び込んできた。

アウェイだな

今置かれている状況に思わずボソッと呟いてしまう。
入学式から一週間も経てばある程度グループが確立されるわけで、そしてその一週間学校に来なければ・・・

こんな風に孤立してしまうわけで・・・

この高校の中で俺と同じ中学校の奴なんて皆無だろう。まあ訳あって親戚の家で居候してまで地元から離れたここに来たわけだから当然っちゃ当然だが。一から友達を作るのは一苦労だとは思ったが更に体調不良で一週間学校休んでたから余計に難しくなってしまった。

これはもうソロ充な高校生活を送るしかないなとため息をついているところに来たのが、

よお やなぎん

よお

コイツ富津である。隣の席だからというだけで絡んできたヤツでまあいいヤツであるってのは分かる。分かるんだが・・・

昨日渡したノート役に立ったか?

おう ありがとな 意外に字がキレイだな

よく言われるわ

こんな風にまだ見ぬ俺のために休んだ分のノートを貸してくれるほどのいいやつなんだが・・・

・・・・・・

後ろで悲しげに富津を見つめている女性の霊が気になってしょうがない。

なあ 富津 最近肩こりひどくないか?

え!?なんでわかんの!?もしかして超能力者?

いや
ただ霊感が強いだけだから!!

超能力とかアホか
いや 時々肩ぐるぐる回してっからそうかなーって思っただけ

なんだ そうなんだよ ここ最近急に肩こりがひどくてな

そういうことなら俺に任せろ 俺流の肩こり解消法だ
後ろ向け

こ こうか?

そうそう そのままな

とりあえず普通に富津の肩を揉んどく

お 上手いな よく人の肩とか揉むのか?

婆ちゃんっ子だったからな
そんでもって仕上げに・・・

ぶっ叩く!!!

富津の背中に思いっきり平手打ちをする。

痛ッ!?
急に何すんだ!!・・・ってアレ?肩が軽い・・・すげーホントに治ったよ どうなってんの?

調子悪くなったらだいたい叩けば治るんだよ

オレは一昔前のテレビかよ!?

もちろんこれは嘘である。背中に気を込めた一撃を食らわせば大体の霊は追い払える。死んだやつより生きてるやつのエネルギーが強いからである。

まあ肩こり治ったしサンキューな

おう 俺ちょっとトイレ行ってくるわ

無理やり富津から引きはがされ動揺している霊に目でついてくるように合図し教室を出た。
人目につくとアレなのでちょっと離れた特別教室のトイレまで来た。

・・・んで なんでアイツにくっついてたわけ?

あの・・・その前になんで男子トイレに連れてきたのですか?

女子トイレに入るわけにはいかんだろ

じゃなくって人目につかなければ何もトイレじゃなくても・・・

別にいいじゃん なんでも
誰か用足してるわけでもないし

まあ そうですけど・・・

んでさっきの質問だけど

あ・・・はい 私交通事故で死んでしまったんですがどうしたらいいか分からずウロウロしてました
そしたらあの方が通りかかって事故現場に置いてある花束に向かって拝んでいたんですよ

いい人だなー もしかしたら助けてくれそうだなって思って・・・

んで取り憑いた訳だ
まあアイツに霊感は皆無だからお前には全く気が付かなかったがな
多いんだよな 助けてくれそうだからとりあえず取り憑くヤツ
大体何にもしてやれないことが多いし取り憑かれた方は霊障で体調崩したりするしサイアクだよな

はい・・・すいません

まあ いいや とりあえずお前は寺に行け
こっからなら遠野寺だな あそこの坊さんは話せるやつだから
お前が何の未練残したか知ったこっちゃないから坊さんに解決してもらえ あっちが専門だから

ありがとうございます・・・でもなんで・・・私のことが視えてる方って大体見て見ぬふりとかするのに・・・

そりゃ 霊に絡まれていい事はあんま無いからな 臭いものには蓋をしろ 事なかれ主義ってやつさ まあ俺もそっち派だけど

じゃ どうして・・・

道端の花束を拝むようなバカいい奴に俺も助けてもらったからな
そいつへの恩返しってやつだ
お前も悪そうなやつじゃなかったからな
さっさと成仏して来い

はい ありがとうございました

そう言って深くお辞儀した彼女は消えていった。

・・・・

学校のチャイムがなり 時計を見るともうすぐ朝のホームルームが始まる時間である。

やっべ!!

慌ててトイレから出ていく柳田の姿を個室トイレの陰から見つめる者がいたことを柳田は知る由もなかった。

・・・みっけ♪

柳田君とエピローグ

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