藤堂ユナ

豊根さん、こんにちは

館内図を確認するためエントランスに引き返すと、ユナちゃんが声をかけてくれた。
彼女は最初の会釈もちゃんと返してくれたし、良い人だ。

豊根カイ

こんにちは、藤堂さん

豊根カイ

間取りの確認ですか?

藤堂ユナ

うん、やっぱりまずはステージの把握だよね
あと、ユナでいいよ

やっぱり、みんな考えることは同じようだ。

振り返ってみると、他の参加者もぞろぞろと館内図前に集まってきている。

藤堂ユナ

間取り図をメモするんだったら、私の写す?
ここだと人いっぱいでメモしづらいだろうし

ありがたい。彼女の暖かい提案を是非にと受け入れると、僕らは玄関近くのソファーに移動した。

藤堂ユナ

はいどうぞ、豊根さん……
いや、カイ君でいいよね

ユナちゃんの間取り図と比べると、僕のそれは苦笑ものの出来だった。
それでもまあ、情報を読み取る分には問題ないだろう。

藤堂ユナ

間取りの確認もできたし、
今度は館内の探索に行こうかな

藤堂ユナ

よかったら一緒に回らない?
一人でやるのも心細いし

豊根カイ

それはありがたい
ぜひ一緒に頼むよ

最初に僕らがやってきたのは食堂である。
ここは厨房と隣接している。
真ん中に大きなテーブルがあり、6つの椅子が用意されている。
管理人である志島さんの席はないらしい。

ここにはあまり目当てのもの、つまり犯人が犯行に使いそうなものがない。

何かがあるとしたら、十中八九次の部屋だ。
僕らは観察眼を光らせながら、厨房への扉を開いた。

包丁、フライパン、鍋、ガスバーナー。
様々な調理器具が、調理台付近に並べられている。



そう、これらの全てが凶器になり得る。



ここから凶器が持ち出される可能性は高い。
充分に警戒しておこう。
ここにある備品の数はメモしておいた方が良さそうだ。

ユナちゃんと二人で調べた結果、全ての調理器具が三つずつ用意されているようだった。
名前のわからないような調理器具もあるので、細かくメモを取れないのが悔しい。

次にやって来たのは、受付の脇から入れる管理人室だ。

ノブを捻るも、ガチャガチャという音がするばかり。
どうやら鍵がかかっているらしい。

志島ソウイチ

ああ、その部屋はですね

間取り図をメモしていた志島さんが、こちらに気付いて近寄ってきた。

志島ソウイチ

管理人が持っているマスターキーでしか開かないんですよ。ちょっと待ってくださいね……

よいしょ、と口癖のようにこぼしながら、志島さんは管理人室の鍵を開けてくれた。

志島ソウイチ

さあどうぞ
見終わったらまた声をかけてください

管理人室内は客室と同じ作りになっているようだった。
本当に同じなのでここでは割愛し、客室を調べた際に記述する。


僕の目的はここではなく、ここに隣接する医務室にある。

厨房に刺殺、撲殺の道具が取り揃えられているとしたら、ここには毒殺の道具が取り揃えられている。
やはり、様々な薬品があるようだ。

総合風邪薬、頭痛薬、胃薬、目薬、包帯、絆創膏、ムヒ……下剤や睡眠薬なんかもある。


ここにある薬品の種類や数も一応メモしておこう。
全ての薬品が一箱ずつあるようだ。

一見少なくも思えるが、二日間のためだけに作られたステージであることを考えると、妥当なのかもしれない。

藤堂ユナ

さ、次は温泉だね

志島さんに声をかけた後、僕らはコテージ西にある温泉へと向かった。

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