こんにちはー

……?

あ、あの時の……

こんにちは。私は人形師・三宮悟の弟子をやっているたまこって言います

たまこ……さん?

祐里奈ちゃん、あなたは人形が大好きなんですよね

え?

お母さんから、そしてそのまたお母さんから受け継いだ人形のことが

……うん

じゃあ、どうしてあんなことを……?

……私、舞台女優になりたくて

はい

それで、演劇スクールに行ったらあの二階堂さんって人に声をかけられて、プロデュースしてくれるって

はい

でもね、二階堂さんは人形が嫌いみたいなの。女優には人形は必要ないって

どうして?

人形は女優の魅力を壊すって

……

人形は人を惑わすって二階堂さんは言っていた

私が本気で女優を目指すなら、人形は捨てるべきだ、とも

それで、二階堂さんの前で人形を捨てさせられて……

そんなの、おかしいです!

たまこさん……?

人形と女優は比べるものじゃない!

人形は人形、女優は女優です

……

そうだよ

あなたは……?

私は怜奈。元舞台女優だよ

元……?

今は引退しちゃったんだけどね。私も元々二階堂さんにプロデュースされていたの

でも、悟君の人形を見たときに引退を決意した

どうしてですか?

その人形があまりにも美しくて……それで、私は気が付いたの

私は人形みたいにいつまでも美しい存在ではいられないって

それじゃあ……

でもそれは、私が容姿にこだわていたから

容姿に……

祐里奈ちゃんはどうしたい? どうして舞台女優になりたいの?

それは……

きらびやかな衣装を着たい? みんなからちやほやされたい?

ううん……私はただ、舞台の上で演技をしたくて……

いろんな人に私のことを見てもらいたくて……

昔からずっと一人でいることが多かったですからね

え?

いえ、こちらの話です

祐里奈ちゃん、明日この場所に信くん……二階堂さんを呼ぶね

え?

その時に、ちゃんと話をしたいの。私たちにとっても、祐里奈ちゃんにとっても大事な話

……分かりました

 
 祐里奈は首を大きく縦に振った。
 彼女の気持ちは分かった。後は一人で突っ走る男をなんとかするだけである。

一方その頃

圭!

なんだい?

終わる気がしない

頑張れよー、天才人形師

……

悟は、自室で作業にいそしんでいた。

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