姫がさらわれてから数日がたった頃。魔王一味のアジトでは、魔女の力を使い勇者たち一行の様子を見ていた。

……。

魔王

……。

魔女

……。

これほんとに勇者様たちなんですか?

魔王

そのはずなんだがね…。

なんでまだ私がさらわれたって気づいてないんですか!

魔女

いや、なんかすまん。

謝らないでください!余計に傷つきます!

勇者様…信じていたのに…。

魔王

いや、まさかここまで仲間への関心が薄いとは思わなかった。

その言い方もやめてください!

魔王

しかし、ボクを倒すために修行だなんてうれしいね。

魔王

やってくるのが楽しみだよ。

その修行のせいで仲間が一人減ってることに気付かないのはおかしいと思うんですが。

魔王

うん、まあそうだな…。

魔王

まあ、ひとまず勇者たちはまだ来ないようだからこの件は置いておこう。

魔王

魔女くん、隊長くんに報告お願い。

魔女

はいよ。

魔王

さて、お姫様。そろそろ食事にしましょうか。

正直、食事がのどを通らないほどに衝撃を受けていますが。

魔王

あんまり食事の時間に融通は聞かないよ。今を逃すと次は明日の…。

いただきます!

ところでここって魔王のアジトなんですよね。

魔王

うん、ボクが根城にしているところをそう呼ぶならそうだね。

なんでこんなに人が住みやすい環境なんですか?

魔王

もちろん人が住みやすいように作ったからね。

どうして。

魔王

ボクが人間だから。

え!?

魔王

ああ、正しくは人間の体と言ったほうがいいのかな。

魔王

いや、それもなんか違う気がするな。

魔王

まあ、元人間ってところかな。

人がどうして人の世界を滅ぼすようなことを…。

魔王

勘違いしないでほしいな。別にボクは世界征服をしたいわけじゃないんだよ。

では、目的は?

魔王

暇つぶし。

あなたは人の命をなんだと思ってるんですか!

魔王

そんなに怒らないでよ。本当のことなんだからさ。

魔王

でも、一応言っておくと町やら国やらを滅ぼしている魔物はボクが仕向けてるわけじゃないよ。

どういうことですか。

魔王

彼らを作ったのはボクだ。でも、彼らがどう生きるかは彼らの自由だ。

魔王

だから普通に森や野原で生活してるやつらもいれば、自分らの生活区域を拡大しようとしてるやつらもいるってだけさ。

生みの親としての責任はないんですか!亡くなった人も少なくないんですよ!

魔王

だからどう生きるかは彼らの自由だろ。

魔王

種の存続と繁栄を望むのは生き物としては当然だろう。虫だってやっている。

虫と人は違います!

魔王

人間もだよ。戦争だって領地の拡大の目的で人をたくさん殺すだろう。

魔王

それをやめるためにはどうする?人を作ったと言われてる神様にでも文句を言うかい?

詭弁です!

魔王

お互い様だろ。

魔王

しかし、もっとボンボンのお姫様かと思ったけどいろいろと考えてるんだね。

魔王

どうだい?ボクらと仲間にならない?

お断りします!勇者様が助けに来るまで私は抵抗し続けます!

魔王

その勇者たちはお姫様がさらわれたことも気付いてないけどね。

それは…。

魔王

話を聞くところによると仲間からもあまりいい扱われ方をしなかったらしいしね。

そうですね…。

魔王

ならどうして勇者と行動する?

それは…。

魔王

ボクは魔物をある程度使役できる。君が望む平和も叶えられるかもしれない。

魔王

勇者は君を必要としていないがボクは君を必要としている。平和にもなる。さて、どうする?

……わかりました。

魔王

うん、いい子だね。じゃあいったん目を閉じてみて。

こうですか?

魔王

そう、そのままでいてね。すぐに終わるから。

………。

すぅ…。

魔王

ふう。

参謀

終わりましたか。

魔王

うん、なんとかね。

魔王

魔女くんと参謀くんが暗示をかけてくれたおかげでもうすぐ出来上がると思うよ。

参謀

しかし成功しますかね。

魔王

詳しいことはわからないけど仕込みは上々だと思うよ。

魔王

しかし、まさかほんとに魔力を有した人が居るなんてね。

魔王

さらに上書きで暗示をかければ完成だね。明日が楽しみだ。

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