第八話

殺しと隠しのリズム





メイドを装った敵対組織の組長と若頭の銃弾に倒れる梅田。



スナッフフィルム…娯楽用途に流通させる目的で実際の殺人の様子を撮影した映像作品をさす用語


彼ら古川組は自身の経営するメイド喫茶に客引きしたアキバ系オタクをメイドたちに(といっても率先して自分たちがコスプレして)殺害させる映像を自主製作して闇ルートで海外に輸出。
アブノーマルな嗜好を持つ映像マニアや資産家たちから大金を受け取る、という闇ビジネスを生業としていた。



そして店内各所の隠し撮りしていたスナッフフィルムをメイドB(若頭)が回収し、メイドAがキッチンで編集用のパソコンを取立ち上げている間、リナは電話を掛けていた。


リナ

あ、すいません。リトルメイドリーマーです。いつもの“清掃”を夕方5時に。はい、いつもの担当が立ち会いますので。



リナが頼む清掃業者とはこの撮影の後始末をしてくれる、タウンページに電話番号の記載されていない裏業者である。


彼らの手に掛かれば翌日彼女が出勤する午前中までにはまるで何事も無かったかのように店は綺麗になっている。


もちろん死体諸共清掃業者は処分…いやむしろそこだけに関しては現金で引き取ってくれている。ある種の“リサイクル代”として。


組長

今回“下取り”いくらもらえると思う?

若頭

そっちはあんまり期待できないんじゃないですか?中年だし、ヘビースモーカーだから肺も汚れてるでしょう。全然“新鮮”じゃないですから

組長

たしかに。鮮度だけでいったら今までのガキ共とはだいぶ劣るからなあ



そんな彼ら特有の世間話をリナは何回も聞いてないフリをしてきた。


この現実を直視すると耳や脳に確実に隠れ育った罪悪の蟯虫が彼女の心を蝕み始めるからだ。


だからリナは彼らの前で完璧に従順なメイドになる事にした。


リナ

こんなのいつまで続くのかな

不意につぶやいてリナは涙が溢れた。
二人に悟られぬように声を押し殺しながら部屋を去ろうとすると、付けたばかりのタバコの焦げた匂いがフッとリナの鼻先を掠めた。

若頭

ぎゃああああああああああああ!!

リナが振り返ると死んだと思っていた梅田が若頭の首筋に煙草の根性焼きをしていた。

梅田

お前みたいな腐れ外道はメイド向かんわ。はよ冥途にいけや。

リナ

ご主人様、どうして!?

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第八話  殺しと隠しのリズム

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