姫が誘拐されてしまっていた頃、勇者たち一行は姫を除いた全員が宿に戻っていた。
姫が誘拐されてしまっていた頃、勇者たち一行は姫を除いた全員が宿に戻っていた。
……とりあえず給与はこれ。
なんか騎士機嫌悪くない?
……女勇者の騎士に会った。
まーたなんか言われたんだ。
……。
オレたちも女勇者に会ったぞ。
なんかよくわからないこと言われたけどな。
へー、なんて?
明日の朝、決闘した場所で待つ。仲間を連れてこいって。
なに。まだやる気なのあのおバカさん。
次こそは勝つ!
戦いに行くつもりはないからな。
そういや魔法使い、あの角のやつは?
ああ、あれね。
なんだその笑顔。
いやあ、今日はいろいろと話を聞いてたんだ。
またなんか企んでるのか。
失礼だなー。研究と言ってよ。
それにあたしの薬の活躍具合から考えても悪いことじゃないでしょー。
あんまり姫ばっかりいじめるなよ。
じゃあ代わりに飲む?
いや、遠慮しておく。
ま、今回のはなかなかうまくいきそうだけどね。構想的には完ぺきでまったく新しい薬ができるかも。
今までのは新しくはなかったのか?
あれは全部師匠譲りの薬なんだよ。
本来は副作用なしで使えるはずなんだけど、あたしが作るとどうしてかうまくできないんだよねー。
やっぱり師匠ってすごいのか。
そりゃあね。一週間で開発した薬で店の改築できるまでに繁盛させたくらいだからね。
おお、すごいな。
ま、その二か月後に開発した薬で多額の借金も背負ったんだけどさ。
……町中で騒ぎになったあの事件。
なんだそれ。
そうか、剣闘士はずっと闘技場にいたから知らないのか。
あれはひどかったな。もう少しで王が動くところだったんだぞ。
聞かせてくれよ。
……ある商店が一つの薬を販売した。
……その薬は金運が上昇するという効果の薬だった。
なんか胡散臭い薬だな。
でも、前の薬が売れたっていう広告もあって飛ぶように売れたよ。
それがまずかったんだけどな。
……その後、町中で効果が表れて裕福な暮らしができる家が出てきた。
でも、逆に薬を買っていない人たちの暮らしがだんだん厳しくなっていったらしくてな。
今から薬を買おうにも相場が劇的に上がって手が出せない。
それはお前の店の値段次第のはずなんだけどな。
……結果としては富裕層と貧困層の格差が大きくできて、町のお金の動きもおかしくなった。
師匠が試験的だからって薬の効果に時間制限をつけてなかったら大変だったかもね。
あれだけでも十分大変だったんだぞ。
そんなことがあったんだな。
というか、それならなんで魔法使いの店が借金なんて負ったんだ?
師匠が需要が伸びたからって支払を度外視して材料を購入したから。
あー、それは…。
あと、薬の影響だね。
薬って金運アップのか?
そう、あの薬の効果のせい。
……でも効果とは逆に金運がダウンしている。
だってあたしたち薬使ってないもん。
周りの薬の効果でどんどん金運が下がっていったみたいで売り上げが落ち込むわ、商品開発に失敗するわ、師匠は金勘定ができないわ。
最後のは金運関係ないと思うが。
あー、なんか師匠に腹立ってきた。
落ち着け。
……それよりまだ姫が帰ってきていない。
あれ、ほんとだな。
一人で何しに行ったの?
わからん。楽しみにしていてくださいね、とか言いながら出て行ったきりだからな。
変なことしてなきゃいいけど。
ま、そのうち帰ってくるだろ!
いいのか、それで。
こうして、姫がさらわれたことも気付かずに勇者たち一行の一日は終わるのであった。