魔王様、ご命令通り連れてきました。
うんうん。ありがとう、参謀くん。
しかしこんなの連れてきてどうするのさ。
なに言ってるのさ、お姫様が誘拐されたんだよ?
勇者たち一行がそろって助けに来るに決まってるじゃないか。
わざわざ敵を招くようなことしてどうするのさ!
おいおい、あんまり大きな声を出すと…。
うぅん。
ん…。
ほおら、起きちゃったじゃないか。
…悪かったよ。
やあ、お姫様。目覚めはいかがかな?
体が痛いです。
それは魔女くんのせいだな。
って、あなたは誰ですか!
周りも暗いです!どこですかここ!
ははは!やっぱり面白いね、お姫様。
ボクは人々が魔王と呼ぶ存在、とでも言っておけばいいかな
魔王!
勇者様!魔王です!魔王が出ました!
……。
あれ!?勇者様!
はっはっはっ!面白い!面白いよお姫様!
あなたはさらわれたんですよ。
あなたは女勇者様の!
女勇者様もグルですか!
彼女たちは関係ありませんよ。
僕が潜り込めって言っただけだしね。
そんなわけでお姫様。君は魔王一味に誘拐されてしまったわけだが。
今すぐ帰してください!
素直でいいね。
でも、ダメだよ。それじゃあ面白くない。
面白い?
そう。やっぱりお姫様がさらわれたんだ。勇者が助けに来ないと面白くないだろ?
そんなわけで君にはしばらくここにいてもらうから。
いいえ!私は勇者様たちの元に帰ります!それでは!
手荒な真似はしたくなかったけど、仕方ないか。魔女くん、お願い。
はいよ。
ぐふっ。
目を覚ましたらまた逃げ出そうとするかもしれませんよ。
とりあえず逃げたくならないよう丁重に御もてなししておくよ。
綺麗な個室に寝かせておいてあげて。
わかりました。
さてと、勇者たちは何時ごろ来るかね。
魔王様。
ん?何だい隊長くん。
少々、冗談が過ぎるのでは。
冗談で誘拐なんかしないさ。
では、いったいどのような意図が。
そんな怖い顔しないでさ。もちろん勇者たち一行をここにおびき寄せるためだよ。
勇者と戦う気はないと前にお聞きしたのですが。
そうなんだけどね。さすがに飽きてきたから。
さらわれてしまった姫を助けるべく駆けつける勇者。
そこに待ち受ける魔王とその一味。
そしてそれぞれの力をぶつけあう!
最高な展開じゃないか!
できることなら意見をコロコロと変えないでいただきたいのですが。
どうしてだい?
魔物たちへの指揮ができなくなります。彼らは利口ではありません。
そういえば多数の魔物で部隊を作ってたんだっけ。
それゆえに魔王様に隊長と呼ばれているのですが。
そういえばそうだったね。
わかったよ。今後は一言隊長くんに報告しておくよ。
よろしくお願いします。
それじゃあボクは魔女くんに勇者たちの話でも聞いておこうかな。
いいよ。一回会ったくらいだからそんなに話すことはないけどね。
いいさいいさ。後で、参謀くんの話も詳しく聞いてみよう。