……なんだか、頭がずきずきしてきた。
この、絶妙に話が噛み合っていない感じ。
そんなこと、僕言ってないよ?
……なんだか、頭がずきずきしてきた。
この、絶妙に話が噛み合っていない感じ。
……少しずつ、この状況の謎を解いていくことにします。
とにかく今回は、彼女と俺の関係が少しでもわかってよかった。
もう、これ以上質問はしません。頭が痛い
こう、全てがわかった状態でいろいろ言うのって、楽しいもんだね!
神様の視点みたいなもんですからね
わー! 崇君察しがいいねえ!
何の察しですか、もう!
とても高度な知能を持ったコンピューターかなにかと話している気分。
返事はしてくれるけど、若干ずれている。
いや、最近のコンピューターは、こんなにずれることはないかもしれない。
次の物語に、行きたいです
サンザシちゃん、起こす?
あ、いや。彼女が起きるまで待っています
優しいね! じゃあ、暇潰しに本でもどうぞ。
好きな本を読んでいいからね
ありがとうございます
しかし、暇潰しってひどい言葉だと思わない?
潰される暇の身にもなってほしいよね!
……彼女はどこにいますか?
彼女のそばで、本を読んでいたいんです
華麗にスルーしたね、泣いてないよ、僕。
彼女はその扉の向こう側にいるよ。
んじゃあ、彼女の寝ている部屋に、本棚を用意しておくよ。
あと、ついでに君の姿も変えておくから、アッブラカタブラアッブラカタブラ
言って、セイさんは扉を静かに指差した。
その指先から、きらきらと光が漏れる。魔法の痕跡かもしれない。
指を指すだけで本棚を出現させるんだか、移動させるんだかするセイさんは、いったい何者なのだろうか。
おまけに、俺の姿も変えてしまう。
しかも、俺の脳内に、今の自分の姿の映像を送ってくださった――鏡を出すのが面倒くさかったらしい。
ともかく、いろいろなことを、指をひとふりするだけで行ってしまった。
もしかしたら、ものすごい魔法使いなのかもしれない。
あ
ん?
セイさんが、大きな瞳をくりくりさせながら、首をかしげる。
この、やけにテンションの高い彼が、もし魔法使いなら。
セイさん、魔王の物語って、知ってますか?
さっきの世界で、魔法使いなら誰でも知ってる物語って言われたんです。
俺、その物語知らなくて、もしその物語にとばされた……場合に……
セイさんの表情に、俺の声は次第に小さくなっていった。
セイさんは、目を見開きいていた。分かりやすく、ぎょっとしている。
あ……の、すみません。
なにか、聞いてはいけないことだったり、しましたか……?
……いや
セイさんは首を横に降って、ふうん、と腕を組んだ。
魔王の、物語ねえ。さっきの、魔法使いちゃんから聞いたのかな
え、あ、そうです
その子は、どんな物語って?
えっと、俺が人を生き返らせることはできないのかって訊いたら、それじゃあ魔王様じゃないかって言われたんです。
だから、誰かを生き返らせるような物語かもしれません
ふーん、ほかは?
それが、古い記憶だから忘れてしまったと……
へーえ
細い指を顎にあて、ふんふん、とうなずいている。
魔王ねえ
知ってますか?
うん。知ってる。でも、その物語を、君が助け出すことはない
そうなんですか?
その物語はね、破損しかけてるんだ。なくなりかけてる