ー勇者の家ー
ー勇者の家ー
…野良召喚士とはどういうことでしょうか?
無事パーティに迎えられた
シーラさんですが、
ソルフェさんのヒトコトが
気にかかります。
コホン。
咳払いをするソルフェさん
正規の手続きを受けていない
召喚士の事だ。
召喚のおべんきょう
手続き…ですか…。
通常、召喚士になるには
一定の召喚学を積む必要がある。
へー…そうなんだ。
戦士や武闘家みたいに実技だけで
いいのかと思ってた。
…ポメラらしいわ…
だが、シーラは召喚について
知らないことが多すぎる。
なので、わしが今から
基礎召喚学を教えてやろう。
ソルフェージュ様も召喚士なのですか?
ワシを舐めるでない。
大魔導ソルフェージュ様だぞ。
大魔導になるには
基礎召喚学も必修科目なのだ。
ご…ごめんなさい。
よいよい。
プリンをたくさんもらっているからな。
さて、始めるか。
と、立ち上がるソルフェさん。
面白そうだから俺も混ざるかな…。
なぜかやる気のポメラさん。
まず、召喚をする者とされる者を
それぞれなんというか知っているか?
んー…
はーい!はいはいはい!
召喚師と召喚獣!
元気に手を上げて、
答えを言ってしまうポメラさん。
はい、は一回でいい。
ポメラのそれは別の世界の呼び方じゃな。
権利周りにに気をつけろ。
ぐぬぬ…
召喚する側は
「マスター」というのを
何かで読んだ気がします。
される側は…分かりません。
うむ、そうだ。
召喚する側は「マスター」。
で、召喚される側は…
ここテストに出るぞ、よく聞けよ。
メモメモ…
召喚される側は
「スクワイア」
と読ばれている。
つまり、召喚は主従関係という事だな。
召喚される側を召喚獣としてしまうと
獣ではない物を喚び出す時に
不適切になってしまうので
この言い方が使われることになったようだ。
まぁ、もう一つの理由もあるが…
これは後で触れよう。
わかりました。
マスターとスクワイアですね。
シーラさんは愛用の
メモ帳に書き込んでいきます。
次に召喚プロセスだ。
召喚プロセスには
大きく分けて二種類ある。
一つは『陣紋召喚』。
魔法陣を用い、
喚び出したいスクワイア向けの
召喚文言を唱える方法だ。
陣紋召喚…私が良くやるやつね。
もう一つは『媒介召喚』。
魔法陣は用いず、特定の媒介物に
スクワイアを乗り移らせる召喚方法だ。
もぐもぐ。
もう飽きたのか、ポメラさん。
テーブルのプリンを食べ始めます。
媒介召喚はやったことないわね…。
媒介召喚は具体的には
どんな感じなのですか?
ふむ。では、実例を見せよう。
ポメラ、ちょっと借りるぞ。
ポメラさんが食べていたプリンを
手にするソルフェさん。
あ、俺の…
こう、魔力を込めて…
いでよ、プリンマン!
と、唱えるソルフェさん。
すると、食べかけのプリンから
にょきにょきと
足が生えてきます。
…ひっ…
美味しそうなプリンが
一瞬にしておぞましい生き物に…。
あぁぁ…俺のプリンー…
と、言った感じになるのが
媒介召喚だ。
…わ…わかりました…。
それぞれの召喚プロセスには、
メリットとデメリットがあってな。
陣紋召喚はマスターに力がある限り
どんなスクワイアでも呼び出せるが
反面、魔法陣を描く手間と
大量の魔力が要求される。
一方の媒介召喚は、
媒介物にあったスクワイアしか
召喚できない。
だが、媒介物があれば
少ない魔力で簡単に召喚できる。
なるほど…。
うぅぅ、プリン…。
召喚されたプリンマンは
元気に部屋中をぺたぺた走りまくります。
さて、シーラよ。
プリンマンの特技は
『走り回って足から出る
カラメルをそこら中になすりつける』
なのだ。
早いとこ何とかしないと
家がカラメルで塗りたくられるぞ。
…ひぇぇ…?
突然訪れた愛の巣の危機に
シーラさんの脳はフル回転です。
何とかって…えーっと…
甘いものには…
これね!
数多の仔を産み落とし母よ。
統制されしせ軍隊の長よ。
何…!無描陣だと!?
その一族の力を貸し給へ
いでよ、クィーンアント!
しかもデカい…!!
なんという大きさの
クィーンアントを召喚するんだ!?
お願いです。
あのプリンを何とかしてください!
コクリと頷くクィーンアントさん。
すると、クィーンアントさんの
お腹の辺りから
ワラワラと働き蟻が
出てくるではありませんか!
ぎゃー!でかいアリー!
働き蟻達はあっという間に
プリンマンに群がります。
* * *
黒い塊と化したプリンマン。
ものの数十秒で働き蟻達は
クィーンアントの元へと帰り始めます。
その後には
何一つ残っておりません。
ありがとう。
助かりました。
クィーンアントさんは
こくりと頷き、去って行きました。
* * *
と、まあシーラの実力を
図らせてもらったが…。
恐れいったわ。
そうなんですか?
ありがとうございます。
通常、陣紋召喚には物理的に
魔法陣を描画する必要があるのだ。
特殊な薬品で作った絵具で描いたり…
俺らの仲間だったの召喚士は
色んな物を詰め込んだ薬袋を地面において省略した形の魔法陣を作っていたけどな。
だが、シーラは魔力だけで
魔法陣を創りだした。
無描陣といって、
話には聞いたことがあるが
実際に見たのは初めてだな。
そうなのですね…。
私も物心ついた時には
本を見ながら自然と出来ていたので
そんなに大変なこととは…。
…あ
何かを思い出したようなソルフェさん。
どうした?ソルフェ?
なんでもーなーい☆
なんだ、入れ替わっただけか…。
そうそう、気にしなーいしなーい☆
…?
ふぅ、と息をこぼすソルフェさん。
…さて、次は契約方法の話だ。
…契約…。
ふああぁぁぁ……
契約方法には
『無名契約』と
『有名契約』があるのだが…
…うつら…うつら…。
…ポメラが辛そうなので、
一旦休憩がてらに
ちょっとしたクイズをしようか。
そ…そうですね。
起きんか!ポメラ!
…ふぇぇ?
起きて、ポメラ。
クイズだって。
では、2人に問おう。
『魔』
…ま…?
ま……ふぁぁ…。
魔法、魔物、魔王……。
これらに使われている『魔』とは
どんな意味か考えたことはあるか?
えぇぇ……
…ふぁぁぁぁ
休憩がてらのはずのクイズは
とっても哲学的な香りがします。
果たして、どんな珍回答が飛び出すのでしょか?
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :7
めいせい :205
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :いつもの額当て
たて :なし
どうぐ :ファンガスの切り身(黄)
野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×3
なかま :
とくぎ :ファイアブレス
じょうたい:ツギノへ向かった模様
【シーラの装備】
レベル :1
めいせい :100
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :
なかま :戦士ポメラ・大魔導ソルフェージュ
とくぎ :野良しょうかん
じょうたい:召喚学受講中