ー勇者の家ー










シーラ

…野良召喚士とはどういうことでしょうか?


無事パーティに迎えられた

シーラさんですが、

ソルフェさんのヒトコトが

気にかかります。


ソルフェ

コホン。


咳払いをするソルフェさん

ソルフェ

正規の手続きを受けていない
召喚士の事だ。






召喚のおべんきょう














シーラ

手続き…ですか…。

ソルフェ

通常、召喚士になるには
一定の召喚学を積む必要がある。

ポメラ

へー…そうなんだ。
戦士や武闘家みたいに実技だけで
いいのかと思ってた。

シーラ

…ポメラらしいわ…

ソルフェ

だが、シーラは召喚について
知らないことが多すぎる。

ソルフェ

なので、わしが今から
基礎召喚学を教えてやろう。

シーラ

ソルフェージュ様も召喚士なのですか?

ソルフェ

ワシを舐めるでない。
大魔導ソルフェージュ様だぞ。

ソルフェ

大魔導になるには
基礎召喚学も必修科目なのだ。

シーラ

ご…ごめんなさい。

ソルフェ

よいよい。
プリンをたくさんもらっているからな。

ソルフェ

さて、始めるか。



と、立ち上がるソルフェさん。

ポメラ

面白そうだから俺も混ざるかな…。


なぜかやる気のポメラさん。

ソルフェ

まず、召喚をする者とされる者を
それぞれなんというか知っているか?

シーラ

んー…

ポメラ

はーい!はいはいはい!
召喚師と召喚獣!


元気に手を上げて、

答えを言ってしまうポメラさん。

ソルフェ

はい、は一回でいい。

ソルフェ

ポメラのそれは別の世界の呼び方じゃな。
権利周りにに気をつけろ。

ポメラ

ぐぬぬ…

シーラ

召喚する側は
「マスター」というのを
何かで読んだ気がします。
される側は…分かりません。

ソルフェ

うむ、そうだ。
召喚する側は「マスター」。
で、召喚される側は…

ここテストに出るぞ、よく聞けよ。

ポメラ

メモメモ…

ソルフェ

召喚される側は
「スクワイア」
と読ばれている。

つまり、召喚は主従関係という事だな。

ソルフェ

召喚される側を召喚獣としてしまうと
獣ではない物を喚び出す時に
不適切になってしまうので
この言い方が使われることになったようだ。

ソルフェ

まぁ、もう一つの理由もあるが…
これは後で触れよう。

シーラ

わかりました。
マスターとスクワイアですね。


シーラさんは愛用の

メモ帳に書き込んでいきます。

ソルフェ

次に召喚プロセスだ。

ソルフェ

召喚プロセスには
大きく分けて二種類ある。

ソルフェ

一つは『陣紋召喚』。
魔法陣を用い、
喚び出したいスクワイア向けの
召喚文言を唱える方法だ。

シーラ

陣紋召喚…私が良くやるやつね。

ソルフェ

もう一つは『媒介召喚』。
魔法陣は用いず、特定の媒介物に
スクワイアを乗り移らせる召喚方法だ。

ポメラ

もぐもぐ。


もう飽きたのか、ポメラさん。

テーブルのプリンを食べ始めます。

シーラ

媒介召喚はやったことないわね…。

シーラ

媒介召喚は具体的には
どんな感じなのですか?

ソルフェ

ふむ。では、実例を見せよう。

ソルフェ

ポメラ、ちょっと借りるぞ。


ポメラさんが食べていたプリンを

手にするソルフェさん。

ポメラ

あ、俺の…

ソルフェ

こう、魔力を込めて…

ソルフェ

いでよ、プリンマン!


と、唱えるソルフェさん。


すると、食べかけのプリンから

にょきにょきと

足が生えてきます。

シーラ

…ひっ…


美味しそうなプリンが

一瞬にしておぞましい生き物に…。


ポメラ

あぁぁ…俺のプリンー…

ソルフェ

と、言った感じになるのが
媒介召喚だ。

シーラ

…わ…わかりました…。

ソルフェ

それぞれの召喚プロセスには、
メリットとデメリットがあってな。

ソルフェ

陣紋召喚はマスターに力がある限り
どんなスクワイアでも呼び出せるが
反面、魔法陣を描く手間と
大量の魔力が要求される。

ソルフェ

一方の媒介召喚は、
媒介物にあったスクワイアしか
召喚できない。
だが、媒介物があれば
少ない魔力で簡単に召喚できる。

シーラ

なるほど…。

ポメラ

うぅぅ、プリン…。


召喚されたプリンマンは

元気に部屋中をぺたぺた走りまくります。

ソルフェ

さて、シーラよ。
プリンマンの特技は
『走り回って足から出る
カラメルをそこら中になすりつける』
なのだ。

ソルフェ

早いとこ何とかしないと
家がカラメルで塗りたくられるぞ。

シーラ

…ひぇぇ…?


突然訪れた愛の巣の危機に

シーラさんの脳はフル回転です。

シーラ

何とかって…えーっと…
甘いものには…

シーラ

これね!

シーラ

数多の仔を産み落とし母よ。
統制されしせ軍隊の長よ。

ソルフェ

何…!無描陣だと!?

シーラ

その一族の力を貸し給へ

シーラ

いでよ、クィーンアント!










ソルフェ

しかもデカい…!!
なんという大きさの
クィーンアントを召喚するんだ!?

シーラ

お願いです。
あのプリンを何とかしてください!



コクリと頷くクィーンアントさん。


すると、クィーンアントさんの

お腹の辺りから

ワラワラと働き蟻が

出てくるではありませんか!


ポメラ

ぎゃー!でかいアリー!


働き蟻達はあっという間に

プリンマンに群がります。


* * *


黒い塊と化したプリンマン。

ものの数十秒で働き蟻達は

クィーンアントの元へと帰り始めます。


その後には

何一つ残っておりません。


シーラ

ありがとう。
助かりました。


クィーンアントさんは

こくりと頷き、去って行きました。

* * *

ソルフェ

と、まあシーラの実力を
図らせてもらったが…。
恐れいったわ。

シーラ

そうなんですか?
ありがとうございます。

ソルフェ

通常、陣紋召喚には物理的に
魔法陣を描画する必要があるのだ。
特殊な薬品で作った絵具で描いたり…

ポメラ

俺らの仲間だったの召喚士は
色んな物を詰め込んだ薬袋を地面において省略した形の魔法陣を作っていたけどな。

ソルフェ

だが、シーラは魔力だけで
魔法陣を創りだした。

無描陣といって、
話には聞いたことがあるが
実際に見たのは初めてだな。

シーラ

そうなのですね…。
私も物心ついた時には
本を見ながら自然と出来ていたので
そんなに大変なこととは…。

ソルフェ

…あ



何かを思い出したようなソルフェさん。

ポメラ

どうした?ソルフェ?

ソルフェ

なんでもーなーい☆

ポメラ

なんだ、入れ替わっただけか…。

ソルフェ

そうそう、気にしなーいしなーい☆

シーラ

…?



ふぅ、と息をこぼすソルフェさん。

ソルフェ

…さて、次は契約方法の話だ。

シーラ

…契約…。

ポメラ

ふああぁぁぁ……

ソルフェ

契約方法には
『無名契約』と
『有名契約』があるのだが…

ポメラ

…うつら…うつら…。

ソルフェ

…ポメラが辛そうなので、
一旦休憩がてらに
ちょっとしたクイズをしようか。

シーラ

そ…そうですね。

ソルフェ

起きんか!ポメラ!

ポメラ

…ふぇぇ?

シーラ

起きて、ポメラ。
クイズだって。

ソルフェ

では、2人に問おう。

ソルフェ

『魔』

シーラ

…ま…?

ポメラ

ま……ふぁぁ…。

ソルフェ

魔法、魔物、魔王……。

これらに使われている『魔』とは
どんな意味か考えたことはあるか?

シーラ

えぇぇ……

ポメラ

…ふぁぁぁぁ





休憩がてらのはずのクイズは

とっても哲学的な香りがします。

果たして、どんな珍回答が飛び出すのでしょか?







つづく






【勇者勇の装備】
レベル  :7
めいせい :205
ぶき   :新品の短剣
よろい  :鋼鉄のよろい
かぶと  :いつもの額当て
たて   :なし
どうぐ  :ファンガスの切り身(黄)
      野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×3
なかま  :
とくぎ  :ファイアブレス
じょうたい:ツギノへ向かった模様


【シーラの装備】
レベル  :1
めいせい :100
ぶき   :いつもの本
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの飾り
たて   :なし
どうぐ  :
なかま  :戦士ポメラ・大魔導ソルフェージュ
とくぎ  :野良しょうかん
じょうたい:召喚学受講中

第19話 召喚のおべんきょう

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