ー勇者の家ー












暖炉と篝火の光の下

筆を走らせるシーラさん。

何を書いているのでしょう?

シーラ

これでよし、と。

シーラ

これを魔便箋に入れて…

シーラ

封蝋をして魔力を込める…。

シーラ

えい!


と、魔力を込めるシーラさん。


すると、魔便箋の口を閉じた封蝋が

赤みを失い金色の光を放ち

魔便箋を包み込みます。


そして、魔便箋が激しい光を

放ったかと思うと跡形もなくなりました。



シーラ

…これで…あってるのよね?

シーラ

無事届きますように…。


若干の不安を感じたものの

シーラさんは期待しながら床へ着きます。




採用面談





次の日の早朝。

シーラ

こんな早い時間にお客さん?

シーラさんは

眠い目をこすりながら

上着を羽織ります。


シーラ

はーい。

ソルフェ

シーラちゃん、おっそーい☆

シーラ

あ、ソルフェージュ…ソルフェちゃん。


扉の向こうにはソルフェちゃんさん。


シーラ

おはよー。

ソルフェ

プリン出してくれないと
ぷんすこなんだからね☆

シーラ

はいはい、用意してありますよ。


わがままなソルフェちゃんさんにも

シーラさんは丁寧に対応します。


シーラ

ところで、今日はソルフェちゃん1人?

ソルフェ

1人ではない。
我も居ろうが。

シーラ

あ、ごめんなさい、ソルフェージュ様。

ソルフェ

ちなみに、ポメラなら
買い出しに行かせてある。

ソルフェ

しばらくしたら
ここへ来るであろう。

シーラ

そうなのですね。

シーラ

立ち話もなんなので、
中へお入りください。


シーラさんはソルフェージュ様を

家の中へと招き入れます。

ソルフェ

では中に入らせてもらうぞ。


* * *

シーラ

はい、アルザレアプディングどうぞ。

ソルフェ

わーい!シーラちゃん大好きー☆


ソルフェちゃんさんに

プリンを出すシーラさん。


ソルフェちゃんさんは

夢中で食べます。

ソルフェ

もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。

シーラ

おいしい?ソルフェちゃん。

ソルフェ

昨日よりー!

シーラ

良かったー。
昨日おじさんが新鮮な卵とアルザレアキビを
置いていってくれたから、そのおかげね。

ソルフェ

…アルザレアキビ…だと…?

シーラ

そう、これよ。

[アルザレアキビ]

ソルフェ

アルザレアキビは知っておる。

ソルフェ

それが、なぜここにあるのかが
知りたいのじゃ。

シーラ

…え…。


予想外の問いかけに

戸惑うシーラさん。

シーラ

えーっと、お店で余っていたものを
多分持って来てくれたんだと思います。

ソルフェ

…ふぅむ。

ソルフェ

アルザレアキビは今年不作でな…。

ソルフェ

加工したアルザレア糖なら
まだ分かるのだが
アルザレアキビのままの入手は
非常に困難なのだ。

シーラ

そうなのですね…
知りませんでした…。

ソルフェ

魔力を回復するイーサ薬を調合するのに
アルザレアキビの樹液と
そのすりつぶした葉を必要とするのだ。

精製したアルザレア糖からでは作れない。

ソルフェ

我がポメラに頼んだものに
アルザレアキビも含まれているのだが
…期待はしていないのだ。


と、その時。

ポメラ

うぉーい!
シーラー!
ソルフェー!
来たぞー!


家の外からポメラさんの大きな声。

ソルフェ

噂をすればなんとやら、だな。

シーラ

ソルフェージュ様、
ちょっと出てきますね。

ソルフェ

プリンおかわりしちゃうねー☆

シーラ

どうぞ、ソルフェちゃん。


* * *

シーラさんは玄関のドアを開けます。

ポメラ

よっす!シーラ。
来たぜー。

シーラ

いらっしゃい、ポメラ。
待ってたわ、中にはいってちょうだい。

ポメラ

おじゃましまーす!


* * *

部屋の中へと入る

シーラさんとポメラさん。


テーブルではソルフェちゃんさんが

一心不乱にプリンを食べています。


ソルフェ

もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。

シーラ

ポメラはなにか飲む?

ポメラ

んー、今日は水でいいや。

シーラ

遠慮しなくてもいいのよ。

ポメラ

大急ぎで走ってきたから
とりあえず水が飲みたいんだ。

ポメラ

水で頼む、シーラ。

シーラ

わかったわ、ポメラ。


台所へと向かうシーラさん。

ポメラ

…で、だ。ソルフェ。

ソルフェ

もぐもぐ…?

ポメラ

やっぱりアルザレアキビだけは
店に置いてなかった。
他の物は一式揃ったんだが…。


といいながら、テーブルに

目をやるポメラさん。

ポメラ

…って、うおおおい!
何でここにアルザレアキビが
あるんだよ?

シーラ

昨日よろずやのおじさんに貰ったのよー。


台所から声をかけるシーラさん。

ソルフェ

…と言う事らしい。

ソルフェ

ところでシーラ、
このアルザレアキビは
もらっても良いかの?


大ジョッキに注いだ水を運びながら

シーラさんが答えます。

シーラ

ええ、もちろんです。
ソルフェージュ様。
お役立てください。

ソルフェ

スマンな、恩に着る。

ソルフェ

まぁ、色々と腑に落ちないが
結果オーライということで良かろう。

シーラ

はい、お水よ、ポメラ。

ポメラ

おう、サンキュ!


ポメラさんは水が波々とつがれた

巨大なジョッキを持つと…


…と一口で飲み干しました。

ポメラ

…プハーッ!
生き返るー!!!

ソルフェ

…さて、と。
役者も揃ったことだ。
本題に移ろう。

ソルフェ

手紙は読ませてもらった。
心は決まっているようだな。

シーラ

はい。


ちょっと緊張した面持ちのシーラさん。

ポメラ

まさか、本気でこう来るとは
思ってなかったぜ。

ソルフェ

…だが、我々もそうやすやすと
飲み込める内容ではない。

ソルフェ

まずはお主の口から話してもらおう。

シーラ

…ごくり…。

生唾を飲み込むシーラさん。

ソルフェ

”魔王トロワ討伐パーティに加えてほしい”
という、その心意気を!

ポメラ

舐めた考えで言ってたら
承知しないかんな!!

シーラ

わかりました。

シーラ

これまでの自分は
甘えた考えがありました。

シーラ

勇者の妻なのだから
留守の間の家を守るもの、と。
勇くんが言ったことをそのままに
守ればいい、と。

ポメラ

まぁ、それが普通だな。

シーラ

ですが、勇者勇がいない間に
巨大な脅威が迫った場合、
そんな考えでは世界が滅びてしまいます。
勇者勇の戻る家もなくなってしまいます。

ソルフェ

…ふむ。

シーラ

勇くんが旅立ってから、
勇者の妻としてそれでいいのか、
ずっと考えていました。

シーラ

そこで、勇者代行カンパニーを
立ち上げましたが
本質的ではない勇者代行しか
できませんでした。

ポメラ

あぁ、そんな看板立ってたな。

シーラ

魔王トロワの脅威が迫っている今、
勇者代行カンパニーが
一番やらなきゃいけないことは
魔王トロワ討伐です。

シーラ

故に私は勇者代行カンパニーとして
絶対に魔王トロワを倒して、
生きて帰ります。

世界のために…!
ポメラやソルフェのために…!
勇くんのために…!!!


力強く話したシーラさん。



いっときの沈黙が流れます。



ソルフェ

……もし…

ソルフェ

もしお主が
『死を覚悟する』
と答えたのであったら…

ポメラ

俺達は、シーラ、お前を
置いて行くつもりだった。

ソルフェ

だが、お主は
『絶対に生きて帰り、魔王から世界を救う』
と答えた。

ポメラ

自分の命を軽く考える奴は
他人の命を守る事なんて出来ないからな。
そんな奴は連れて行きたくないんだ。

シーラ

…ということは…

ソルフェ

合格だ、野良召喚士シーラ。

ポメラ

ようこそ、ウチラのパーティへ。

シーラ

…あ…ありがとうございます!

………野良…?











無事にパーティへ加入したシーラさん。



どのような旅が待ち受けているのでしょう?







つづく





【勇者勇の装備】
レベル  :7
めいせい :205
ぶき   :新品の短剣
よろい  :鋼鉄のよろい
かぶと  :いつもの額当て
たて   :なし
どうぐ  :ファンガスの切り身(黄)
      野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×3
なかま  :
とくぎ  :ファイアブレス
じょうたい:ツギノへ向かった模様


【シーラの装備】
レベル  :1
めいせい :100
ぶき   :いつもの本
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの飾り
たて   :なし
どうぐ  :
なかま  :戦士ポメラ・大魔導師ソルフェージュ
とくぎ  :野良しょうかん
じょうたい:パーティへ加入

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