ー勇者の家ー
ー勇者の家ー
暖炉と篝火の光の下
筆を走らせるシーラさん。
何を書いているのでしょう?
これでよし、と。
これを魔便箋に入れて…
封蝋をして魔力を込める…。
えい!
と、魔力を込めるシーラさん。
すると、魔便箋の口を閉じた封蝋が
赤みを失い金色の光を放ち
魔便箋を包み込みます。
そして、魔便箋が激しい光を
放ったかと思うと跡形もなくなりました。
…これで…あってるのよね?
無事届きますように…。
若干の不安を感じたものの
シーラさんは期待しながら床へ着きます。
採用面談
次の日の早朝。
こんな早い時間にお客さん?
シーラさんは
眠い目をこすりながら
上着を羽織ります。
はーい。
シーラちゃん、おっそーい☆
あ、ソルフェージュ…ソルフェちゃん。
扉の向こうにはソルフェちゃんさん。
おはよー。
プリン出してくれないと
ぷんすこなんだからね☆
はいはい、用意してありますよ。
わがままなソルフェちゃんさんにも
シーラさんは丁寧に対応します。
ところで、今日はソルフェちゃん1人?
1人ではない。
我も居ろうが。
あ、ごめんなさい、ソルフェージュ様。
ちなみに、ポメラなら
買い出しに行かせてある。
しばらくしたら
ここへ来るであろう。
そうなのですね。
立ち話もなんなので、
中へお入りください。
シーラさんはソルフェージュ様を
家の中へと招き入れます。
では中に入らせてもらうぞ。
* * *
はい、アルザレアプディングどうぞ。
わーい!シーラちゃん大好きー☆
ソルフェちゃんさんに
プリンを出すシーラさん。
ソルフェちゃんさんは
夢中で食べます。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。
おいしい?ソルフェちゃん。
昨日よりー!
良かったー。
昨日おじさんが新鮮な卵とアルザレアキビを
置いていってくれたから、そのおかげね。
…アルザレアキビ…だと…?
そう、これよ。
[アルザレアキビ]
アルザレアキビは知っておる。
それが、なぜここにあるのかが
知りたいのじゃ。
…え…。
予想外の問いかけに
戸惑うシーラさん。
えーっと、お店で余っていたものを
多分持って来てくれたんだと思います。
…ふぅむ。
アルザレアキビは今年不作でな…。
加工したアルザレア糖なら
まだ分かるのだが
アルザレアキビのままの入手は
非常に困難なのだ。
そうなのですね…
知りませんでした…。
魔力を回復するイーサ薬を調合するのに
アルザレアキビの樹液と
そのすりつぶした葉を必要とするのだ。
精製したアルザレア糖からでは作れない。
我がポメラに頼んだものに
アルザレアキビも含まれているのだが
…期待はしていないのだ。
と、その時。
うぉーい!
シーラー!
ソルフェー!
来たぞー!
家の外からポメラさんの大きな声。
噂をすればなんとやら、だな。
ソルフェージュ様、
ちょっと出てきますね。
プリンおかわりしちゃうねー☆
どうぞ、ソルフェちゃん。
* * *
シーラさんは玄関のドアを開けます。
よっす!シーラ。
来たぜー。
いらっしゃい、ポメラ。
待ってたわ、中にはいってちょうだい。
おじゃましまーす!
* * *
部屋の中へと入る
シーラさんとポメラさん。
テーブルではソルフェちゃんさんが
一心不乱にプリンを食べています。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。
ポメラはなにか飲む?
んー、今日は水でいいや。
遠慮しなくてもいいのよ。
大急ぎで走ってきたから
とりあえず水が飲みたいんだ。
水で頼む、シーラ。
わかったわ、ポメラ。
台所へと向かうシーラさん。
…で、だ。ソルフェ。
もぐもぐ…?
やっぱりアルザレアキビだけは
店に置いてなかった。
他の物は一式揃ったんだが…。
といいながら、テーブルに
目をやるポメラさん。
…って、うおおおい!
何でここにアルザレアキビが
あるんだよ?
昨日よろずやのおじさんに貰ったのよー。
台所から声をかけるシーラさん。
…と言う事らしい。
ところでシーラ、
このアルザレアキビは
もらっても良いかの?
大ジョッキに注いだ水を運びながら
シーラさんが答えます。
ええ、もちろんです。
ソルフェージュ様。
お役立てください。
スマンな、恩に着る。
まぁ、色々と腑に落ちないが
結果オーライということで良かろう。
はい、お水よ、ポメラ。
おう、サンキュ!
ポメラさんは水が波々とつがれた
巨大なジョッキを持つと…
…と一口で飲み干しました。
…プハーッ!
生き返るー!!!
…さて、と。
役者も揃ったことだ。
本題に移ろう。
手紙は読ませてもらった。
心は決まっているようだな。
はい。
ちょっと緊張した面持ちのシーラさん。
まさか、本気でこう来るとは
思ってなかったぜ。
…だが、我々もそうやすやすと
飲み込める内容ではない。
まずはお主の口から話してもらおう。
…ごくり…。
生唾を飲み込むシーラさん。
”魔王トロワ討伐パーティに加えてほしい”
という、その心意気を!
舐めた考えで言ってたら
承知しないかんな!!
わかりました。
これまでの自分は
甘えた考えがありました。
勇者の妻なのだから
留守の間の家を守るもの、と。
勇くんが言ったことをそのままに
守ればいい、と。
まぁ、それが普通だな。
ですが、勇者勇がいない間に
巨大な脅威が迫った場合、
そんな考えでは世界が滅びてしまいます。
勇者勇の戻る家もなくなってしまいます。
…ふむ。
勇くんが旅立ってから、
勇者の妻としてそれでいいのか、
ずっと考えていました。
そこで、勇者代行カンパニーを
立ち上げましたが
本質的ではない勇者代行しか
できませんでした。
あぁ、そんな看板立ってたな。
魔王トロワの脅威が迫っている今、
勇者代行カンパニーが
一番やらなきゃいけないことは
魔王トロワ討伐です。
故に私は勇者代行カンパニーとして
絶対に魔王トロワを倒して、
生きて帰ります。
世界のために…!
ポメラやソルフェのために…!
勇くんのために…!!!
力強く話したシーラさん。
いっときの沈黙が流れます。
……もし…
もしお主が
『死を覚悟する』
と答えたのであったら…
俺達は、シーラ、お前を
置いて行くつもりだった。
だが、お主は
『絶対に生きて帰り、魔王から世界を救う』
と答えた。
自分の命を軽く考える奴は
他人の命を守る事なんて出来ないからな。
そんな奴は連れて行きたくないんだ。
…ということは…
合格だ、野良召喚士シーラ。
ようこそ、ウチラのパーティへ。
…あ…ありがとうございます!
………野良…?
無事にパーティへ加入したシーラさん。
どのような旅が待ち受けているのでしょう?
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :7
めいせい :205
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :いつもの額当て
たて :なし
どうぐ :ファンガスの切り身(黄)
野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×3
なかま :
とくぎ :ファイアブレス
じょうたい:ツギノへ向かった模様
【シーラの装備】
レベル :1
めいせい :100
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :
なかま :戦士ポメラ・大魔導師ソルフェージュ
とくぎ :野良しょうかん
じょうたい:パーティへ加入