小屋の中に招かれた僕は身分を明かし、
どうしても船に乗ってフェイ島へ行きたいと
バラッタさんに告げた。
僕が伝説の勇者の血をひいていると
話した時は、
さすがに度肝を抜かれていたみたい
だったけどね……。
小屋の中に招かれた僕は身分を明かし、
どうしても船に乗ってフェイ島へ行きたいと
バラッタさんに告げた。
僕が伝説の勇者の血をひいていると
話した時は、
さすがに度肝を抜かれていたみたい
だったけどね……。
……なるほど、
勇者の試練の洞窟か。
そういえば、
俺が若い頃に船乗り仲間の爺さんに
聞いたことがあったな。
フェイ島には
神殿みたいなもんがあるってな。
俺は何度も島に
行ったことがあるが、
ンなものは見当たらなかった。
だから今までずっと爺さんの
妄言だと思ってきたんだがな。
まぁ、あれは普通には
見つからないと思うしな~☆
そこには宝が隠されてるって
話なんだが、
それは本当か?
あそこに金目のものなんかないぞ?
宝って
勇者の証のことなんじゃないか?
口伝されるうちに、
『宝物』という話に
変わったのかもしれませんね。
ありえるな。
だが、あるいは後年になって
誰かがそこへ
宝を隠した可能性もある。
オイラが最後にあそこへ
行ったのは、
数十年前だもんな~。
面白そうだ!
久しぶりに船乗りの血が
騒いできたぜ!
よしっ!
俺にも試練の洞窟とやらを
見せてくれ。
その条件を呑むなら
船を出してやる。
本当ですかっ!?
タック、いいよね?
見るだけなら構わないと思うぞ。
別に立ち入り禁止って
ワケじゃないし。
……だがな、
船を出すには問題があるんだ。
海にモンスターが出る
というのだろう?
それなら私が退治してやる。
そうじゃねぇ!
海のモンスターが怖くて
船乗りなんかやってられるか!
最近の若い船乗りや
船舶会社の背広組は
ビビリすぎなんだよ!
では、問題とは?
1つ目は船員がいねぇ。
船はあっても
それを操るヤツらがいなけりゃ、
出航できねぇわな。
シャポリには誰かいないのか?
いや、心当たりはある。
要するに雇うための
カネがないんだよ。
蓄えはみんな酒に化けちまってな。
バラッタさんはニヤニヤしながら
部屋の隅を指差した。
そこには空になった酒瓶がゴロゴロと……。
うん、それを見てなんとなく納得。
……いくらかかる?
100万……いや、
とりあえずは80万ルバーでいい。
その代わり、
船に乗りたいっていう客や貨物を
便乗させるって条件付きだ。
そいつらから運賃を取れば、
あとでほぼ全額
返してやれると思う。
つまり結果的には
タダってことですか?
客や貨物が一定数を超えればな。
お前らは先行投資とコスト変動の
リスクがある分、
恩恵も大きいってことだ。
よし、それは私がなんとかしよう。
いいの?
それくらいの額なら大丈夫だ。
なにより、シャポリで
足止めをくっているヤツが
大勢いるはずだからな。
おそらく客や貨物はすぐに埋まる。
俺もその見通しは正しいと思うぜ。
――それともう1つ。
もしモンスターが出た時は
一緒に戦ってもらえると助かる。
百戦錬磨の俺でも老いには勝てん。
若い時と同じようには
戦えないからな。
承知した。
アレスたちもそれでよいな?
任せとけっ♪
がんばりますっ!
僕にできることなら……。
戦いで僕が戦力になるとは思えないけど……。
ただ、
海のモンスターにもあの力が作用するなら、
みんなを助けられるかもしれない。
これで問題は1つ解決だな。
あともう1つある。
航海に必要な道具を
用意してほしい。
それは何です?
『導きの羅針盤』という
魔法道具だ。
こいつは目印がない場所や
磁石の利かない場所でも
正確に船の位置を示してくれる。
おっちゃんは元・船長なのに、
持ってないのか?
……酒に化けた。
目を逸らし、
ばつが悪そうな顔をしながら呟く
バラッタさん。
僕たちは顔を見合わせ、
一様に苦笑いを浮かべる。
実はそのアイテムの
発している音波が、
海のモンスターを
刺激しているらしい。
航海に必要不可欠な道具が原因だと
船舶会社で聞いていましたが、
導きの羅針盤のこと
だったんですね?
船長としての一線を退いて以降、
外洋に出ることは
ないだろうと思って
古道具屋へ売っ払っちまったのさ。
陸の上に置いておく分には
問題ないし、
アンティークとして
人気があるからな。
じゃ、
それを買い戻す必要があると?
そうだ。
まぁ、そんなに値は
張らないとは思う。
シャポリの裏通りにある
『凪』って古道具屋だ。
分かりました。
では、私はカネを用意する。
アレスとシーラは
導きの羅針盤を
買い戻してきてくれ。
オイラは?
さぁ?
戦力外は
昼寝でもしていたらどうだ?
ミューリエっ!
またオイラを
除け者にするつもりかっ!
くっそ~、ホントにムカツクなっ!
手が空いているなら、
俺に付き合え。
船員の手配をしなきゃ
ならんからな。
タック、お願いしてもいい?
おうっ! 任せておけっ♪
こうして僕たちは出航に向け、
それぞれの役割を果たすこととなった。
導きの羅針盤って、
どんなものなんだろうなぁ……。
次回へ続く!