俺だけじゃない。

 俺以外の人達も、中には顔を青ざめながら突然の事態に焦り出す。

 中には男に掴みかかろうとする人もいるが。

動くな


 男がそう言うと、その人の動きがぴたりと停止する。

 それは俺も同様であり、その言葉の魔術は俺達全員を支配していた。

へえー。こりゃまた多いですね旦那!


 仮面の男の背後から、また別の声。

 その声の主は人間じゃなかった。

 二本の角を生やした赤い鬼。


 これから俺達は閻魔様の元に連れて行かれるのか。

 今更になって恐怖心が芽生えて来る。

 鬼に連れられ天国に行けるとは到底思えない。

 だとすれば……俺達が向かう先。そこはきっと地獄なのだろう。

召喚したのは一人のはずだが。すまない。失敗したようだ


 申し訳なさそうに仮面の男が頭を下げた。

 対し謝られた鬼の方は機嫌良く豪快に笑う。

ガッハッハ! 何言ってるんで! こんだけの数だ! 逆に有り難い限りですわ!! いやあ、愉快愉快。これだけの生贄があれば、あの方も喜ぶに違いねえ!


 生贄。

 その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍った。

pagetop