何だろうね、この横穴

廃墟の鉱山地帯だったんだろうな

等間隔に開いた穴が連なる場所を二人は下っていく。

鉱山ってことは中に何か残ってるのかなー?

ないだろうな。あったら今も稼働してるよ

だよねぇ。でも中、気にならない?

入りたいのか?

うん! 冒険したい!

…………

こんな鉱山ほど警戒するべきところだった。山賊などはこういった場所に潜んでいる場合が多い。
それでも、彼女のわくわくしている顔を見ていると好奇心が疼いた。

どの穴に潜るか探っていると眼前に一際大きな洞穴がぽっかりと口を開けていた。中枢なのかもしれない。入り口の傍らには小さなオブジェが晒され、土を被りながらもあった。

あたし潜るならここがいいな

じぁあ行ってみるか

長剣に手を添える。

逃避の旅だったが、彼女を仲間にしてよかったとアヌメールは思う。このまま一人旅を続けていても燻っていただけだろう。彼女の明るさは鬱々しいものを少しだけ考えさせないでくれていた。

洞穴内部はやっぱり暗い。手に持った松明だけが今頼りになるものだった。

深い。

暗い。

どれぐらい歩いただろう。二本目の松明を掲げて突き進むが風景は変わらない。

棄てた洞窟だから当たり前か

背後を見れば、イヌメッタが壁を撫でていた。

面白い?

うーん……正直言うと全然

ごめんね

いいよ

でも、もう少し変化あると思ったんだけどな

あの入り口を見ればいくつもの分岐点があってもよさそうだが、道は一本だけだった。帰り遭難する危険がないのはありがたいが……もう少し何か欲しいところだった。

財宝ざっくざくとかあればなー

そんなの掘り尽くされてる

やっぱり?

試しになのか、イヌメッタはしゃがむと転がっていた石を掴み地面に振り下ろした。

ダメだね、固い

当たり前

どうする? 戻るか?

何かもったいないなー。何か見つけて帰りたい!

…………この松明が持つまでだぞ

やった! アヌメール優しー!

ちょっ、あぶねぇ! こっち火持っているんだから抱きつくな!

突然引っ付いた彼女を引き剥がし、アヌメールは奥を照らした。

固まったアヌメールの背後からイヌメッタは覗く。

どうしたの?

光が……

ここでオカルト系は勘弁だよ

深い。

暗く……はなかった。

わぁ

……

二人の待ち望んでいたモノがそこにあった。

光源などなく自ら輝く水晶。全長は二人より高く、大人三人が腕を伸ばしてやっと囲めるぐらいの大きさだった。

もしかして、これを掘ろうとしてたのかな

固すぎて無理だったんだな

水晶のお蔭で光は要らなく、アヌメールは火種だけ作って松明を消した。コンコン、と水晶を叩く。

イヌメッタも真似をして触れようとした瞬間。

へっ!?

指先で光が収束して。

水晶の欠片が彼女の足元に転がった。

…………

……なんか

持っていけって言ってるみたい……だね

イヌメッタは欠片を拾い、光源に翳す。中で青い光が呼吸するように瞬いていた。

綺麗……

外に出ると日はあまり傾いていなかった。深くまで潜ったつもりだが、それほど時間は経過していないらしい。

この松明オンボロか?

思えばやたら安値で売っていた気がする……

あれー!?

残りの松明を睨みつけると横から素っ頓狂な声が上がった。驚いて振り向いてみるとイヌメッタが欠片を翳したり透かしたりしていた。

どうした?

光が消えた

え?

イヌメッタの手の中を覗き込んでみると、水晶は『ただの』水晶と成り果てていた。光源はどこにも見当たらない。

だから丸ごと取り出そうって魂胆だったのかな

ま、いいけどね、と彼女は水晶を懐にしまう。

……そうだな

アヌメールの口の中で苦いものが広がる。

……可哀想な子。同情はしないけど

良種から生まれても……

どうしてあの子は……

足りていないからいけないんだ

君は羽ばたけない、飛び立つための羽がないからね

駄作になることはあるんだ

水晶とその表面に映った自身の顔は一緒だった。

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