○ 美咲の勤めている会社・給湯室


お昼休み。
美咲と同僚女子2人が談笑している。

同僚A

おいしー

同僚B

ホント、これすごい。手作りなんですか?


美咲の同僚達の手にはラップでくるまれたミートパイ。

ミサキ

うん

ミサキ

彼氏のね

同僚A

あー、前に同棲してるって言ってた彼氏

同僚B

彼氏さん、お料理上手なんですね!

ミサキ

まぁ、唯一の趣味というか何というか

同僚B

えーうらやましい…ひとり暮らししてると料理するのめんどくさくて外食ばっかですよ

同僚A

あと1人でご飯食べるのがねー…何というか寂しいというか

ミサキ

まぁそういう寂しさはなくなったかなぁ

同僚B

付き合っててどれぐらいなんですか?

ミサキ

えーと…

ミサキ

付き合ってからもうすぐ5年で、同棲は3年目

同僚A

結婚はしないんですか??

ミサキ

あっちにする気があるのか最近わかんなくなってきたのよねー

同僚B

え、それまずくないですか??

同僚A

ちょっと…

ミサキ

やっぱマズいよねぇ

同僚B

ずるずると同棲続けてると婚期逃すっていいますからね

同僚B

結婚願望が美咲先輩にないならいいですけど、あるならそろそろこっちからも仕掛けないと!

ミサキ

結婚願望は…どうだろ…


窓の外を遠い目で眺める美咲。

同僚B

同僚A

#09「ミートソースのスパゲティとミートパイ」

○ 自宅・リビング


前日。
夕方。

美咲が帰宅する。

ミサキ

ただいまー

タツヒコ

おかえりー


キッチンから辰彦の声がする。

ミサキ

あれ??

○ 自宅・キッチン


美咲がキッチンにやってくる。

ミサキ

あれ?仕事は??

タツヒコ

打ち合わせでこっちの方だったから、直帰してきた

タツヒコ

美咲だって今日は早いじゃん、どうしたの?

ミサキ

先方の都合で今日の会議が全部飛んじゃったのよ

ミサキ

部署全体のやる気下がっちゃったから部長の指示でみんな定時上がり

ミサキ

会議に合わせてみんな頑張ってたからねぇ…

タツヒコ

あらら…それはお疲れ様

ミサキ

ありがとう

ミサキ

ところで……

ミサキ

美味しそうな匂いしてるけど、今日の夜ご飯は何?


辰彦の目の前にある鍋を指さす。

タツヒコ

ミートソーススパゲティだよ〜

ミサキ

そっか

ミサキ

ミートソースの匂いね、これ

タツヒコ

どうする?あとはスパゲティ茹でるだけなんだけど

タツヒコ

すぐご飯にする?

ミサキ

そうだねぇ、辰彦は?

ミサキ

お腹空いてる??

タツヒコ

少し

ミサキ

じゃあ、ご飯にしよっか

ミサキ

着替えてくるね

タツヒコ

おっけー


美咲がキッチンを後にする。


【ミートソースを作る。】

玉ねぎを細かくみじん切りにする。


オリーブオイルを鍋に引いたら、合い挽き肉を入れる。


広げたら、焼き色がつくまであまり触らない。
全体的に火が通ったら、玉ねぎを入れて炒める。


挽き肉が細かくならないように優しく炒める。


玉ねぎにある程度火が通ったら、ミックスベジタブルを投入する。
※ミックスベジタブルは凍ったままでもOK
軽く炒める。


缶詰のカットトマトを全て入れる。
底が焦げないように、全体に馴染むよう混ぜる。


弱めの中火で、じっくりと焦がさないように、時折混ぜながら煮込んでいく。


少し水分が飛んだら、バジルと赤ワイン、塩、コショウを加える。
※塩は少なめで入れていき味見をしながら調整する。


全体的に水分が飛んで、混ぜる際に抵抗を感じるようになったら完成。


【ミートソーススパゲティを作る】

鍋に水と塩を入れて沸かす。

湧いたら、表示通りのゆで時間でスパゲティを茹でる。


茹でたら、水を切り、オリーブオイルを引いたフライパンに投入。


さっと、オリーブオイルを絡めたらミートソースを投入し、絡める。


盛りつけて完成。

○ 自宅・リビング

ミサキ

う…大盛りじゃない

タツヒコ

え?そう??

ミサキ

え?じゃないわよ

タツヒコ

ボクのと交換する?

ミサキ

嫌よ、そっちの方が多いじゃない

タツヒコ

残ったらボクが食べるから

ミサキ

いつも私が残してる?

タツヒコ

いつも全部綺麗に食べてくれてる

ミサキ

でしょう??

ミサキ

でもね、おかげで同棲してから太ったわ

タツヒコ

そう??

タツヒコ

あ、でも最近ボクもお腹周りに少しお肉がついてきたかな…

ミサキ

私より全然お肉ついてないでしょ、ムカつく

タツヒコ

いやいや、そんなことないよ〜

タツヒコ

ほら、そんなことより冷めちゃうから食べようよ

ミサキ

あ、今“そんなことより”って言った?

タツヒコ

言ってない

ミサキ

言ったね

ミサキ

あぁ、女子が体重で悩んでることをそんな事って言ったね

タツヒコ

いただきまーす

ミサキ

あこら、話をそらすな

タツヒコ

うん、美味しい

タツヒコ

ほら、美咲も

ミサキ

食べ終わったら説教ね

タツヒコ

はいはい

ミサキ

はいはいじゃない

ミサキ

いただきまーす

タツヒコ

どう??

ミサキ

美味しい

ミサキ

私より多く食べてるくせに太らないってのもムカツクし、こうやって美味しいご飯作ってくれるのもたまにムカつくわね

タツヒコ

えぇ…そんな

ミサキ

冗談よ

ミサキ

いつも感謝してるわよ

ミサキ

ありがとう

タツヒコ

何か照れるね

ミサキ

そう??

タツヒコ

うん

タツヒコ

じゃあ、ボクからも

タツヒコ

いつも一緒にいてくれて

タツヒコ

ありがとう

ミサキ

……

ミサキ

確かに…

ミサキ

…照れるわね

タツヒコ

でしょ?

○ 自宅・キッチン


美咲が洗い物をしている横で、辰彦が食器を拭いている。

ミサキ

残ったミートソースはどうするの?

タツヒコ

冷凍のパイ生地を買ってきたからミートパイにして、余ったら小分けにして冷凍するよ

タツヒコ

小分けにしておいたら食べるときにスパゲティを茹でて、ミートソースはチンして合わせるだけで簡単に出来ちゃうからね

ミサキ

ん?ちょっと待って

ミサキ

今からミートパイ作るの?

タツヒコ

うん

タツヒコ

1時間もかからないからね

ミサキ

そんな手の込んだ物作って…

タツヒコ

いやいや、これがまた簡単なんだけど、手の込んでるように見えるんだよね

タツヒコ

明日、職場に持って行ってごらん

タツヒコ

『すごーい』って声が上がるから

ミサキ

何、実証済み??

タツヒコ

え?

ミサキ

女の子で試したことあるの?

タツヒコ

美咲と一緒に暮らす前ね

ミサキ

ふーん

タツヒコ

あれ??

タツヒコ

ひょっとして妬いてる??

ミサキ

べつにー

タツヒコ

かわいい〜

ミサキ

ほら、パイ焼くならさっさと焼いちゃってよ

ミサキ

寝る時間減っちゃうでしょ

タツヒコ

あ、手伝ってくれるの??

ミサキ

辰彦が夜更かししないように見張るの

タツヒコ

手伝ってはくれないのね

【ミートパイを作る】

パイ生地は作る際の室温に合わせて、解凍時間が変化します。
作業する直前は5割溶けている状態。完全に溶けてしまった場合はもう一度冷凍して下さい。


オーブンレンジを220度の余熱で温めておく。


パイ生地を半分にする。


冷めたミートソースを乗せて、パイ生地を半分に折る。


手でしっかりと押さえ、フォークで接着していく。
※焼き上がった後の飾りにも鳴るので丁寧にしっかりと後を付けていく。


腹の部分にナイフなどで切れ目を入れる。
※破裂しないようにするため。

天板にクッキングシートを敷いて、パイを並べていく。


並べ終わったら、卵黄を刷毛で塗っていく。
※照りだしの為に塗りますが、あまり多く塗ると焦げやすくなります。


オーブン(220度)に入れて18分〜20分ほど焼いていく。
※ここで一気にパイを膨らませていきます。膨らまなかったら失敗。


ほどよく膨らんだら、180度で約10分ほど焼いていく。
※焼き色を付ける行程なので、時折、オーブンを外から覗いて状態を確認して下さい。
 10分は目安です。その時の状態で焦がさないように時間を調整して下さい。


オーブンから取りだし、少し冷まして落ち着かせたら完成。

ミサキ

美味しそうな匂い

タツヒコ

食べてみる?

タツヒコ

焼きたて

ミサキ

いいの?

タツヒコ

半分こしようか

ミサキ

うん


辰彦がミートパイを半分にする。

タツヒコ

熱いから気をつけてね

ミサキ

はーい

ミサキ

!!

タツヒコ

ほら、熱いって言ったじゃん

ミサキ

うま

ミサキ

……うまっ!

ミサキ

なにこれ!?

タツヒコ

あ、そっちに驚いたの??

ミサキ

さっきのミートソーススパゲティと同じミートソースだよね?

タツヒコ

うん

ミサキ

全然違う!!

ミサキ

香りがまた一段と…引き立ってるし

ミサキ

これは美味しいわ…確かに

タツヒコ

でしょ?

ミサキ

これはダメだよ

タツヒコ

ダメ??

ミサキ

これは他の女の子に作っちゃダメ

ミサキ

惚れるわ

ミサキ

いい?絶対ダメよ

タツヒコ

そんなに??

ミサキ

いいから約束

タツヒコ

わかった

タツヒコ

美咲にしか作らないよ

ミサキ

よろしい

タツヒコ

どうする?明日職場に持ってく??

ミサキ

そうね、同僚に食べてもらおっかな

タツヒコ

じゃあ、冷めたら後で包んでおくから明日忘れないでね

ミサキ

りょーかい

○ 自宅・玄関


翌日。

ミサキ

ほら、行くよ〜

タツヒコ

ちょっと待って〜

タツヒコ

パイは持った??

ミサキ

あ、ごめん。リビングの机の上!!

タツヒコ

だから昨日言ったのに!!

ミサキ

だから、ごめんって〜

タツヒコ

お待たせ

タツヒコ

はい、電車の中で忘れないでね

ミサキ

ありがと

タツヒコ

忘れ物は他にない??

ミサキ

うん、大丈夫

タツヒコ

じゃ、おっけー

ミサキ

行きますか!

○ 公園


駅まで向かう途中。

タツヒコ

あ、もうすぐ桜満開だね

ミサキ

そうね

タツヒコ

週末、お花見にでも来よっか

ミサキ

いいねぇ

タツヒコ

じゃあ、決まりだね

ミサキ

休日出勤にならないように頑張るわ

○ 駅前


通勤、通学中の人々が歩いている。

タツヒコ

じゃ、バス停あっちだから

ミサキ

うん

ミサキ

じゃあ、いってらっしゃい

タツヒコ

美咲もね

タツヒコ

いってらっしゃい

ミサキ

ありがと

ミサキ

じゃね


美咲が手を振って、駅の改札に向かっていく。

笑顔で見送る辰彦。

タツヒコ

……


辰彦がジャケットのポケットに手を入れる。

小さな箱を取り出す。

タツヒコ

週末に渡せるといいな…

タツヒコ

頑張ろ


ポケットにしまって、バス停に向かって歩き出す。

第9話 おわり

・*°☆今回の材料一覧☆°*・

*ミートソース(作りやすい分量)
 合いびき肉 500g
 たまねぎ 1個
 ミックスベジタブル(冷凍) 適量
 カットトマト 缶詰1個
 赤ワイン 大さじ1
 バジル 適量

 塩 適量
 粗挽きこしょう 適量
 オリーブ油 適量

*ミートパイ(8個分)
 ミートソース 適量(冷ましておく)
 冷凍パイ生地 1パック(4枚)
 卵黄 1個分

#09「ミートソースのスパゲティとミートパイ」

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