光あるところに影がある。

その二つは永遠に相容れぬものでありながら、切っても切れ得ぬ関係にある。

互いに無干渉を決めているようで、しかしどうしようもなく意識してしまう。

それも当然のこと。

なぜなら片方の消滅は、対となるもう片方の消滅を意味しているからだ。

まるでコインの裏表。

二つの世界も同様であった。


人間が住む世界あれば――。


魔物が凄む世界がある――。

―魔界『テトラロブリ』―

魔界。

闇の眷属たちが潜む地。

理性が無く、本能に従う生物を魔獣と呼び――。

魔獣が知恵を付け、理性を働かせれば魔物と呼ばれる。

そして、魔獣や他の魔物を統べる力のあるものを者を魔族と呼んだ。


魔族が統べる魔界『テトラロブリ』。

人間のいる世界とは別空間にありながら、その大地や海の形は、人間界のそれと酷似している。

だが、『テトラロブリ』にはあるものが欠けていた。



光だ。

だから『テトラロブリ』の自然はすべて黒一色に染められていた。


木も、それが連なる森も――。

水も、それが広がる海も――。


光りが喪失された世界ではどれもが色を持たない。

色の概念が無いわけではない。

本来持つ色を反射させる光が無いのである。

この魔が蠢く地に光が降り注ぐことはない。

永遠の闇。

それが魔界における自然の掟であった。

漆黒の憎悪や殺意が渦を巻くこの地。


その闇の深さを――。

その黒の濃さを――。


象徴する巨大な建物があった。

―魔 王 城―


その外観は禍々しさに荘厳さを孕み。


その景観は不気味さに威厳が交じる。


魔を象徴したかのような造形の城が、天高くそびえている。

魔界の中央に位置する城の主は、やはり魔物や魔族を統率する者である。

地理的にも、地位的にも。

この魔王城は魔界の象徴として。

また魔界の中枢として、絶対的な存在感を示している。

それが失われることは永遠にない。

さて……集まったかな

その魔王城の一室。

黒き壁に囲まれた部屋があった。

―魔王城・円卓の間―

壁に立てかけられた燭台が照らすこの空間は広い。

円卓の間と呼ばれる部屋。

調度品を一切排除しており洒脱を極めていた。

そこにあるのは円卓。

座しているのは魔族。


魔王城に滞在することを許された魔界きっての英傑達だ。

それぞれが魔王軍における将軍位であり、歴戦の猛者である。

魔族はこの英雄たちを尊敬の念からこう呼ぶ――

人間はこの魔族たちを畏怖の念からこう呼ぶ――

『魔将四天王』と。

魔将四天王会議を始める。
今日の議題だが……

待て。死霊大将軍

どうした? 鉄鋼将軍

四天王会議なのに、五人いる……

……え?

そんなことはない。番号――

ゼロ

イチ

サン

ヨン

ふむ。やはり四人だ

待ってくれ!!
ゼロから始めたら、最後の番号+1にならないか?

というか、出席とりませんか?
誰がいて誰がいないのかはっきりしますよ?

ふむ。一理ある

では、私が取ります。死霊将軍

おるわ

鉄鋼将軍

いるぜ

黒影将軍

あ、すんません。
ウチのお頭、寝坊ッス。
俺が代理で来てるッス

……

天獣将軍

天獣将軍は来ておりません。
何でも、戦線の維持以上に優先すべきことは無いとのことです

では、貴方も代理で?

いいえ、伝言を頼まれただけで……。
私近衛兵ですし……。
一応会議には出ますけど……

なるほど

つまり、死霊将軍と鉄鋼将軍がいらっしゃって、黒影将軍は天獣将軍は代理の方が来ていると――。

なら、四人ですね

ふむ。相違ない

待ってくれ!!

どうしました?

お前誰だよ?

あ、私ですか?
私は書記です

……

あ、書記?

そうですよ。
書記は会議に不可欠です。でしょう?

うむ、相違ない

そりゃそうッスよ

ええ、書記がいなくては

だよなぁ

……

書記がいちばん強そうなんですけど……

人に恐怖と絶望を与えて。

魔族に栄光を見せつける。

魔将四天王の会議が今、粛々と始まるのである。

……

アイツら、大丈夫か?

――……

14、 魔王配下 円卓にて出席を取る

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