ー勇者の家ー
ー勇者の家ー
…あー…
…待ち遠しい…
シャルミラさん達が調査に出かけてから
おおよそ五分ほど。
そわそわ、そわそわ。
シーラさんは落ち着きません。
勇くんが無事でありますように。
テーブルと窓際を行ったり来たり。
空を見上げてはため息を付いたり。
そんな昼下がり。
陽は次第に傾きます。
消息
はっ!
玄関の扉を叩く音が聞こえました。
…今度は…なんだろう…
今日一日、色々なことがありすぎて
お疲れのシーラさん。
重い足取りで玄関へと向かいます。
はい、どちら様でしょう?
シーラ様!
…ライル!
只今戻りましたー!
…うっ…
……!
見慣れたライルの顔を見て
ホッとしたシーラさん。
今日はもう涙腺が緩みっぱなしです。
シーラ様、どうなされたのですか?
…グスン…。
実は…。
カクカクシカジカ…。
シーラさんは
ポメラたちのことや
おじさんから伝え聞いたことを
ライルに話します。
魔王トロワのこと。
自分が召喚士だったこと。
ハジメノが消えたこと。
商人が持ってきたリュックのこと。
…と言うわけなの。
…あの…
ハジメノにあったんですよね?
リュック。
そう聞いてるわ。
えーっと…非常に言いにくいのですが…
申し訳無さそうなライルさん。
ごめんなさい。
それは私が持って行って、
途中で忘れていったリュックです。
うっすら涙を浮かべてあやまります。
え!?
ハジメノが消失したのは事実です。
私も付近一帯を調査しましたが
看板以外何の痕跡も残っていませんでした。
…ですが
勇者様はセ・カンドまで
無事たどり着きました。
そこまでは私が確認しておりますので
ご安心ください。
…良かった…。
良かった…。
ちょっと安心したシーラさん。
ホッとしてまたまた涙が止まりません。
シーラ様、そんなにお泣きに
ならないでください。
私まで涙が…。
ごめんなさいね、ライル。
もう、大丈夫。
…あら?
シーラさんはライルの胸につけている
名札が取れかかっているのに気が付きました。
名札がこんなにボロボロになるまで
頑張ってくれたのね。
長旅ご苦労様。
名札をまた縫い付けておきます。
ライルはゆっくり休んでね。
ありがとうございます、シーラ様。
シーラ様は笑顔が一番です。
ライルさんはそう言うと
屋根裏の部屋へと向かって行きました。
あとはシャルミラの報告で
勇くんの足取りがわかれば…。
ライルさんの名札をサッと縫いつけると、
シーラさんは窓際へ行き空を見上げます。
シャルミラさんの報告が待ち遠しくて
仕方ありません。
もうすぐ空は赤く染まります。
・
ふと、シーラさんの目には
遠くの空に点のようなものが見えました。
●
点は次第に大きくなっていきます。
あれ…は…
!!
シーラ様ー!
只今戻りましたニャー!
調査を終えたシャルミラさん達が帰ってきました。
ご苦労様。
さあ、中へ入って話を聞かせて。
シーラさんはシャルミラさん達を
窓から部屋へ招き入れます。
それでは報告ですが…。
決まりの悪そうなシャルミラさん。
あまりよい報告ではありませんが一応。
うかがいます。
ハジメノは確かに消滅していましたニャ。
…はい。
ライルの報告を聞いていたシーラさん。
その程度では動じません。
それだけではなく、次の中継地点となる
セ・カンドまで消失していることも確認
しましたニャ。
な…んですって…
また、残念ながら勇者様の姿を
見つけることまでは
できませんでしたニャ。
シーラさんは急激に血の気が引くのを感じました。
…イヤ…イヤ…イヤ…こわい…
ですが、セ・カンドからツギノへと
向かう足あとがありましたニャ。
匂いを確認したとこと、勇者様の物で間違いありませんニャ!
!!
犬ほどではありませんが
勇者様の匂いを嗅ぎ分ける位の
精度はありますので
間違いニャいですニャ!
ほっ…
極度の緊張から開放されたシーラさん。
涙を堪えるのに精一杯。
報告ありがとう、シャルミラ。
ワイルドウィンドも、ご苦労様。
何かあったらまた呼んでくださいニャ。
それでは失礼します。
シャルミラさん達が去った後
シーラさんは夕焼け空を見上げます。
そして…。
…う…
シーラさんの安堵の鳴き声が
響き渡ります。
そして、まもなく夜の帳が下ります。
泣き止んだシーラさんは
月を眺めながら明日すべきことを
頭の中で整理します。
魔便箋を片手に。
つづく
【現在の装備】
レベル :7
めいせい :205
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :いつもの額当て
たて :なし
どうぐ :ファンガスの切り身(黄)
野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×3
なかま :
とくぎ :ファイアブレス
じょうたい:ツギノへ向かった模様