第04話:吉兆と凶兆

世間の平和を守るため、
些細なことでも厳しくオシオキ!
魔法少女シビア、ただいま惨状!

千本ノックを乗り越えた厳島世知子……いや、魔法少女シビア。
お色気路線には未だ抵抗はあるものの、台詞の照れは無くなり、魔法少女としての活動にも精が入っている。
自棄くそになって開き直ったという噂もあるが、そこは置いておく。

リー!!

リー!!

くっ! 囲まれた!?

以前は遠距離から魔法で薙ぎ払っていたシビアだが、今の彼女は接近戦に挑んでいる。
しかし、彼女が特訓したのは魔法少女の心得の復讐と、照れを無くすためのボイストレーニングだ。
当然ながら、体術の向上などしていない。

きゃ!?

リー!!

リー!!

魔法少女に変身することで向上した身体能力で何とか直撃は避けられているものの、完全に回避することは難しく、リーニエントの戦闘員達の攻撃は少しずつシビアの魔法少女の衣装を掠めて切り裂いていく。
見るからにピンチな状態……しかし、これで良いのだ。
苦境を愛や勇気、そして知恵や色気や力技で乗り越えてこその魔法少女なのだから。

こうなったら、必殺技です!

リー!?

リー!?

古今東西、必殺技には溜めが必要だ。
ましてやシビアの武器は弓矢であり、本来は後衛であるため、前衛が居て初めて必殺技を使う余地が出てくる。
しかし、今の彼女はソロで至近距離で戦っている状態だ。これでは必殺技を撃つことが出来ない。
シビアが必殺技を撃つ為には、数秒程度とは言え時間を稼ぐ必要がある。

故に、彼女はそれを知恵でカバーした。

シロベエ!

え?

時間稼ぎ、ヨロシク!

うわあああぁぁぁ!?

訂正、知恵と友情で乗り越えた……友情よりも恨みつらみかも知れないが。
白いナマモノをむんずと掴むと、戦闘員達に向かって投げたのだ。
そして、彼らが飛んでくるナマモノに気を取られた隙に、弓を構えて魔力を籠めた。

厳罰!
シビリティ・アロー!!!

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

ヒドイじゃないか、
僕を囮にするなんて!

ごめんってば

憤慨するシロベエに謝る世知子だが、あまり悪びれる様子は無かった。

まったく……まぁ、いいや。
それよりも気付いていたかい?

? 気付いたって何に?

さっきの戦いの観客だよ。
以前ならまばらな拍手しか
貰えてなかったのに、
さっきの戦いでは
結構歓声が上がってたよ?

ほ、ホント!?

戦いに夢中だった世知子は気付かなかったが、確かに、シロベエの言う通りいつもなら数人のコアな追っ掛けが拍手する程度なのだが、最近の観客は人数も増えて歓声を上げて応援してくれていた。
ちなみに、熟練の魔法少女であれば応援する観客の様子を窺うことは基本動作であり、気付かない辺りは世知子がまだ未熟な証拠だ。

最近の世知子は照れが無くなって、
勢いが出てきたからね。
周りからも違って見えたんじゃないかな

そ、そうかな?

確か今日はランキングの開示日だよね。
見てみたら?

う、うん!

シロベエに促された世知子は貼り出されたランキングを見に行った。

あ、上がってる!?

やったじゃないか!

世知子の言う通り、ずっと底辺を彷徨っていた筈の世知子のランキングは僅かではあるものの浮上していた。
勿論、全体で見ればまだまだ下の方ではあるが、最近になって世知子に注目したり評価してくれた人が居たと言うことは確かだ。

世知子ちゃん……。
ランキング上がったんだね

あ、音多美ちゃん

ランキングを見ていた世知子に話し掛けてきたのは、世知子の友人の音多美だ。彼女も魔法少女であり、世知子と一緒にランキングの底辺を彷徨っていた。同じような立場だったから意気投合したのだ。

うん!
少しだけどポイント増えてたんだよ!

……そう、良かったね

この喜びを共有したい世知子に対して、音多美の反応は芳しくない。普通に考えれば理由は分かりそうなものだが、ずっと最底辺だったところから浮上したばかりの世知子は浮かれ気味でそのことに気付かない。

そうだよね。
世知子ちゃん、可愛いもんね。
一度注目されたら人気出るよね

……音多美ちゃん?

ごめん、私もう行くね

あ、音多美ちゃん……

………………

斯様に立場から始まった友情は状況の変化に弱い。

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