第03話：魔法少女のススメ
第03話：魔法少女のススメ
不甲斐ないせいで「ヒミツの特訓」として千本ノックに臨むことになった世知子は、シロベエと一緒に人気のない山奥へとやってきた。
まぁ、千本ノックといっても
実際に野球の練習みたいなのを
やるわけじゃないけどね
ほっ、助かった
千本ノックって言うのは通称で、
実際には魔法少女の在り方の
おさらいだよ
魔法少女の在り方？
うん、それじゃ世知子。
魔法少女に変身して
え？ どうして？
これが千本ノックと呼ばれてるのは、
照れが抜けない魔法少女の
矯正法でもあるからなのさ
？？？
シロベエの言ってることはサッパリ分からなかったが、取り敢えず変身することにした世知子。
変身道具であるペンダントを首から外すと、高く掲げて叫んだ。
シビリティライフ、スタート！
───────
ペンダントが光り、世知子の服が一瞬消えて裸になると、次の瞬間には煌びやかな衣装に身を包んだ魔法少女シビアの姿がそこにはあった。
これで、どうするの？
その辺に立って、両脚を肩幅に開いて
う、うん？
シビアは首を傾げながらも、取り敢えずシロベエの言う通りに指差された場所に立って直立する。
さぁ、世知子。
いや、魔法少女シビア！
僕の後に続いて復唱するんだ！
え、ええ！？
魔法少女統一協会大原則！
魔法少女は夢を与える存在
でなければならない！
ま、魔法少女は夢を与える存在
でなければならない
声が小さい！
ご、ごめんなさい！
魔法少女統一協会大原則とは、協会の定める最高原則であり絶対ルールである。これを改正するためには全協会員と所属する全魔法少女の賛同が必要という、事実上の不変の掟である。
もう一回いくよ！
腹から声を出して叫ぶんだ！
は、はい！
魔法少女は夢を与える存在
でなければならない！
魔法少女は夢を与える存在
でなければならない！
そうそう、その調子
は、恥ずかしい……
周囲に人気が無いとはいえ、こんなことを叫ぶのはとても恥ずかしい。
続けて魔法少女七カ条行くよ！
説明しよう、魔法少女七カ条とは魔法少女大原則に従って定められた魔法少女の心得である。これに違反する場合、協会から除名処分を受け魔法少女を名乗れなくなる、極めて重い鉄則である。
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第一条、魔法少女は
少女でなければならない！
第一条、魔法少女は
少女でなければならない！
最近、協会では男の娘を
魔法少女に認めるかで
激しい議論が交わされてるけどね
協会、そんなことしてたのね……
協会も時代の流れによって変わろうとしているのだ。
あと、何歳まで少女と呼ぶかは
昔から議論が続いているね
今のところ、十九歳まではギリギリセーフというのが多数派を占めている。ちなみに、下は問わない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第二条、魔法少女は
魔法の力を使えなくてはならない！
第二条、魔法少女は
魔法の力を使えなくてはならない！
まぁ、これは当然だよね
うん
ちなみに、科学の力で変身する魔法少女の加入を認めるかは、年齢制限と並んで古くから論争の一つである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第三条、魔法少女は
フリフリ・ヒラヒラした
衣装でなくてはならない！
第三条、魔法少女は
フリフリ・ヒラヒラした
衣装でなくてはならない！
これ、必要なの？
当たり前じゃないか、必須だよ！
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第四条、魔法少女は
マスコットを連れて
居なければならない！
第四条、魔法少女は
マスコットを連れて
居なければならない！
……要らない気がする
僕の存在全否定！？
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第五条、魔法少女は変身する際、
裸にならなくてはならない！
第五条、魔法少女は変身する際、
裸にならなくてはならない！
………………
踏み踏み
痛たたたたた！？
何をするんだい！
助平
僕のせいじゃないよ！
協会に言ってよ！
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第六条、魔法少女は
正義のために
戦わなければならない！
第六条、魔法少女は
正義のために
戦わなければならない！
これも当然──
そうでもないよ？
今、『悪堕ちはアリ』派が
台頭してきているからね
世も末ね
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第七条、イエスロリータ、ノータッチ！
第七条、イエスロリータ、ノータッチ！
って、ちょっと！？
これは何か違うと思うんだけど
細かいことを気にしちゃダメだよ
細かくないと思う
なお、第七条は本来魔法少女の心得ではなく協会員の心得である。
何故それが魔法少女の心得に混ざっているのか？
それはかつてこの条文が無い時期に猛威を振るった百合魔法少女の功績……ではなく影響である。
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ふぅ、どうだい？
大分照れも無くなってきたんじゃない？
まぁ、あれだけ叫べば吹っ切れたわよ
それは良かった！
でも……
でも？ なんだい？
魔法少女をやってること自体
恥ずかしくなってきたんだけど
………………
………………
………………
