自分は天才だと思っていた。
そう思うのは簡単だ。

見たものは容易くできてしまう。
聞いたものは覚えてしまう。

そんな人生に、何も面白味を感じていなかった。


そう、こんな”狛犬”と出会うまでは・・・

法寺

・・・何もないわね。やはり、ガセネタか・・・

神が集まる場所・・・
そう呼ばれていたが、ただの神社みたい。

それにしても・・・

法寺

あのこは・・・誰かしら?

夏々

あはは・・・それでね!!

ぽっかりとした空間で一人演技を見せる男の子

その制服は、私の通っている学校と同じ・・・
襟の色をみると私の一つした。高1かしら・・・


それにしても・・・

法寺

誰もいないわね・・・

夏々

それで・・・ウズメさんは大丈夫だったんですか?

アメノウズメ

丸二日間氷柱でしたよ!!まったく!!

アメノウズメ

たかが妖怪と侮りすぎましたよ。まったく・・・

稲荷

まぁ、自業自得です。いきなり声を掛けたあなたが悪いでしょう。

夏々

ふーん・・・妖怪かぁ・・・

夏々

僕も妖怪に会えるかな?

アメノウズメ

妖怪ならここにいるでしょう。
ほら、女狐が・・・

稲荷

また氷柱になりたいようで

アメノウズメ

貴女にそんな力があるわけ!!

イザナミ

そんなことよりも早く帰りなさい。
いい加減、ここの居候と化しているわよ。あなた

アメノウズメ

だって、帰ってもいいことありませんし!!
ここが家なんですもん!!

夏々

なんだか大変なんだねー。

稲荷

大変なんですー

法寺

・・・一人でしゃべっている・・・
心の病気かしら・・・

法寺

それでも不思議なものを感じる・・・

何かいるのかしら・・・

夏々

そろそろ帰るよ。
またねー

法寺

ちょっといいかしら?

帰ろうとする少年を(できるだけ)笑顔で呼び止めた。

それでも、彼は嫌そうな顔をせず、こちらに気づいた。

夏々

どうかしました?・・・えーっと・・・

法寺

尾崎よ。そう呼んで頂戴。
柊 夏々くん・・・だったかしら?

夏々

なんで僕の名前を!!

法寺

貴方、結構有名よ?
同じ学校の一年生で、妄想男子なんてあだ名があるじゃない。

夏々

あ・・・

法寺

まぁ、そんなことはどうでもいいの。

貴方”何と話していたの”?

夏々

そ・・・それは・・・

夏々

どうせ、また嘘だと言われるんだろうな・・・

法寺

・・・

夏々

そ・・・その、アメノウズメさんと・・・

法寺

・・・アメノウズメ?

法寺

そんなわけないでしょう?

夏々

ひぃ!!

法寺

アメノウズメは三重の椿大神社で祀られているはずよ。
こんな辺境の地にいるわけないでしょう?

夏々

そういわれても・・・事実・・・いるわけだし・・・

夏々

先輩、詳しいですね。

法寺

まぁ、それなりには・・・ね。

仕事柄覚えることが多いの。

夏々

ふーん・・・仕事?

先輩、仕事してるんですか!?

法寺

そんなに驚くことかしら?

夏々

まぁ、普通はバイトですから・・・

法寺

まぁ、そうかしらね。

私にとってはこれが普通よ。

法寺

それにしても、この子が嘘を言ってる感じはない。
むしろ言えば・・・

別の賽が”見えている”のかしら?

法寺

・・・そんな風には見えないのだけれど・・・ねぇ・・・

夏々

どうしました?僕の顔に何かついてます?

法寺

別に、間抜けそうな顔だなって思っただけよ。

夏々

え・・・?

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