青々とした空
流れる雲

どれをとってもきれいで、このまま見とれてしまおうかと思ってしまう。

けれど・・・このままではいけないのだ。
このままでは・・・

雪女

と・・・溶けてしまう。

そう、今は真夏なんだ。

雪女

まさかこの時期に目が覚めてしまうなんて・・・
早く帰らないと・・・

雪女

それにしても気持ちいいわ。ここの風は
澄んでいる・・・というよりは本来の風という感じ・・・

稲荷

おや?そちらは妖怪さんではないでしょうか?

雪女

だれ?!

稲荷

この時期に珍しい方に会いましたねぇ・・・
しかも、こんな場所でとは・・・

散歩・・・にしては距離があれですし。

雪女

あら、稲荷大能神様でしたか。

稲荷

あー、フルネームとか、あなたくらいだわ。雪女さん
別に”稲荷”で良いと言いましたのに・・・

雪女

流石に神様にそのような物言いはできません。

稲荷

ホント、真面目ですねぇ・・・
で・・・大丈夫ですか?汗がすごいですよ?

雪女

大丈夫です。問題ない―

その言葉を最後に・・・私は・・・

イザナミ

雪女ねぇ。冬季限定じゃなかったのかしら?この子は

アメノウズメ

そのお菓子みたいに言うのはどうなのでしょうか?

イザナミ

実際そうじゃない?この子とか特に

稲荷

実はそうでもないのですよ?
ただ、自信を保つのが難しいため、あまり外へ出ないだけなのです。
狐火なんて雨の日は洞窟に集まってたりしますし。

イザナミ

それは面白そうね。

アメノウズメ

と、なると・・・彼女は?いったい何があったのでしょうねぇ

稲荷

予想は・・・迷子かと・・・

雪女

ん・・・?

イザナミ

ほら、目が覚めたみたいよ?

雪女

・・・ここは?どこ?

アメノウズメ

とりあえず涼しいところです。

稲荷

あ・・・そういえば
あまり不用意に近づくと危ないですよ?

アメノウズメ

え?

雪女

ご・・・ごめんなさい!!

アメノウズメ

なんでこんな目に?!

イザナミ

ここに氷柱を作られても困るのだけれど・・・できれば外がよかったわ。

稲荷

さようなら・・・ウズメさん・・・
貴方のことは忘れません・・・うっ!!

雪女

ど・・・どうしましょう!!

イザナミ

できてしまったものはしょうがないわ。このままにしておきましょう。
涼しくもなるのだから

雪女

・・・

稲荷

さて、本題ですが、なぜ・・・あそこにいたのですか?
何より、場所がまったくの逆でしょう?

雪女

え?逆なの?

雪女

どうしましょう・・・帰らなきゃ・・・

イザナミ

何かあるのかしら?この時期にあなたの仕事は無いでしょう?

雪女

いえ、今日はイナリが祭りだと・・・

イザナミ

そうなの?稲荷

稲荷

存じませんが?

雪女

あ・・・そうか・・・

雪女

この時期にある妖怪たちの祭です。
良ければ一緒に・・・

イザナミ

その貴女が迷子じゃない・・・まったく・・・

雪女

そ・・・そうでした・・・どうしましょう・・・

イザナミ

まぁ、この子に頼めば大丈夫よ。
同じ米子の人間だから土地感もあるし。

イザナミ

ねぇ、稲荷

稲荷

やっぱりですか!!
まぁ、いいですが・・・イザナミ様も道ずれです。

イザナミ

・・・え?

イザナミ

という訳で・・・三人で米子に来たわけで・・・

イザナミ

寒いわ。この車・・・

雪女

す・・・すみません。
私のせいで・・・

稲荷

実はエアコン切ってるんだけど・・・まぁいいでしょう。

稲荷

ところで、詳しい場所を聞いていませんが・・・まさか境方面です?

雪女

えっと・・・鬼の像の方です。
その道をまっすぐ行くと真っ赤な油屋さんのある交差点を右に曲がった先です。たぶん、すぐわかるはずです。

イザナミ

まったく意味が分からないわ。
何の呪文なのかしら・・・

稲荷

・・・あー、まさかアイツのー

雪女

はい。
イナリ様の神社ですわ。

イザナミ

稲荷とイナリ・・・
どっちがどっちなのかわからなくなるわね。

稲荷

行きたくない・・・
あの面倒なやつの場所には・・・

雪女

???

雪女

すっかり夜ですね

稲荷

まぁ、距離がありますし。
それに、祭ならちょうどよいでしょう?

雪女

そうですね。
この頃が一番盛り上がりますし。

イザナミ

祭ならやはりウズメを連れてくるべきね。
氷柱になっていなければ、だけれども・・・

雪女

すみません・・・ほんとうに・・・

稲荷

はいはい、湿気ていないで、着きましたよ。

イザナミ

ほー・・・

稲荷

イザナミさま、お口を閉じてくださいまし。

雪女

よかった。間に合ったみたい。

隣の幽霊さん

わーん、雪ちゃーん!!
よかったーどこにもいないから心配したんだよ〜!!

ホントだわ。あーた、一歩出るともといらんことばっかしてどっかいくけんな。
いい加減にせんと、こっちがえらいわ。

イザナミ

何だろう。この小さい生き物は・・・人形かしら?

雪女

ごめんね。みんな・・・

まあ、うちよりもっと怒っとるもんがおるけどな。
・・・ほら・・・

イナリ

・・・

雪女

あ・・・

イザナミ

あれが、ここの・・・

隣の幽霊さん

はい、稲荷大宮神(いなりおおのみやしん)様です。
土地神様で、このあたりを仕切ってらっしゃります。

イザナミ

ふーん・・・(尻尾があるわね。)

イナリ

雪・・・お主、何をしたかわかっておるのか?

雪女

・・・はい・・・申し訳・・・ございませ―

イナリ

謝って済む問題ではない!!

稲荷

はぁ、面倒な人・・・

イナリ

なんだ?人間クズレ。
文句があるなあら言ってみろ!!

イザナミ

あまり騒ぐのはやめなさい。
今は祭の席なのでしょう?皆が作った雰囲気を壊してどうするの?

イナリ

うぐ・・・

雪女

あ・・・あの・・・私が悪いのであって、イナリ様が悪いわけでは・・・

イザナミ

それはそれ、これはこれよ。
部下であるのなら、監督できていないものが悪いのが神よ。
特に、このような懇親の場を犯す真似をするなんてもってのほかよ。

稲荷

たぶん、自分がそういうのに呼ばれないから特に気持ちがこもって怒っているのでしょうか・・・?

稲荷

それより、雪女さん、貴女・・・
なにか”やること”があるのでは?

雪女

え?・・・は・・・はい。

稲荷

なら、さっさと行きなさいな。
この性悪狐ならこちらでどうにかしておきましょう。

イナリ

だ・・・誰が性悪狐だ!!この腹黒狐め!!

イザナミ

ほら、行きなさい。
みんなが待っているのでしょう?

がやがやとした音が一瞬にして凍り付いたようにとまった。
先程まで踊っていた祭囃子も誰かを待っているように鳴り止んだ。

それでは、お待たせしました。
今回のめいんいべんと!!
雪女による”白蘭の舞”をご覧ください!!

イザナミ

ほら、呼ばれちゃったじゃない。

雪女

・・・はい。行ってきます。

稲荷

ファイトー

隣の幽霊さん

・・・あ・・・
場所取り忘れましたー

イナリ

・・・・むぐぐ・・・・

イザナミ

そういえば、稲荷
貴方、何か言いたいことは無いの?結構いろいろ言われてたけれど・・・

稲荷

別に、ありませんよ。事実ですから
私は根本から言えば神様じゃないですけれど、だからこそできることがあると言われて今を生きています。

稲荷

まぁ、もちろん仕返しはしますけどね〜

イナリ

ま・・・まて!!それは反則じゃ!!

アメノウズメ

・・・私、いつまでこのまま!?

夏祭りと雪風吹と祭囃子と・・・

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