カップからアッサムの最後の一滴が私の唇を転がり口腔に吸われていく様を、遠隔投影魔術によって、エルミール先生と未だに魔素を練っている愚図な学友達に見せつけてやった。私は余裕の笑みを浮かべ、エルミール先生の反応を待つ。
瞬きをした。それは一瞬の油断だった。たったそれだけの拍子に、誰もいなかったはずの向かいの席で腕にあごを乗せて微笑んでいるエルミール先生と目が合った。映像ではなく物質を転移させる魔術なんて、想像だにしていなかったから、羞恥を圧し殺して言えば、突然のことで驚いた私は、ちょっぴり、下着を濡らした。平静を装っていた仮面が、多少赤味を帯びたのを、先生は見逃さなかっただろうに。