雨粒が顔に降りかかってくる。こういう経験は初めてだと漏らしたら、ベルギー出身の田舎娘に驚かれて、内心、生まれが違うのよ、と小馬鹿にした。
昨日の試験から丸一日が経ったのだと、懐中時計を手に取って改めて気が付いた。はっきり言って、自分が今教皇猊下の護衛任務に就いて、雨風の中、猊下の乗る馬車を守りながら箒に乗って飛んでいるという事実を、実感を持って認識なんかしていない。エルミール先生は『この授業を』免除すると言っていたのに、試験合格の実態は、次学年への飛び級資格と、来年度が始まるまでの八ヶ月間教皇庁から与えられる様々な任務にあたる旅の機会を、私が得たということだった。ここには、フランス全土だけでなく、西ヨーロッパ魔術同盟に加盟している諸国家から、数多くの才ある若者達が集まっている。西ヨーロッパ中の学校で抜き打ち試験が行われ、明日バチカンで秘密裏に開かれる式典までに、参加者はこの隊列に加わっていく。