ー ハジメノ
〜
セ・カンド街道 ー
ー ハジメノ
〜
セ・カンド街道 ー
はあぁぁぁぁぁ…
勇者はレベルが上った!
勇者はレベルが上った!
勇者はレベルが上った!
焼豚を手に入れた!
焼豚を手に入れた!
焼きとりを手に入れた!
焼きとりを手に入れた!
焼きとりを手に入れた!
進まなきゃ…前に…。
シュワ…。
傷心状態の勇者様。
深い溜息で敵を焼き散らしながら
心にムチを打って進みます。
次なる拠点はもうすぐです。
日が暮れる前には着けるはず…。
私ではご不満ですか?
気を取り直したシーラさん。
些細なトラブルはあったものの
持ち前の明るさと強さで
その後の仕事をこなします。
庭の草がぼうぼうに
生えてしまって困ってるの。
もしかしたらモンスターの仕業
なんじゃないかって思って…。
いでよ、シザース×3
俺の大切な本がなくなっちまった。
多分、街外れの洞窟のコボルドが
持ってい行っちまったと思うんだ。
この依頼、嫁さんには
内緒にしてくれよ。
いでよ、サイレントアーマー×5
モンスターのせいなのね?
そうなのね?
庭の草むしりから魔物退治まで
計24件の依頼をこなしました。
その召喚総数は102人
獲得名声は105。
そして勇者代行カンパニーの営業初日は
無事就業を迎えることが出来ました。
ふぅ…。
お疲れ様でした、シーラ様。
あれほどの量の召喚をこなすとは
並大抵の魔力ではありませんね。
ありがとう、イナリ。
さすがに疲れました。
今日はもう寝ます。
そう言うとシーラさんは
何も書いていない紙を取り出し
さらさらと文字を書くと
テーブルの上に置き
二階の寝室へ向かいました。
おやすみなさい、シーラ様。
私はリビングで休ませていただきます。
………
このままではダメ…。
次に来たら全てをはっきりさせないと…
…すぅ…
次の日…。
勇ゥ!
今日はいるかー!?
聞き覚えのある声が
家の外から聞こえて来ました。
…来た…
今日、決着を付けないと…。
緊張した面持ちのシーラさん。
戦闘体勢を整えて玄関へと向かいます。
い、いらっしゃいませ。
勇者代行カンパニーです。
おっと、また奥さんか。
今日も勇はいないのかい?
申し訳ございません。
勇者は席を外しております。
…ところで…
落ち着いた表情のシーラさん。
しかし、表情とは裏腹に
緊張で心臓が張り裂けそう。
つかぬことをお伺いいたします。
…お客様は勇者勇とは
どういった関係なのですか?
…言った。
こわい…こわいよ…勇くん…
どんな答えが帰ってくるのだろう?
まさか、勇くんに限ってそんなことない…
と、シーラさんは頭に浮かぶ悪い結果を
必死で否定します。
女戦士が答えるまでの間、
シーラさんはまるで永遠のように感じました。
あぁ、アタシは3年前に
勇とパーティーを組んでたんだ。
最近ちょっと問題があってな。
久しぶりに勇に相談しようと思ってな。
パ…パーティー?
勇くんの旅仲間?
他愛のない答えに
シーラさんの緊張のと糸が
ふっ、ときれます。
ダメ!まだ安心できない…!
相談は私ではご不満ですか?
いや、不満ってわけじゃないんだ。
ただ、あまりいい話じゃないから
奥さんにとってはツライんじゃないかと…
私なら大丈夫。
私は勇者の妻です。
すべてを受け入れる覚悟は
できております。
シーラさんの決意を聞いた女戦士は
少し考えたあと
こう切り出しました。
…強いねぇ。奥さん。
勇から元お姫様って聞いてたから
お嬢さんみたいなのを想像してたんだが
そうでもないみたいだな。
気に入ったよ、奥さん
アタシが知っていることは全部話す。
ありがとう。
これから私のことはシーラって呼んで。
ああ、シーラ。ヨロシクな。
アタシはポメラだ。
ポメラね。よろしくお願い。
…よかった…よかった…よかった
勇くん、疑ってごめんなさい。
ところで、さっき言っていた
勇くんへの相談というのは…?
あのー……その件に関しては
私から説明させてもらえたらなーと☆
あら?あなたも昨日来られた…
お、ソルフェじゃないか。
お前も勇のところに来てたのか。
ソ…ソルフェですっ……☆
3年前にイサムちゃんの
パーティーメンバーをさせてもらいました。
よ、よろしくお願いします。
よ…よろしくね、ソルフェ。
(…イサムちゃん…)
ちなみに、ソルフェは
100歳を優に超える魔女なんだぜ!
わ……わたしは、え…永遠の17歳です☆
ソルフェちゃんて呼んでね☆
シーラちゃん。
わかったわ、ソルフェちゃん。
(…シーラちゃん…)
で、その勇への相談なんだが……。
実は風のうわさで聞いたんだが
最近、アタシ達が倒した魔王とは
別の魔王が現れたらしいんだ。
魔王……。
ツヴァイの事ね……。
その名はトロワ。
魔王トロワ。
略奪と封印の邪神だ。
え……。
予想していた結果と違い
きょとん、とするシーラさん。
魔王トロワ…?
魔王ツヴァイではないのですか?
魔王ツヴァイ……?
それはアタシは知らないな…
ふぅむ、魔王ツヴァイか…。
……王立図書館の文献では
魔王ツヴァイは暴力と破壊の邪神。
と記されておったな。
以前に我々が倒した
魔王アインスタークは
支配と強欲の邪神との事。
魔王達は滅ぼされても転生を繰り返し、500年単位で復活をすると
言われている。
魔王の出現記録から推察するに
ここ数年は転生した魔王が
現れる時期にあたるようだ。
齢315歳。
長年生きているこの我だが
魔王に遭遇したのも3年前が初めて……。
ソルフェちゃん…
さっきと雰囲気違うね。
馴れ馴れしい。
よいか、シーラ、
我の事はソルフェージュ様と呼べ。
おもしれーだろ。ソルフェは
『魔女っ子ソルフェちゃん』の時と
『大魔導ソルフェージュ』の時が
あるんだぜ。
突然スイッチが入るから
アタシたちもすごく困るんだがな…
まぁ、その時の雰囲気で察してやってくれ。
…わ…わかったわ。
それより、立ち話もなんだから
中に入ってお茶でも飲みながら
もっと話を聞かせて?
といってシーラさんは
2人を中へ招き入れました。
おう、じゃあ上がらせてもらうわ。
わーい、シーラちゃん☆
ソルフェ、アルザレアプディングが
食べたーい☆
ええ、ソルフェージュ…
ソルフェちゃん。
ご用意するわ。
ドアを締めながら
安堵の表情を浮かべる
シーラさん。
これはもう要らないわね。
そうつぶやくとシーラさんはふところから
『真相究明』と書かれた小さな紙を取り出し
4つに破り捨てました。
世界にはこれまでにない程の危機が迫っています。
だけど、シーラさんは今朝までよりも
ずいぶん楽な気持ちになっていました。
…よかった…
…私の世界はまだ無事だった…
つづく
【現在の装備】
レベル :7
めいせい :205
ぶき :新品の短剣
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの額当て
たて :なし
どうぐ :ファンガスの切り身(黄)
野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×3
なかま :スライム
とくぎ :ファイアブレス