ーハジメノ 

セ・カンド街道ー









時をさかのぼること半日。


陽がとっぷりとくれる頃、


次なる拠点セ・カンドの村の


灯火がようやく見えました。


勇者

やっと…着いた…

勇者

もっとちゃんと旅立ちの準備を
してくるんだったな…。

仲間とか……。

今回の旅、
お前しかいないもんな、ポチ…。

ポチ

にゃーん。
シュワシュワシュワ…



重い心と体を引きずりながら


セ・カンドへと向かいます。
















約束




















シーラ

どうぞ、こちらよ。



リビングに2人を通すシーラさん。


その様子に気づいたイナリさんは…


イナリ

おや…人が来ましたね。

姿が見えてはまずいので
隠れますか…。



と、階段脇の影に身を潜めます。

ソルフェ

お邪魔しまーす☆

ポメラ

へぇー、勇の家の中は
こんな感じなのかぁ。

シーラ

好きなところに座ってね。



てきぱきとお茶の用意をするシーラさん。

シーラ

はい、どうぞ。
ファンガブラウンティーに
アルザレアプリンよ。

ポメラ

お、うまそー。

ソルフェ

やっりぃー!
いっただっきまーす☆

シーラ

勇くんのパーティーって
ポメラとソルフェの
3人パーティーだったの?

ソルフェ

違うよー、4人パーティーだよー☆

ポメラ

もう1人召喚士がいたんだ。
ちょっと変人だったけどな。

今頃あいつ何やってんだか。

シーラ

ふぅん、そうなんだー。

はぁ…それにしても
魔王ツヴァイに魔王トロワかぁ…。
魔王って結構いるものなのね。

ポメラ

…もぐもぐ
アタシはそんなにいるなんて
…もぐ
知らなかったんだけどな。

ソルフェ

シーラちゃん、プリンおかわりー☆

シーラ

はいはい、待っててねソルフェちゃん。
今持ってくるわ。

ポメラ達は魔王の話は誰から聞いたの?

ポメラ

…ずずーぅ…
アタシは地元に訪れた旅人から
魔王トロワの話を聞いたんだ。

ソルフェ

…ふむ。

魔女の界隈でも
魔王トロワの復活が噂になっていて
既にトロワによって壊滅された集落もあると聞く。

ポメラ

その旅人も言ってたぜ。
なんでも、街とか遺跡とか
まるごと切り取っちまうらしい。

それで旅先がなくなっちまったんだとさ。

ソルフェ

しかし、魔王ツヴァイが復活したというのは、我は今日はじめて聞いたな。

何かの間違いではないのか?

シーラ

あれ…?



シーラさんはプリンを運びながら


妙な違和感を感じました


勇者

大変だ。
新たな魔王ツヴァイが
この国に侵略してきた!

シーラ

勇くんはどうやって
魔王ツヴァイが侵略してきたのを
知ったんだろう…?

ポメラ

そういえば、勇はどこへ行ったんだ?
今日は帰って来るのか?

シーラ

!!



ポメラさんの言葉に


プリンを差し出すシーラさんの


表情が曇ります。


ソルフェ

ポメラよ、察するのだ。

今日、勇者は帰ってこない。

ポメラ

ん?なんでだ?

シーラ

勇くん…
勇者勇は一昨日、魔王ツヴァイを討伐しに単身で旅立ちました。

ポメラ

なんだって?1人でだって?

勇のやつ、なんでアタシ達に相談もなく…

ソルフェ

昔からそういう奴であったろう。
悪事に対して猪突猛進。

それが勇者勇だ。

ポメラ

あー…そうだったなー。

今回もきっと無我夢中で
飛び出して行ったんだろうな…。

ソルフェ

もう少し落ち着いて考えておれば
我らとパーティーを組んで
両魔王とも討伐するという選択肢も
あったろうにの…

シーラ

………

ポメラ

………

ソルフェ

……



三人は押し黙ってしまいました。


ソルフェ

…ズズッ…



紅茶を口に含むソルフェさん。


不意にふところから便箋を取り出しました。

ソルフェ

受け取れ、シーラ。




便箋の宛先には


『大魔導ソルフェージュ』


と書いてあります。


シーラ

…ソルフェちゃ…
ソルフェージュ様、これは?

ソルフェ

勇者勇に渡そうと
思っていたんだがのぅ。

これは魔便箋といって
魔女の間で使われる最新の伝達手段じゃ。
遠くにいる相手に瞬時に
手紙を送ることが出来る。

ポメラ

お!いいなーそれ!
ソルフェ、アタシにもくれよ。

ソルフェ

ポメラ、お主には使えん。

ポメラ

なんでだよー!

ソルフェ

これを使うには魔力操作が必要なのじゃ。それでも、お主に使う自信はあるのか?

ポメラ

ぐっ…



ソルフェさんは続けざまにふところから


バラの封蝋を取り出し


シーラさんに手渡しました。

ソルフェ

これに魔力を込めながら封をすることで
手紙は自署の宛先…
つまり我のもとに飛んでくる。

何かあったら、これで伝えるが良い。

シーラ

ソルフェージュ様、ありがとうございます!

シーラ

…ところで、魔力ってどう込めるのですか?

ソルフェ

何を言っているんだシーラ。
お前は召喚士なのであろう?
いつも召喚する時の様に
魔力を込めるだけだ。

あそこで盗み聞きをする
趣味の悪いキツネを
召喚した時のようにな。

イナリ

…うげ、オレのことバレてる…

ポメラ

へぇー、シーラは召喚士なのかぁ。

シーラ

えっと……。
私は……召喚士なんですか?

ソルフェ

な?

シーラ

今、初めて知りました。

ソルフェ

知らなかったのかー!

イナリ

知らなかったのかー!

ポメラ

知らないもんなのかー

ソルフェ

魔力の込め方なんだが…
まぁ、なんというか、こう…

手を当てて思いを込めれば
魔力が込められる…ハズ…。

素人に教える表現というのは
どうにも難しいな・・・。

シーラ

こうですかね…?

シーラ

えい



ティーカップに手を当てて


思いを込めるシーラさん。





すると、中のファンガブラウンティーが


刺々しく波立ちます。


ソルフェ

!!

ソルフェ

……う、うむ。
そんな感じだ。

ソルフェ

ともかく、我らはこれより
魔王トロワ討伐の為の準備を始める。

魔王トロワの情報の方が
精度が高そうなのでな。

ソルフェ

アルザレアを旅立つまでに一日と半、といったところであろう。

それまでに勇者勇が帰ってきたり
我に伝えたいことであったら
魔便箋を使ってくれ。

ソルフェ

…悩み事の相談でも構わん。
魔便箋と封蝋はいくつか
置いていってやろう。

ソルフェ

約束だよ☆シーラちゃん!

シーラ

はい、ソルフェージュ…
うん、ソルフェちゃん。

ポメラ

見ろ、ソルフェ!
アタシのティーカップも波立ってるぞ!
魔便箋をくれよ!

ソルフェ

ポメラちゃんは力を入れすぎて
震えているだけだよー☆

ポメラ

うぐぐ……。

ソルフェ

今日はそろそろ帰るね、シーラちゃん!
プリン美味しかったよー☆

ポメラ

またな、シーラ!

ソルフェに連絡くれたら
アタシも来るかんな!

シーラ

うん、またね。
ソルフェちゃん、ポメラ


玄関から2人を送り出し


ドアを閉めるシーラさん。





手を後ろ手に組み


ドアに寄りかかりながら


上を見上げます。




シーラ

私…召喚士だったんだ…。
もっと勇くんの力になれるかな…。




思いがけない真実に


シーラさんはちょっと嬉しそう。



















勇者の家を出て、


しばらくしてから立ち止まり


振り返るソルフェさん。

ソルフェ

………

ポメラ

どうした、ソルフェ?
忘れもんか?

ソルフェ

…いや、なんでもない。
行こう、ポメラ。
















イナリ

知ぃらなかったんだぁ……。
くくく……。






















つづく




【現在の装備】
レベル  :7
めいせい :205
ぶき   :新品の短剣
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの額当て
たて   :なし
どうぐ  :ファンガスの切り身(黄)
      野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×3
なかま  :スライム
とくぎ  :ファイアブレス

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