ここは王国のはずれにある荒れ地の城
住まうはその主――
魔王は、目覚めた世界の退屈さに飽き飽きしていた

ええい!勇者はまだか!
我の退屈しのぎはまだ来ぬのか!

いましばらくの辛抱です~
魔王さま~

高いところに君臨する妖艶な魔王の足もとで
しもべである魔物の女は、不機嫌な主のご機嫌取りに奔走している

寝起きが悪いのか
目覚めたときから魔王の機嫌は悪く、魔物の女は手を焼いていた

だいたい~魔王さまが勇者を追い払っちゃったんじゃないですか~
あんな簡単に遠くに飛ばしちゃって~

倒しもしないで、どうして逃がすような真似をしたんです~?

なに、一回で倒してしまってはそれこそつまらないだろう?

…久々に目覚めてみれば、世界は平和にボケて実につまらないものになっていたんだ

ならば我好みの世界に変えてやろうと、瘴気を放ってみれば
逃げ惑う人間の中に、我に立ち向かってくる馬鹿な男がいたではないか

あんな生きのいい獲物、何度でも遊べてこそ我のオモチャにふさわしい

魔王は言いながら高笑いをする
薄気味悪い城の中では、響き渡る笑い声も得体のしれない魔物の咆哮のように聞こえた

そのために、あの男には呪いをかけておいたんだからな
<ブックマーク>を失っては、まともな冒険もできまい

…奴は呪いを解くために、我の所にくるだろう
その度に我が捻り潰してやれば、奴はまた何度でも我に立ち向かってくる…

我が飽きるまで、いくらでも遊んでやれるというものだ!
どうだ、弱い奴を苛めるのは楽しいだろう!

わあ~なんて恐ろしい…
いや、サディスティック…

まるで少女のように頬を染めて
勇者をいたぶる様を想像しては、もじもじと落ち着かない魔王を、魔物の女は恐ろしく見ている

だがな!

一体全体どうしたことか!
あれから勇者は一度も我の所に来ないではないか!
勇者が来なくては我は退屈で死んでしまうわ!

まさか…
本当に死んでしまったわけではあるまいな…
我、そんな本気出したつもりは…

だから~落ち着いて待っていてくださいって~
勇者と名乗る男が、そんな簡単にやられたりしませんよ~

そのうち来ますから~
だから、待っていましょうよ~
飛び切り万全の状態で迎えるんだって張り切っていたんですから~ね?

う、うむ…そうだな

怒ったり、不安になったり
情緒不安定な魔王を宥めながら、魔物の女は身の回りのお世話を続ける

髪をといたり、薄化粧を施してあげたり、衣装を選んだりなど
城の中では魔王が勇者を迎える準備が着々と進んでいくのだった――

魔王さまカワイイ♪

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