相手には悪いが、暁は最近の鍛錬では常時、あの中国服の同級生と戦闘をした時を考えながら行っており、何故か退屈のような物足りなさを感じていた。
たとえば師範と手合わせをする時に、必ずといって良いほどにまでの敗北を迎えるが、それでもあの時の敗北とはわけが違う。結果的にと前置したのならば、こちらの攻撃を回避させられるのも無効化されるのも同じだし、行動を封じられるのも同一で、敗北という結末も変わらない。
それでも、何かが違っていた。決定的なものを喪失したまま迎える敗北は向上意欲こそ触発させられるが、しかし、自尊心までをも揺さぶることは決してない。
勝利を得る時も同様だ。
裾に大きく紋様が記された茶色の袴装束で長身。背丈はおよそ五尺九寸、髪は短く黒色。左利きであるため右の腰に刀を佩き、躰を強く捻った抜刀の姿勢のまま顔だけは正面を向き相手を見据える。両の足は爪先に重心が置かれ、かかとは僅かに浮き上がった動作でしかし、ぴたりと身動きを止めていた。