ードワーフの住む森ー










樹上を進みゆく一つの大きな影と


三つの小さい影。




大きな影は


器用に枝と枝を飛び移っていきます。



シャルミラ

ニャ♪ニャ♪ニャ♪

シャルミラ

潜入調査は楽しいから大好きニャ。

まずは悪い魔物がニャンニャのかを突き止めるニャー!

ブーンブン!




















おつかい






















生い茂る木々の中をしばらく奥へ行くと


シャルミラさんの足が止まりました。


シャルミラ

ニャ?

あれは…






シャルミラさんのいる樹の下には


進行方向を横切るように伸びる森の獣道。





そして、そこを歩く1人の人影。





ドワーフ

はあぁぁぁぁぁぁぁぁ…



それは肩を落としながら深い溜息を付く


ドワーフさんの姿でした。





シャルミラさんは反射的に木の影に身を潜め


樹上から聞き耳を立てます。



ドワーフ

ふぅむ……。
勇者様が頼みの綱だったんじゃがのぉ……。

これでは仕事がはかどらんわい。

シャルミラ

…気になることを言ってるニャ…

ドワーフ

くうー…

あの悪い魔物のせいで
洞窟前の蜂蜜が取りにいけん。

仕事の後の疲労回復には
蜂蜜が一番なのにのぅ…



ドワーフさんはそのままとぼとぼと


森の奥へ消えていきました。






シャルミラさんは樹に寄りかかりながら腕を組み、


しばらく考えごとをしました。



シャルミラ

………

シャルミラ

ニャ!!



シャルミラさんは指をパチンと弾き、


枝を強く踏み切りました。




そして、森の獣道を


ドワーフが歩いて来た方向へと


楽しそうに向かっていきました。




シャルミラ

きっと、あのおじさんが来た方に
悪い魔物の手がかりがあるはずニャ!

今回の仕事はカンタンに
終わりそうだニャー!







喜びを隠し切れないシャルミラさん。


その表情と緊張感はたるみきっていました。






















樹上を進むこと500m程、


シャルミラさんは視界が開けた場所に


到着しました。






再び木の影に身を隠し


様子をうかがうシャルミラさん。



シャルミラ

あったニャ。

さっきのおじさんの言っていた
洞窟ニャ。

てことは…

ふしゅー




シャルミラさんが洞窟の前に目をやると


そこには大きなツボがあり


それを抱えるように座り込む


巨大な熊さんがいました。



ふしゅーふしゅー
ペロペロペロ…
ぺちゃぺろ…



どうやらツボの中には


大量の蜂蜜が入っているようです。




巨大な熊さんは


壺に前足を入れては舐め


入れては舐め


一心不乱に蜂蜜を舐め続けています。




シャルミラ

きっとあれが悪い魔物に違いないニャ!
今回のターゲットニャ!

あれをどうにかすればいいんだニャ?

シャルミラ

…でも
このカクカクシカジカで
どうしたらいいのかニャ…?




シャルミラさんは再び腕組みをして


考え事をはじめます。


ブーンブーンブーン
ブーンブーンブーン
ブーンブーンブーン

シャルミラ

えーっと、えーっと…

ブーンブンブンブーン
ブーンブンブーン
ブンブンブーンブーン

シャルミラ

もう、ブンブンうるさいニャ!
考えがまとまらニャいニャ…!

と、シャルミラさんが後ろを振り返ると

ブーンブン

シャルミラ

ギャー!
近すぎニャー!
怖いニャー!!!!

!!

シャルミラ

はっ!
しまったニャ!

ぐぉぉぉぉぉぉ!




蜂蜜を独り占めしたい巨大な熊さん。


蜂蜜を横取りされると思ったのでしょう。




樹上のシャルミラさんに気づくと


巨大な熊さんは恐ろしい程の速さで


樹を登ってきます。


シャルミラ

ニャーーーー!!!





パニック状態のシャルミラさん。


すべてを投げ出して


枝伝いに樹上をスタコラサッサと


逃げて行きます。


シャルミラ

今回のミッションは失敗ニャーーーー!!!
もう帰るニャーーーー!!

ごふっごふっ…




巨大な熊さんが樹を登り切った頃には


シャルミラさんは遠くへと逃げていました。












と、次の瞬間。








森獣に恐ろしい悲鳴が轟きました。








ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお





ワスプ達に顔を刺された巨大な熊さんは


たまらず樹から落ちます。






ワスプ達は熊が大きらい。


巨大な熊さんが樹から落ちた後も追いかけまわし


なんどもなんども針で刺しました。








巨大な熊さんもこれにはまいりました。


ぎゃん!
  ぎゃん!
 ぎゃん!






巨大な熊さんは逃げるように


森から出て行きました。


ドワーフ

なんじゃなんじゃ?
何があったんじゃ?




恐ろしい悲鳴が気になったドワーフさん。


何があったのかと洞窟まで見に来ました。





すると、そこにはさっきまでいた


巨大な熊の姿はありません。





かわりに一枚の紙切れが


ツボの前に落ちていました。





ドワーフ

なになに?

ドワーフ

勇者イサム参上!

ドワーフの森の悪い魔物は
私が退治した!

ドワーフ

おお!勇者様がわざわざ来て
魔物を退治してくださった!

ありがたやありがたや…






こうして、ドワーフさんの森の悪い魔物は


無事退治されました。



シャルミラ

あれぇ~

カクカクシカジカを
どこかに落としちゃったニャ…

怒られちゃうかニャ〜?























つづく




【現在の装備】
レベル  :4
めいせい :100
ぶき   :新品の短剣
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの額当て
たて   :なし
どうぐ  :ファンガスの切り身(黄)
      ファンガスの切り身(赤)
なかま  :スライム

pagetop