この世界で二度目の、暴力による気絶から目覚める。
サンザシが、前と同じように、崇様と涙目で覗きこんでいた。
この世界で二度目の、暴力による気絶から目覚める。
サンザシが、前と同じように、崇様と涙目で覗きこんでいた。
サンザシ……
またその花かよ。
あのなあ、こんな冬の土地に、サンザシが咲いてるわけねえだろうが。
見たけりゃ花の国にでもいけばいいだろ
ミンの声だ。
部屋の隅にある椅子に座り、本を読んでいたようだ。静かにそれを閉じ、ぎろりとこちらを睨み付ける。
ひ、と顔をひきつらせた、そのとき。
顎に激痛。
いっ! ……でえんだけど
自業自得だろうが
ち、と舌打ちをするミン。
まあそりゃあ、妹に近づく変なやつには、そういう態度になるよな。
田舎の出身で常識がないって言ったら信じる?
私もど田舎出身なんだが。どんなところか紹介してやろうか?
は、と今度は鼻で笑われる。微かな笑顔。
よかった、本気で嫌われているようなことはないようだ。
しかし、なんでこんなど田舎にいるんだよ。っていうか、お嬢様かんかんだぞ
お嬢様! 思い出して身震い。
あのお嬢様怖すぎだろ! なんだよあの子、ちょっとこう、なんていうか
ちょっと、思い込みが激しい
……まあ
ぎゃはは、何だよその顔! ひでえ顔
痛みで顔が歪むんだよ! どこのどいつのせいだ!
だからおめえのせいだろうがよ
ったく、とミンはため息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。
数歩で俺のすぐそばまで歩み寄ると、突如、ぐいと顎を持ち上げられる。
きゃー!
サンザシさん絶叫。俺も何をされるかわからず硬直していると、くいと顔を傾けさせられた。
赤い瞳が、じっと俺の顎を見つめている。
どうやら、怪我の心配をしているみたいだ。
そんなに強く殴ったかな……少し腫れてるけど
人を気絶させるって相当だぞ
まあそうか……悪かったな
手を離したかと思うと、ミンは俺の頬をぴしゃりと軽く叩いた。がんばって治せよ、という意味だかなんだか知らないが。
いでえええお前!
あっ、ごめんごめん、あっははひでえ顔!
この女ぁ!
びっくりしました、顎をくいっと……キスするのかと思って!
サンザシさんがぶつぶつ何かを言っているが、このとんでもない勘違い娘は、無視!
どいつもこいつも、まったくもう。
で、お前、しばらくここに泊まるんだって?
ああ、お言葉に甘えて
ちょうどいいや、いろいろ手伝ってくれよな。
いくら私が騎士だからって、一応これでも女だからな、できないことはある
おう、まかせろまかせろ
頼もしいもんだな
ところでさ、とミンが俺の寝ているベッドの足もとにすとんと座る。
俺のとなりにいたサンザシが、対抗意識を燃やすように、俺に近づく。なんですか、サンザシさん。
黙っているサンザシは、しかし、眉間にシワを寄せてミンを凝視していた。
ものすごい剣幕だ。どうしたんだと言いたくなるが、話しかけることもできないので、黙って視線をそらす。
なんで、こんなとこにいるんだよ?
ミンが、困ったように俺を見て笑った。
ああ、そういう話をしていたんだっけ。嘘をつく理由もないと思い、俺は肩をすくめて今まで起こったことすべてを話した。
ある魔法使いに助けてもらっていること、しかし、その魔法使いがどうやらわけありのようだということ、そして魔法使いを探していた人たちに、ここまでとばされたこと。
ってことは、その吹っ飛ばした男ってのは、あれかな、どうせ飛ばすならど田舎に、とか思ったのかな
ミンは眉をつり上げた。はは、と俺が笑うと、笑うなよとこづいてくる。
お前も大変なんだな
ミンがちいさく笑う。お前も、ということは、もちろん彼女も。
ごめんな、俺が逃げたあと、そっち、大変だっただろ