つづく
ひ、光が……
壁が、消えて真っ白になっていく……
さっきと同じ……
さっき?
私、明け方の時間からこっちで目覚める
ときにこういう光の道を通ってきたんだ。
だから、ここじゃないどこかに
向かう合図なのかもしれない。
なるほど……ということは
タキちゃんの今さっきした話は
本当かもしれないってことよね。
この世界がすべて仮想のもので、
他に本当の現実があって……
私たちはただ繰り返し、学校を彷徨う
ように仕組まれていたプログラム。
……でも、それなら何故、
タキちゃんは目覚めたのかしら。
学校を彷徨っているだけでいいのなら、
病院で目覚めるという行動は
実行されないはずじゃない?
……それは、さっき喋っている
うちに私も思った。
もしかしたら、まだ続きがあるの
かもしれない……ここがまた
どこかへ繋がっていて、私たちは
脱出をさせられるとか。
きびしいわね……
まあまあ。とにかく、光の
流れる方へ歩いてみよう。
ええ。
……それにしても、この感情が
仮のものだなんて、まだ信じられないわ。
……まあ、私の話もぜんぶ
仮説だからね。確証が取れる
わけじゃないし。
脱出できなさそう、っていうのは
本当だけど。
……そうね。また2024年のあなたに
笑われちゃうわ。「お前は人の話を
鵜呑みにしすぎなんだよ!」って。
はは、そうだね。きっと言うね。
……私たちが誰であれ、どこへ向かう
のであれ、今この時に考えて、動いていて、
それが正しくても……間違っていても、
いいんだよ。それで。
私は滝沢 多岐で、たとえば今の人生じゃ
なくってもっと別の……ほかの私が
歩んできたような人生だったとしても、
それはそれでいいんだ。
精一杯自分の感情に正直に生きて、
悔いのないよう生きられれば。
自分が納得する生き方が出来れば。
私は……たくさん勉強して、叶えたい
夢があったけど……こういう境遇に
なったことで、普通に生きるより
ずっと良い体験が出来たと思う。
何十回、何百回分の私の人生。
それを記憶として持てただけで、
とても充足してるんだ。
ミヤちゃんとも仲良くなれたしね。
……
ずっとあなたを見てきて、ひとつだけ
わかったことがあるの。
タキちゃん、あなた口に出して
自分に納得させようとする節が
あるでしょう。
強がらなくてもいいのよ。
怖がらなくてもいいのよ。
みんな……わからないことは
わからないのだから。
……
はは。ミヤちゃんにはかなわないなあ……
そっか。そうだよね。未来がわからなくたって
無理に決めつけて歩かなくてもいいんだ。
ほら、また「いいんだ」って言ってる。
良い悪いでなくて、そうしたいかどうか
でしょう。あなたの言ったとおり、精一杯
生きたかどうかでしょう?
そうだね……ありがとう。
ミヤちゃんがいなかったら
ここまで来れなかったよ。
本当に感謝してる。
それは違うわね。私とあなた
だからこそ、ここにいるのよ。
選ばれて来ているし、選んで来ている。
誰かの意志で。私たちの意思で。
……そうだね。本当にそうだ。
みんな同じことを考えてきた。
ここに辿り着くために歩いてきた……
それを、大事にしていかないと。
……さあ、光の終着点についた。
この向こうに、次の世界があるはず。
緊張するわね……
じゃあ……いくよ。
ええ。
!
へへ。
今度は無意識じゃないよ、
ミヤちゃん。
……
……ふふ。嬉しいわ。
ありがとう。
うん。
じゃあ……
進もう。次の世界に。
ええ。私達の明日に――
つづく