るーるるー
るるる
軽快なBGMが流れてくる。
るーるるー
るるる
軽快なBGMが流れてくる。
今日のゲストは皆さんご存じのクズ野郎……
ではなく敬愛する領主様タカムラ様です。
アナウンサーのジェイソンがまるで葬式の喪主のような声、心の底から悲しそうな声で言った。
喧嘩売ってのんのかこの野郎。
俺は少し不機嫌になる。
だが怒ったら負けだ。
今日は生放送なのだ。
スタジオのBGMが俺を迎える。
俺は少し興奮していた。
ふふふ。
復讐というのは冷めてからが美味と聞いたが、いつでも素晴らしい料理だ。
俺はスタジオへの一歩を踏み出す。
威風堂々と。
胸を張り。
全裸で。
今日ゲストのた……
てめえ最初から全裸かこの野郎!!!
アナウンサーが我を失いキレた。
セクション47のお茶の間には股間にモザイクをかけられた俺の威風堂々した姿が放送されていることだろう。
せっかく股間にぞうさん描いたのに。
今、この放送局のリソースはリアルタムで俺の股間にモザイクをかけることに費やされているのだ!
ククク! ざまあ!!!
そう、俺の目的はこのアナウンサー、ジェイソンの番組をぶっ潰すことである。
ふふふふふ。
貴様の出演する番組全てで放送事故を起こしてくれる!!!
そう言って俺は胸を張る。
その汚えマッチ棒をしまえクズ野郎!
な!
酷い!!!
今の台詞で少し小さくなっただろうが!
っちょ! おま!
マッチ棒って!
テメエさぞかしすげえのぶら下げてるんだろうな。
ああ?! コラァ!!!
俺はそう怒鳴ると、腰を横に振り人間ドラムで抗議する。
ペチペチペチペチ。
腰を振るなこのクソ野郎!
ジェイソンが怒鳴りながらスタジオの椅子を持ち上げ俺に投げつけた。
俺は慌ててよけ、俺のいた場所に高級そうな椅子が叩きつけられる。
うお! あぶねえ!
本気で投げやがった!
危ねえだろ! テメエやんのかコラァ!!!
おお!
やってやんよこのクソ野郎!!!
そう言うとジェイソンは別の椅子を掴み俺に突進してきた。
~しばらくお待ちください。~
残念なことにここで中継は中断された。
サイガだろ、吉田だろ、テレビ局の連中だろ。
よってたかって俺とジェイソンに飛びかかって来やがったのよ!
それでも俺たちはお互いを殴るために全員を引きずって突進したね!
両名とも相手を一発殴らなきゃ気がすまないのだ。
これは雄としての本能ってやつだ。
お互い闘争本能だけで動いていたのだ。
目の前のクソ野郎をぶっ殺す
ってね。
だけど人生ってのは常ビターなクソゲーだ。
一人の女が俺たちの間に割って入った。
俺の彼女の細川だ。
その女……細川はニコニコとエレガントやって来た。
そしてニヤッと笑う。
なんだろうね?
この本能的な恐怖。
ちょっとキュッとした。
なにが? 秘密。
次の瞬間、俺の中で警報が鳴り響いたんだ。
やばい! 逃げろ! ワーニン!
って!
だが遅かった。
なんとも形容しがたい、あふんあふんでデンジャーな痛みが走った。
突き刺されるような、鼻から頭のてっぺんまで通るような、あの痛みさ。
生ものなのになぜか効果音は
ちーん。
骨折でも脱臼でも肉離れでもない。
あの本能的恐怖を伴う痛みだ。
もうね……要するに細川キックが俺のナッツを蹴り上げたのだ。
その場にいた男衆全員が息を呑んだね。
俺は悶絶。
そのまま戦闘不能。
口からナッツ出そう。
……女の子って怖いっす。
日本人の恥をさらすなこのお馬鹿!
いい加減にしな!
……はい
鼻水と涙で前が見えない俺はなんとか返事を絞り出した。
俺尻に敷かれてる?
ねえ俺尻に敷かれてない?
細川に嫁(メイ)のこと言ったら殺される。
薄れ行く意識の中で俺は思った。
絶対殺される!!!