村を離れる決断をした僕たちは、
関所方面の出入口へ歩いていった。
 

 
アンデッド騒ぎが起きているせいか、
見かける村人の表情は一様に元気がない。

よく見ると村にある全ての家々のドアには
護符が貼り付けてあったりして、
事態はかなり深刻なのかもしれない。



……本当にこのまま
通り過ぎてしまっていいのだろうか?



僕の力ではどうにもならないし、
関わったとしてもミューリエやタックに
負担をかけてしまうだけ。
それは百も承知だ。


だけど……。
 
 

アレス

…………。

ミューリエ

どうした、アレス?

アレス

えっ?
……あ……いや……。

ミューリエ

やはり村のことが気になるのか?

アレス

うん……。
でも僕には
何もできそうにないし……。

ミューリエ

そういう時は私に遠慮なく頼れ。
求めるならば協力は惜しまない。
それが仲間だろう?

タック

オイラにも
どんどん頼ってくれていいよ~♪

アレス

ミューリエ、タック……。

ミューリエ

その代わり、
逆の立場になった時は
お前が私を助けてくれ。

アレス

うんっ!
もちろんだよっ!!

 
 
あぁ……
やっぱり仲間っていいな……。
 
 

 
なんか嬉しすぎて涙が出そうになる。

こんなに素敵な出会いを与えてくださった神様に
感謝してもしきれない。


ミューリエ、タック!

僕だってキミたちのためなら命を賭けられる!
そうハッキリ言えるよっ!
 

ミューリエ

アレスはどうしたいのだ?

アレス

あのね、2人とも。
僕、やっぱりこの村を放って
先へ進みたくない。

ミューリエ

そうか、分かった。
ならば私もアレスに協力しよう。

アレス

タックはそれでいい?

タック

もちろん!
アレスがそう言うんなら、
オイラはそれに従うよ。

アレス

ありがとう、2人とも!

タック

じゃ、
オイラは宿を確保してくるね~☆

アレス

僕は村長さんに詳しい事情を
聞いてくる。
ミューリエはどうする?

ミューリエ

では私は
アレスに付き合うとしよう。

 
こうして僕はミューリエと一緒に
村長さんの家へ向かうことにした。
タックには宿で部屋を確保したあと、
さらに情報を集めてもらうことをお願いする。


早速、近くにいた人に
村長さんの家についてたずねてみると、
それは村の北側にあるということが判明した。
大きなお屋敷だから、
行けばすぐに分かるとのこと。

僕らはその場所を目指して歩いていく。


やっぱりどこへ行っても村の人は元気がないし、
露店で野菜や果物を売っている人も
ため息ばかりついていて活気が感じられない。

なんとかこの事件を解決してあげたいなぁ……。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 

 
やがて村長さんの家に到着した。

ここのドアにも護符が貼ってある。
しかも家が大きいからなのか、
いくつかの窓にも貼ってあるようだ。

庭にも周りにも人の姿がないようなので、
僕は家の奥へ向かって声をかけてみる。

アレス

ごめんくださーい!

 

村長

――何かご用ですかな?

 
家の奥からご年配の男性が現れた。

どことなく貫禄があり、落ち着きもあることから、
おそらくこの人が村長さんなのだろう。
 

アレス

村長さんでいらっしゃいますか?

村長

そうですが、あなた方は?

アレス

僕はアレス。彼女はミューリエ。
旅をしている者です。
アンデッド騒ぎで
お困りのようでしたので、
何か協力できないかと思いまして。

ミューリエ

場合によっては退治してやることが
できるかもしれん。
詳細を話してはくれんか?

村長

それは助かります。
ですが、解決していただいても
大して御礼は……。

アレス

気にしないでください。
僕らが勝手に
協力を申し出ただけですから。

村長

そうですか、ではこちらへどうぞ。

 
村長さんは僕たちを家の奥に通してくれた。

そしてリビングの椅子に座り、
お茶を飲みながら
話を聞かせてもらえることとなる。

 

村長

数週間前の晩ですが、
ヤツらが急に現れたのです。
それから数日おきに現れては
村人を襲い、
もう何人も犠牲になって
おりまして……。

ミューリエ

どんなモンスターだ?

村長

詳しくは知りませんが、
ゾンビのようなヤツだったと
聞いています。

ミューリエ

死因は外傷か?
それとも毒か何かか?

村長

どちらのケースもありますが、
多くの者は毒にやられたようです。
触れられたであろう部分の皮膚が
赤黒く変色しておりました。

アレス

そうだったんですか……。

ミューリエ

毒を使う相手となると、
厄介だな……。

村長

幸い、少し前に旅の神父様が
偶然にもお立ち寄りになりまして、
護符や浄化の奇跡で
お助けいただいております。

ミューリエ

ほぅ?
その神父はまだこの村にいるのか?

村長

はい。私がお願いをして、
ご滞在いただいております。
毎日、護符を作ったり汚れを払ったり、
お忙しいようです。

ミューリエ

神父はどこに滞在している?

村長

村はずれの空き家を
私が提供しまして、
そちらを
お使いいただいております。

ミューリエ

アレス、
私たちも神父に会っておこう。
護符をもらっておけば、
役に立つだろうしな。

アレス

うん、そうだね。

村長

でしたら紹介状を
書いて差し上げましょう。
安く護符を
提供していただけるはずです。
定価では、
ちと値が張りますのでな。

アレス

護符って無償で配っているわけでは
ないんですか?

村長

お布施という形で
納める必要がございます。
基本は護符1枚につき
3万ルバーなのですが、
紹介状を持っていけば1万ルバーで
お譲りいただけるでしょう。

アレス

なっ!?

ミューリエ

……ふむ。

 
いっ、1万ルバーっ!?
 
結構……高いなぁ……。

僕たち3人が宿屋に3日は泊まれる金額だ。
野宿して食事代だけ使う場合なら、
1週間は過ごせるだろう。

――ハッキリ言って、この出費は痛い。

僕、そんなに手持ちがあったかなぁ……。
 

アレス

ははは……。
ミューリエ、どれくらい持ってる?

ミューリエ

あとで道具屋へ行ってくる。
私の持っている粒金を売れば
数万ルバーにはなるだろう。

アレス

ごめんね、
余計な出費をさせちゃって。
近いうちに僕もおカネを作るから。
当てはあるからさ。

ミューリエ

あまりカネのことは気にするな。
あとでどうとでもなる。

 
そんな感じで僕たちは村長さんから話を聞くと、
次は村はずれの空き家にいるという
神父さんのところへ向かった。
 




次回へ続く!
 

第15幕 アンデッドの出る村

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