手を出すな――敵対するな、という意味での助言を受け取った私、伏見こゆきは直通ラインの窓を手で触れて消すと、眼鏡を外してから右手で額を押さえるようため息を落とした。
尾行の件をリイディから頼まれた際に、もしかしたら、と思って大外にて一人で暮らしている母に連絡をしておいたが、結果として接触があったらしく、連絡を受けた。けれど、通話は数分と経たずして切断され、こちらから連絡を入れても不通状態。会話はほとんど終わっていたから良いのだろうけれど、なにかトラブルでもあったのだろうかと心配するくらいはできても、直接なにかをすることは今の私にはできない。