携帯用食料をかじれば、肉と香辛料の味が口の中に広がる。腹を満たすタイプのものじゃないのは作った僕、雨天紅音がよくわかっているけれど、空腹を紛らわす程度のものにできあがったかどうかを確認する意味合いでの、いわば試食であり、それほど食事的な意味合いを求めてはいなかったのだが、合成食料を調理した結果としては満足な部類だ。
木の上に腰を下ろし、照準器で木木の隙間を抜けば、その先にぼんやりとエンジシニの外壁が見える。たかが二千ヤード、いやもう少し距離はあるか。ちなみにこの照準器も自作で、双眼鏡を改良しただけのものである。まあ持ち運びに便利なよう小型化したら、知っているものに近づいたってだけなんだけれど、この手のハンドメイド作業は、得意な方だ。