白い世界の中に、黄色い光がぽつりぽつりと浮かんでいるのが遠くに見える。
まだヒントが少ないのかもしれませんよ、崇様
そうかもね……あれだ、きっと
なんでしょう?
早く当てたいんだよ
なるほど、確かに前回も悔しがっていらっしゃいましたものね
そうそう。謎解きが楽しくなってきてて……あ、サンザシ
白い世界の中に、黄色い光がぽつりぽつりと浮かんでいるのが遠くに見える。
小さな町かな……推理は一旦休憩としよう。よかった、光について来て正解だったよ
白い世界に埋もれるように、ひっそりと、小さな村がそこにはあった。
家は、二十あるかないかといったところだ。魔法で守られているようで、村に入ると雪がやんだ。つくづく、魔法って便利だ。
オレンジ色の光が、村に入ったとたんにふわりとはじけて消えた。
役目はすんだ、ということのようだ。
暖かくしてくれた魔法がきれたのかどうかは分からなかったが、風もあたらないし、寒くはない。
もしかしたら、村全体を覆っている魔法が、寒さから守ってくれているのかもしれなかった。
お姉ちゃん……じゃない! 勇者様だ!
子供の声がしてそちらに目をやると、小さな女の子がこっちにむかって走ってきた。
こんにちは
きらきらと輝くような笑顔に癒される。
こんにちは
勇者様は、何をしに来たの?
うーんっとねえ
あ、お嫁さん探してるんだね
そういえば、見た目でそのことを主張しているんだっけね。
ここにはいないと思うよ。若い人はね、この村からいなくなっちゃうんだ。
遠いところに、お金を稼ぎにいくんだよ
君はいろいろ知ってるんだね。
名前はなんていうの?
アイリスだよ
そう、俺はアキレア。アキでいいよ
俺の言葉に、アイリスは目を丸くして、きゃっきゃと楽しそうに笑った。
はじめて言われた! あのね、アイリスは、まだ結婚できる年じゃないよ
ん? どういうことだ?
勇者様、宿、探してる? うちにきていいよ。お母さん、とっても喜ぶはずだよ
え、えっと
まあ、先ほどのはひとまずおいといて。
いいの?
うん! お客様、とっても嬉しいはずだから
突然現れて喜ばれるものなのだろうかとどきどきしていたが、予想外の歓迎に、俺は度肝を抜かれた。
この村にはね、お客さん、滅多に来ないんだ。人もあんまりこないから……寂しい村なんだよ
アイリスいわく、そういうことのようで。
俺が現れるやいなや、まずアイリスのお母様が発狂。
驚きのあまりあわてふためいたあと、美味しい紅茶をいただき、自己紹介。
その後、少し待っててくださいねとのことで、アイリスちゃんときゃっきゃ遊んでいると、なんと村中の人全員が集まって、大規模な歓迎パーティーが開かれることに。
勇者様、もしよければ、この村にしあさってまでいてよ
すっかり俺になついてくれたアイリスが、俺の膝にちょこんと乗りながら、キラキラした目でそう言った。
なんで、しあさって?