寒い! サンザシ?

ここにいます、崇様!

よかった! しかしここは……

 再度サンザシとふっとっばされたその先は、一面の雪景色。

 びゅうびゅうと吹き付ける吹雪。白すぎて回りがよく見えない。

 よく見ると、雪ひとつひとつが特大で、足元の雪もいったいどこまであるのだか、見当がつかない。


 下手に動くことができない。どうしようどうしようと考えていると、歯がカタカタと鳴りはじめた。寒い、寒すぎる。

寒いのですね! 暖かい魔法をかけさせていただきますね

 慌てるサンザシ。ありがとうと言おうとするが、口を開けるのも辛くなってきた。

 というか、サンザシは寒くないのか。いいなあ。

わっ










 サンザシと俺が同時に見つけたものは、オレンジ色の光だった。

 ふわふわと浮いているそれにゆっくりと近づくと、オレンジ色の光も俺に気がついたようにふわふわと寄ってきた。すぐそばまで来て、安堵する。暖かい。


 オレンジ色の光が俺の鼻先にちょんと当たると、その瞬間にそれが弾けて、全身を包み込んだ。

……あったかい

 恐らくルキだろう。

サンザシ、もう大丈夫だよ

ああ、よかったです崇様

多分ルキだと思うけど……どうしたんだろうね、さっきの

オルキデア様、と呼ばれていましたね

ね……あ

 俺の中に溶け込んだはずのオレンジ色の光が、俺の身体から少しだけふわふわと浮き出てきた。

 漂うそれは、俺の鼻の前でピタリと止まる。

 何かなと見ていると、そのオレンジ色の球体はふるふると震え、小さく弾けた。

わっ

 弾けた直後、オレンジ色の光がまっすぐ延び、白い世界の中に消えていく。

……光をたどればいいのかな。行ってみよう

はい、雪のなかを歩ける魔法は、私が

 サンザシの魔法を足に受けたあと俺は、ざくざくと雪の中を歩き始めた。


 ゆっくり、確実に一歩一歩進みながら、さて、と考える。周りにサンザシしかいないので、声に出しながら。

今までの経験上、世界観はそんなに関係ないと思うんだよね

桃太郎が学園もので、シンデレラがSFでしたからね

そうそう。

だから、ファンタジーっていうのにとらわれすぎないようにして考えようと思うの。

そんでもって、現在の状況は、お嫁さん探しなわけだ。

恋愛ものの可能性が高い

なるほど、たしかにそうですね

うん。

でも、思い返すと、昔話って西洋のは特に、恋愛もの多いんだよね……日本の昔話は比較すると少ないけど。俺のイメージだけどね

ってことで、西洋のものにしぼって考えてみる

なるほどなるほど

しかも、旅だろ、これ。

旅するような物語、あったかな……でも、旅に重点置くと、またシンデレラのときみたいになるんだよね。

あれ、結局バトルがダンスパーティーとイコールだったわけだし……うーん。

人間関係が大切なのかも

といいますと?

桃太郎のときも、シンデレラのときも、配役にヒントがあった。

やっぱりそれは動かしづらいのかもしれない。

なにか裏のありそうな魔法使いに、旅をする勇者、少し怖いお姫様に、その友達の騎士……あと、魔法使いのおつきが二人

 ざくざくと歩きながら、いろいろ考えてみる、も。

わからん

 あはは、とサンザシが笑う。全くこの子は。

3 あなたに捧げるその花の意味は(10)

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