冷たい光が揺らめいている。

 音は歪み、感覚さえも曖昧で、自分がどこにいるのかさえ思い出せない。

深架(ミカ)

……何故……

 ふと浮かび上がってきた疑問は、答えを与えられることなく再び闇の中へ沈んでいく。

 目蓋は異様に重く、思考は陽炎のようにおぼろげで思うようにまとまらない。

 気怠い感覚だけが私を支配し、何もかもが不明瞭で鈍く、そして緩慢に停滞している。

 気泡のように形の定まらない思考ばかりが脳裏に浮かび、しかし、そのどれもが揺らめきの中へと溶けては消えていく。

???

……ミ……カ……

 聞き覚えのある声さえも断片的で理解できない。

 わからない。ワカラナイ。ワカラナイ。

 目蓋は私の意思とは関係なく、ゆっくりと静かに閉じていく。

 闇は私を取り囲むように迫り、緩やかに、しかし確実に私の意識を閉ざしていく。

 光は遠ざかり、静かに深く、為す術もなく落ちていく。

深架(ミカ)

……すまない……

 それは誰に向けた言葉だったろう。

 ゆっくりと浮かんできた想いは、何故かとても温かく、しかし、心が張り裂けそうなほどの痛みが私を襲う。

………………………………。

深架(ミカ)

……!?

 冷たい刃のような喪失感に閉じかけた意識は震え、思わず開いた視界に朧気な青い光が蘇る。

 胸を締め付ける息苦しさに助けを求めて手を伸ばせば、光は揺らめき指の間から逃げ、それでも私は手を伸ばす。

???

……気にしないで……

深架(ミカ)

そうじゃない。そんな言葉が聞きたかったわけじゃない!

 望まぬ答えを消すように、私は水を掻き分け水面へと顔を出す。

深架(ミカ)

はぁはぁはぁはぁ……

???

!?

 水しぶきの音がして、直後、金網に何かがぶつかったような音が響く。

 そちらへと目を向ければ、満月に照らされたプールサイドに一人の少女が立っていた。

???

………………

 少女は月明かりを背にして私をじっと見下ろし、優しく吹いた夜風は彼女の柔らかなピンクの髪を撫でていく。

深架(ミカ)

………………

 私は、とっさにその名を呼ぼうとして——

 しかし、それが満月の静寂を破ることはなかった。

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