原理とか理由だとか、そんなものは頭から取っ払った。

 考えても仕方がないからだ。
 オレには別に考えるべきことがある。

 今後も喚び出されるとして、戦い方たるものを練っておくべきだ。

 前回、前々回はたまたま持っていた物によって運良く救われた。何も持っていなかったら、今ここに生きているかもわからない。


 つまり、常に武器になるものを身に付けておくべきじゃないか、これは。

 そうだな、例えば……。

 次に喚ばれた時、正直準備万端でなんでも来いやと意気込んでいたのに、鳥のモンスターを前に彼女は思わぬ事を言い出した。

フミト、今日はあなただけじゃないのよ。
新しい召喚獣を手に入れたんだから

取り敢えず見てなさい

 そうして彼女はなにやらぶつぶつと詠唱をはじめた。

黒き壁、白き海、燻る褐色。
嘆け、その身の小さき様を!
煽れ、その身の一部を揺らして!
我の行く手を阻む邪魔者を、その爪で引き裂かん!!

 なるほどああやってオレも召喚されているのか。
 残念ながらそれをオレが聞く事は出来ない。

 彼女の手前の地面が発光し出す。ゆっくりと何かが浮かび上がってきた。

おぉ!

……おぉ?

 そこに現れたのは、とんがった耳と長い尻尾を持ち、三色の毛色をした四本足の小さな獣だった。

おい、それ三毛猫じゃね?

 いや、どう見ても三毛猫。

 もしかして彼女ってポンコツ召喚士……。

さぁ、行きなさい!
タラクフィリマ!

 それってもしかして略してタマ?

やー戦えねぇだろ、あれは

 その点オレはちゃんと戦えるような道具持ってきているからな。
 ゲームのRPGで出てくるモンスターを基準にしてしっかり練ってきたんだ。

 取り敢えず持ち歩けるレベルの武器としてカッターナイフに。

 ゼリー状のモンスター相手に溶かすためのライター。

 虫っぽいモンスターがいる可能性があるから反則っぽいが殺虫剤。

 機械系にはペットボトルの水。

 アンデッドにはこの間の経験よりミニ懐中電灯。

 海や水属性のモンスター用に防犯用スタンガン。

 飛行しているモンスターにはネットだ。

 唯一ドラゴン系への対策は考えてこれなかったのだが、ネットで飛ぶのを防いで、殺虫剤とライターの火炎放射で燃やしてしまえばいいだろう。

 現代科学の賜物といえるこの七つ道具があれば、剣士や魔法使いではないオレでもなんとかやっていけそうな気がする。


 さて、今回は変な鳴き声をあげる怪鳥なので、まずネットを使います。

 ごそごそと異次元ポケットならぬ普通のカバンからネットを取り出す。


 召喚されたばかりの三毛猫が怪鳥に向かって毛を逆立てる。

フー!

 ほら、怯えて威嚇してるじゃないか。かわいそうに。動物愛護団体に怒られるぞ。

 じゃあオレが……。

シャー!

 三毛猫が思いっきり怪鳥に猫パンチをかました。

 怪鳥はクワァと声をあげ、ふらふらと今にも落ちそうだ。

 紛れも無い猫パンチで怯ませやがった!

シャー!

 今度は爪を出してのひっかき攻撃!

 怪鳥の羽が何枚か舞った。

今だ!

 隙をついて剣士が飛び出して行き、ザンっと一閃。


 ……オレの出る幕が無かったぞ。

凄いわ、タラクフィリマ!
またヨロシクね

 三毛猫はふわりと空気に解けるようにして消えた。
 オレもああやって以下略。

念のため喚んだけど
必要無かったわね、フミト

 まさかニャンコにお株を奪われるとは思いもし無かった。折角いろいろ考えたのだが。

戻っていいわ

待て!


なにフミト?

君の名前は?

あれ?
契約する時に名乗ったはずだけど

 契約? 契約ってなんだ?

クローディアよ。
召喚士クローディア

 よろしくね、の挨拶の後すぐに元の世界に戻った。

召喚獣としての闘い方を考える

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