その後何度か向こうの世界に召喚されていた。
その後何度か向こうの世界に召喚されていた。
三毛猫タマが思い掛けずなかなかの強さを誇るので、頻繁に喚び出されることはなかったが、それでも七つ道具を使う機会は増えた。
中でも特に殺虫剤が役に立ち、蟲はひと吹きで泡吹いて伸びてくれる。虫系のモンスターと出会った時には重宝された。
フミトの毒魔法で一発よ、
この虫野郎!
勘違いしてくれてるクローディアはどうやら蟲が苦手らしい。
……
その豹変ぶりに剣士のライゼンは引き気味だ。
召喚されるたびにクローディアたちのレベルがあがっていくのが目に見えてわかった。
もちろんステータス表示なんてないわけだが、装備品がはじめに出逢った頃より格段に良いものになっているし。
モンスターを前にしておどおどしていた印象だったが、
ひっ! で、でた!
え、詠唱……
詠唱はじめなんだっけ!?
出たわね!
いでよ、タラクフィリマ!!
と詠唱省略していたり。
おららららららーー
まぁ、はしたない。
パーティのメンバーに知らないメンツも増えている。
いつの間にかオレも、
もっとオレを召喚してくれていいのに、
そう思うようになっていた。
現実よりも召喚先のが充実している自分に気付いたのだ。
現実世界にいても考えるのはクローディアたちのことだし、またラーメン食べてる時に喚び出されないものかとラーメンを食べることが増えた。
ラーメンが向こうの世界とを繋げる媒体かとも考えたが、はじめの一回だけに留まっている。
最近喚ばれない……。
いつでも喚ばれていいように、寝ている時も七つ道具を身に付けているのに。
オレよりいい召喚獣を見つけたのかも。
タマの活躍か!?
いや、モンスターにやられてしまったんじゃないだろうか。
オレを召喚するのが間に合わなかったのか!?
そんな心配を繰り返すようになった折に、久しぶりに召喚された。
なんだ?
暗いぞ?
暗闇に目が慣れてきて見えてきたのは、ピンチな状態のパーティの姿だった。
膝をついて荒い息をするクローディア。
はぁっはぁっ……
フミ…ト
クローディア!
一体なにがあったんだよ!?
正体が、掴めない敵なの……
フミトなんとか…してっ!
なんとかって
ピンチになってから喚ぶなよ〜!
相手はなんなんだ。クローディアたちが対面してる方を見る。
おっ
大きい……。
そいつは視界全部を遮る土の巨人だった。
暗いと思ったら奴の影の中にいたのか。
瞬間的に悟った。
こんなの七つ道具でなんとか出来るレベルじゃない。
そう、これはレベルが強くなってから戻ってきて倒すモンスターで、今戦うべきじゃない!
ちょっ、何してるの?!
クローディアを背負おうとしている。
いるんだよ、ダンジョンにはこういう今は避けとくべきモンスターってのが!
ライゼン立ち上がれるか?
あ、ああ……
背中のクローディアが暴れる。
そんな!
敵前逃亡なんて……!
逃げるが勝ちって言うんだよ
この場合は、とんずらに尽きる。
ライゼンが汲み取ってくれたのか、他のパーティメンバーも助け起こしていく。
ゴーレムって土人形の巨人は大抵防御力がかなり高い。
オレを召喚する前にどのくらい戦ったかはわからないが、今のパーティの状態とゴーレムの様子をみると全然敵ってないのがわかる。
もう一度ゴーレムを見上げる。
こういうの相手に戦うゲームがあったよな。
残念ながら、オレには愛馬がいない。
兎に角、ゴーレムはうすのろなのが弱点だ。
今のうちだ!
行くぞ!
もがくクローディアを無視してダッシュでゴーレムの股の間をくぐり抜けた。
奴が振り向いてる間にオレたちの姿はもうない。
落ち着ける場所まで辿り着いてクローディアを降ろすと噛みつかれんばかりに怒られた。
それでも、君に死なれたら困るんだよ。
ぷんすこ怒るクローディアに怒りのままに還されてしまう。
もう、戻ってフミト!
目の前には物干し竿と濡れた衣類。
ああ、そうだ洗濯物を干してる最中だった。
まだ洗ったばかりの衣類は濡れそぼっている。
彼女たちはあの後ちゃんと身体を休める場所に辿り着けただろうか。
また立ち向かいに行ったりしてないだろうな……。
なぁ、ちなみにこれって、全滅してゲームオーバーした場合、前回のセーブ場所からやり直せるもの?
死んだら、どうなるんだ……?