事務所にいる役10人の組員、そして信行はずっと組長である忠志を待っているが、当初の1時間で帰る予定がもう3時間も過ぎているのだ。
最初は苛立っていた信行ではあったが何かおかしいと思い始め、桜井組若頭の雄二にあることを耳打ちし、雄二は事務所を出て行った。

高石卓也

コーヒーのお替りはいりませんか?

若宮信行

いらない

この部屋の空気は非常に重いものになっていた。
信行は顎に手を当てて何かを考えている様子でピリピリしている雰囲気を醸し出していた。

高梨雄二

信行さん!
大変です!

若宮信行

何か分かったのか?

高梨雄二

オヤジがさらわれました。
雄一郎に聞いたところ中川剛が絡んでいるようです・・・
どうすれば良いでしょうか・・・

雄二がそう言った途端に周りの組員がざわめき始め、明らかに同様が広がっていた。
それでも信行は慌てず、じっくりと何かを考えているようだった。

高梨雄二

信行さん!!

若宮信行

あぁ、金庫に最新のパソコンがあるだろ?
それを俺の所に持って来い。
GPSで居場所を探知する

高梨雄二

自分たちは?

若宮信行

それはお前の仕事だろ。
俺は組員じゃないんだからよ

高梨雄二

は、はい・・・

高石卓也

持ってきました!

若宮信行

ご苦労様。
どいてろ、直ぐに始める

すると手を鳴らし、首を鳴らし、背中をならすと大きく深呼吸をしてPCの画面を見た。
その目は何か遠くの獲物を捕らえる鷹のような目をしていた。

事務所内では慌てふためく組員とその組員たちを統制しようとする雄二、そんな騒音をお構いなしにハッキングを進める信行、一見どうしようもない状況だが、信行の頭にはある構想が練りこまれていた。
しかし信行はそれを雄二には告白していない。
まだあるものの確信がないからだ・・・

若宮信行

捕らえた・・・

信行のその一言で全ての組員が信行の周りに集まった。

高梨雄二

どこですか!?

若宮信行

中川名義の倉庫だ。
桜大橋の近くの倉庫だ

高梨雄二

ありがとうございます!
行ってきます!

若宮信行

雄二はちょっと待て

高梨雄二

え、でも・・・
早く行かないと・・・

若宮信行

良いから話を聞け

高梨雄二

分かりました・・・

そして二人だけになった事務所で信行はあることを話した。

信行の仮説はこうだ・・・
忠志は何かをするために中川剛の情報が欲しかった。
そして中川の情報を集めるために信行に頼んだ。
しかし何らかの事情で信行の情報を待てずに中川に会いに行ってしまった。

そこまで話した時に雄二が話しを止めた。

高梨雄二

すみません・・・
会いに行くなら自分たちに何か言って行くのではないんですか?
命を狙われるかもしれないので

若宮信行

そこは簡単だ。
桜井のオヤジは極度の仲間思いだからな。
恐らくお前らに心配かけさせたくなかったんだろ

高梨雄二

そんな・・・
オヤジ・・・

若宮信行

まぁ、そこは置いておこう。
次に会いに行ってからだ・・・
恐らく自分が持っている情報だけで中川をどうにかしようとしたんだろう・・・
あのオヤジの事だ、多分焦って何か口走ったんだろ。
そんで監禁された・・・

高梨雄二

その通りだったら許せねぇ・・・
中川・・・・・・

若宮信行

まぁ、落ち着け!
俺はちゃんと切り札を持ってる。
相手がオヤジを渡さないと言ったらあいつの情報をネットに流す

高梨雄二

オヤジが戻ってもお願いしますね!

その後二人が1時間ほど事務所で皆の帰りを待っているとドアが開いた。

桜井忠志

あぁ・・・
帰ってきた・・・

高梨雄二

お帰りなさい!

桜井忠志

おう・・・
信も悪かったな!

若宮信行

本当だよ・・・
まぁ、金貰ってたからここまでやってやったよ。
で?
あいつの情報ネットに流すか?

桜井忠志

やってやれ!

若宮信行

あいよ

ポチ

信行はエンターキー一つ押すと静かに笑った。
それにつられて雄二、忠志も笑って互いにハイタッチをした。


その頃とあるオフィスでは・・・

中川剛

何だこれは~!!!

中川剛

そ、そんな・・・
私の写真が・・・
こんな事・・・
誰が・・・
私はもう終わりだ・・・・・・

続く・・・

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