真夜中の静けさの中だが、この部屋の中だけは違っていた。
異様な緊張感に包まれ、パソコンのキーボードを叩く音が響き、男の息遣いが聞こえる。

突然部屋に携帯の音が響いた。

若宮信行

もしもし?

東郷雄一郎

もしもし。
雄一郎です。
情報が集まりました

若宮信行

そうか・・・
直ぐに俺のPCに送ってくれ

東郷雄一郎

いえ・・・
直接渡したいんです。
ヤバイ物なので・・・

若宮信行

そうか・・・
今から来てくれ
待ってるぞ

東郷雄一郎

はい。
直ぐに向かいます。
失礼します

信行は電話を切ると大きく息を吸って何かを考え始めた。
タバコに火をつけ、パソコンの画面を睨んでいた。
画面に映っていたのは男と女が写っている写真だった。

若宮信行

取りあえず俺はこの情報を手に入れた・・・
後は雄一郎の情報か・・・

この部屋のドアがノックされた。
信行はタバコの火を消してドアを開けに向かった。

若宮信行

早かったな

東郷雄一郎

近くまで来てましたから!

若宮信行

声落とせ
まだ寝てる奴いっぱいいるんだよ
まぁ入れ

信行は雄一郎を中に招きいれて椅子に座らせると冷蔵庫からコーヒーを取り出して雄一郎に渡した。

東郷雄一郎

ありがとうございます

雄一郎はコーヒーを受け取ると直ぐに蓋を開けて飲み始めた。
そして、5分程の沈黙の空気が部屋にこもった。

東郷雄一郎

中川剛の書類です

信行は書類を受け取るとじっくりと中身を見た。
時に目を細め、時に目を大きく見開いて書類全部に目を通すとやっと顔を上げた。

若宮信行

さすが雄一郎だ。
これで完璧に畳み掛けられる

東郷雄一郎

報酬弾んでくださいよ!

若宮信行

勿論だ

信行は金庫から帯封がつけられている札束を出すと雄一郎に渡した。
雄一郎はニヤリと笑って受け取り、頭を下げて部屋を出て行った。

若宮信行

これで・・・

信行はパソコンに保存されたデータをプリントアウトして雄一郎から受け取った書類とともに金庫にしまった。

若宮信行

あんまり寝れなかったな・・・

信行は大きなあくびをして冷蔵庫からコーヒーを取り出し、一気に飲み干すと金庫から書類等を出して鞄に詰め、部屋を出た。

若宮信行

あのポリ居ないだろうな・・・

若宮信行

やっぱ朝日浴びての一服は美味い・・・

石田繁

コラー!!
またお前か!

若宮信行

やっぱりいんのかよ!
うぜぇんだよ!

信行はそう言うと走って公園を離れていった・・・

若宮信行

ったく・・・
本当にめんどくせぇ・・・

若宮信行

入るぞ!

高梨雄二

あ、おはようございます

若宮信行

あぁ
早くコーヒーくれ

若宮信行

それと桜井のオヤジ呼んでくれ

高梨雄二

わ、分かりました・・・

高梨雄二

どうかしたのかな・・・

高梨雄二

オヤジは今出てますので一時間ほどで戻ります。
申し訳ありませんが少しだけお待ちください

若宮信行

また外出かよ

信行は先ほどの公園での件で非常に機嫌が悪くなっていた。
周りにいる組員は機嫌が悪い信行の機嫌をもっと損ねないように気を配ることしか出来ず、非常に困っていた。

しかしそんな事お構いなしに信行は何か気に入らないことがあるたびに怒鳴り散らしていた。

高石卓也

雄二さん・・・
信行さん何かあったんですかね・・・

高梨雄二

分からん。
ただ、あの人が怒ると手がつけられない。
絶対にこれ以上機嫌を損ねるなよ

高石卓也

分かりました

信行は勿論、組員の誰もが待ち望んでいる組長、忠志は一時間経っても帰ってこず、信行のイライラ、組員の焦りは最高潮に達していた・・・

続く・・・

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